見出し画像

【旅エッセイ18】この青い湖は誰のもの?

 箱根の芦ノ湖には遊覧船がある。
 これは、そんな遊覧船を撮った一枚。他の遊覧船に乗っているときに、湖にカメラを向けた。

 晴れていたら富士山も見えてもっと綺麗だけど、雲の多い空も夏の感じがして私は好きだ。

 ところで芦ノ湖は箱根、箱根は神奈川なので、とうぜん芦ノ湖は神奈川県内にある。

 ところが芦ノ湖の水利権は静岡県にあるらしい。水利権というと、その水源の水を使う権利のこと。

 なぜ神奈川の湖なのに静岡県?

 気になって調べてみると、どうやら芦ノ湖は早川の水源の他に、静岡県裾野市の水田に水を送るための用水路(深良用水)があるらしい。

 用水路が工事されたのは江戸時代1666年。 水田があった場所は当時、小田原藩の管轄だった。
 それから時代は進み明治4年、1871年の廃藩置県で芦ノ湖は神奈川県、水田は静岡県になってしまった。

  しかも神奈川県側に流れる水の量が減ってしまって、用水路を部分的に破壊して水量を操作しようとする人まであらわれて一悶着があった。

 その後は裁判をして、結局は芦ノ湖の管理は土地のある神奈川県、水利権は用水路をもつ静岡県ということに決まったとか。

 現代から見れば「へえ、そんなことがあったんだ」で済む話だけれど、豊富な水源がありながらそれを使えない当時の人たちは切実に悩んだことと思う。畑が育たないと、食べるものもなくて生きられないのだから。

「国境のない世界」は色々な歌手が理想の世界として歌うけど、現実には国同士の領土問題や、同じ国でも所属が違うだけで争いが起こったりする。人と人の問題は複雑で、どれだけ時代が変わっても人々は悩み続けている。
 
 美しい自然の中、湖の上を進む船に乗っていると、人間関係の悩みなんて忘れられる。それなのにその美しい湖がまた争いの元にもなった。

 世の中はままならないものだなぁと、湖を眺めながら思う。湖を渡る遊覧船が、水面に白波を立てていた。



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

ご支援をいただけたら、新しい場所を旅する素敵なエッセイを書きます。

ありがとうございます!明日が良い日でありますように!
7

ダイセンブ

旅と人生について考えるエッセイスト。散歩、自然、写真が好き。毎日、1枚の写真を載せて、旅と人生をテーマにした様々なエッセイを書いています。2019年4月21日から、1日1エッセイ継続中。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。