見出し画像

【ディスクレビュー】色んな歌の世界を旅できるアルバム「THINK YOUR WORLD」

富士葵3rdアルバム「THINK YOUR WORLD」がリリースされました。
「THINK YOUR WORLD」は、未発表曲を含む全10曲を収録したCDです。また、2022年12月11日に池袋harevutaiにて開催されたオンラインライブ「CAROL-祝歌-」のBlu-ray Discもセットになっています。アルバムはBOOTHにて販売中です。

また2023年11月17日にはShubya O-eastにて富士葵リアルライブ「Aria」が開催されます。ライブの様子はSPWNでも配信されます。

https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=702903

本記事では「THINK YOUR WORLD」の各楽曲について個人的な感想を綴っていきます。どれも珠玉の曲なので、みなさんもリアルライブ「Aria」に向けてたくさん聴いてください。

・Revive the world

日曜日の朝にやっているアニメのOPを思わせる爽やかさを感じる曲です。希望にあふれた葵ちゃんの歌声と歌詞、豪華なメロディに否が応でも心が躍ります。アルバムの1曲目にふさわしい曲です。歌詞に注目すれば「覗くだけで何かが変わる」や「探してた探してたすぐそこにあるのに」というような言葉から、見方ひとつで世界は生まれ変わるという、この曲名通りのテーマを感じます。そしてそれは、日常のちょっとした事をよく観察している、葵ちゃんの企画動画にも通じるものがあると思いました。

・テイストレス

「Revive the world」とは対照的に全体的に淡白さ、味気無さが漂う曲です。個人的にこの曲で一番感心したのは、葵ちゃんの感情の強弱の絶妙さ。感情を抑圧したABメロから始まり、サビでさえ感情を爆発させることもなく歌は続きます。曲全体を通して、ほんの小さな一歩を踏み出せた程度の微妙な明るさの調整。歌に乗せる感情の匙加減が絶妙すぎて、歌の上手さが音程が合っているだけではないと気付かせてくれる曲です。

・永遠観測

ギターの音と疾走感のあるサウンドが格好いい、ライブで歌えば文句なしで盛り上がる曲です。世界系アニメのようなキミと僕の愛の歌を、葵ちゃんの情熱的な歌声で表現してくれています。たった二人の関係性を永遠や宇宙という壮大な規模の歌詞で書く作詞センスに脱帽です。

・相関性メモリア

曲のすべてが可愛さで構成されているような、聴いていると踊りだしたくなるような楽しさに満ちた曲です。彼氏彼女の初恋のような甘酸っぱさも感じます。葵ちゃんの「セレブレーショーーーン」の伸ばし方好きです。

ここで少し創造的誤読をします。私はこの曲を何度か聞くうちに、この曲がVtuberさんの歌のようにも感じてきました。「知らない見たことない世界」「案外難しいよほらキライじゃないのに」「生きていくんなら自分らしく」「崩れていくパズルは一瞬で」とか、Vtuber活動の悲喜こもごもが歌詞に詰まっている気がして、それに気づいた瞬間、今までの色々を思い出して、とても楽しい曲なのに急に涙が出てきました。「ちょっとやそっとじゃ繋がった関係切れない」の言葉が何よりの救いに感じます。

・クリティカルシンキング

ある意味このアルバムの中で一番面白い曲だと思います。葵ちゃん自身も語っていた通りリズム特殊で転調もあり、繰り返し聴いていて飽きないけれど、同時にライブで乗るのは大変な曲です。11月17日のライブでこの曲を歌ったら、歌劇団のオタク力が試されます。

クリティカルシンキングとは「物事を批判的に捉え、判断する」こと。 日本語では「批判的思考」と訳されます。「~だっけ?」「~ですか?」と問いかけたり、「記憶ごと全部一度壊して作り直そう」と前提を疑ったり、クリティカルシンキングという言葉の要素を盛り込んだ歌詞作りも流石。

・雨降るスノードーム

この曲の一番の聴きどころは「いわゆる恋とは違うけれど」の葵ちゃんの歌い方です。「恋」のたった2文字の声に、慈愛と感謝と少しはにかむような感情が込められているのを感じました。ただこれは私の語彙力の限界で、きっともっと複雑で極彩色な感情が込められていたり、人によって読み取る感情が違うと思います。

この曲は歌詞全体に比喩表現が多数ちりばめられていて、歌詞というより詩を読んでいるかのような錯覚を覚えました。そのせいか葵ちゃんの歌い方も読み聞かせるような心地よいものに感じます。

・キララハル

「花とゆめ」で連載してる青春恋愛漫画を読み終えたような読後感を味わえる一曲です。ピアノの旋律が心地よく、葵ちゃんの軽やかな歌い方と、「あ、えっと・・・」というセリフのおかげで、少年の感情の動きが手に取るようにわかって、曲に込められた物語性を強く感じました。少年の不器用さにもどかしくなったり、青春っぽい甘酸っぱい思考に共感性羞恥を覚えたり、音楽を聴きながら感情が忙しかったです。間奏が葵ちゃんの素朴な鼻歌だったり、アウトロに信号機の音を入れたりと遊び心も好きです。

・Coke=High

「しぐれてゆくか(パリーン)」というコーラ瓶の割れる音が最高にイカした曲です。ロックなバンドの演奏も格好良く、ぜひ生バンドで聴いてみたい。1番の「NPC(モブ)」や「メトロポリス」のような歌詞からサイバーパンクな世界観かと思いきや、2番になると「路地裏の駄菓子屋」や「ニセコーラ」と急に現実味のある描写で現実に引き戻される、まるで大志を抱いてイキっていた少年が、現実の閉そく感を思い出したかのようでした。歌詞のモチーフにコーラを使った言語表現もお見事。

・キミの声が聞こえる

こんなの歌劇団が聴いたら涙が止まらなくなるやつです。ズルです。この曲の感想いる?言葉にすること自体がもう無粋でしょ。葵ちゃん好き。はい、終わり終わり。

本音は上記の通りなのですが、言葉にしないと伝わらないこともあるので言語化できる範囲でします。この曲は富士葵と歌劇団の曲だと思いました。活動初期からの足跡を思い起こさせる歌詞や、歌劇団への感謝やエールに満ちた歌声に何度も胸を締め付けられます。

歌詞にも、デビュー曲のタイトル「はじまりの音」が入っていたり、「MY ONLY GRADATION」を思わせる「カラフル」、「オーバーライン」の歌詞にあった「ファンファーレ」など、ファンサービス精神にあふれています。また「道標(こたえ)」という言葉遊びも大好きです。

そして葵ちゃんは本当に一言で刺してくるのが上手いなと思いました。1,2回目の「大丈夫」よりも3回目の「大丈夫」の歌い方がとても力強く感じました。またラストの「キミの声信じて」の「信じて」で葵ちゃん以外の音が消えることで、ダイレクトに葵ちゃんの声が届くという演出。曲の最後にこれは余韻に打ちのめされて動けなくなります。

少し自分語りをするので次の段まで読み飛ばしてOKです。「伝えたかったことはとどいているかな」「キミも同じように考えたりするのかな」という歌詞から、BUMP OF CHICKENの藤くんがライブMCで語った「みんなは俺が『曲を聴いてくれてありがとう』ってどれだけの気持ちでそれを言っているかたぶん全然わかってない。だけどそれでいい。俺、ずっと歌うから聴いてください」という言葉を思い出しました。葵ちゃんが動画の最後で言う「動画見てくださってありがとうございます」という言葉は、いつも聞いているから何気なく聞いてしまうけど、きっと文字以上の気持ちがこもっているのだと思います。同時に歌劇団のコメントの「面白かった」「ありがとう」というたった数文字の言葉にも、きっとたくさんの言語化できない感情が込められているはずで、どうして言葉ってこんなに不自由なのだろう?と、もどかしく感じることがあります。ほんの少しでも葵ちゃんや歌劇団の言葉がお互いに届いて欲しいと思います。自分語り終わり。

・Bouquet

軽快なメロディと手拍子が楽しく、ライブ映えしそうな曲です。ライブで歌った時には歌劇団みんなで手拍子したいです。「最後に笑うべきは私でしょう」と歌うのは、こんなノリが良くて強気なシンデレラもありなんだ、と面白くなりました。この自信満々さが頼もしくて、前向きさを分けてもらえて、これもひとつの応援歌だなと思いました。

・Happy Strarry Night

鈴の音やキラキラしたメロディに心が躍る、がっつりクリスマスソングです。こういう季節狙い撃ちの曲も良いですよね。今後、四季折々の定番曲を増やしていくのも面白そうだと思いました。

クリスマスソングだけあって歌詞が優しくて、葵ちゃんの歌声も楽しそう。「君が笑顔見せたら皆もつい笑顔になってる」「そうやって伝わって繋がって世界中happiness」クリスマスはこのくらいハッピーな曲で良いんですよ。アウトロの葵ちゃんの「はーい!」が好き。歌詞カードに載ってない声を聴くと嬉しくなるオタクです。

まとめ

1曲1曲にそれぞれの世界観があって、アルバムを聴いていると、群像劇を見ているような気分になりました。それぞれの世界の住人がそれぞれの人生を生きていて、それを葵ちゃんの歌を通じて覗き見ているような気分。これらの曲の中に自分と強く共感する歌詞があると、よりその世界に入り込めるのかなと思います。「キミの声が聞こえる」なんて歌劇団が聴いたら自分事すぎて過剰に感情移入すること受け合いです。

ライブになると歌に加えて視覚にも訴えかけてきます。いや、ライブ会場では聴覚と視覚だけでなく五感全てでライブを体験します。このアルバムの歌の世界を葵ちゃんとキクノジョーが、どうライブで表現するのか、今からとても楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?