⑦支援者を目指すなら「専門性」だけでなく「関わり方」もイメージして経験を積むべし

こんにちは。NPOコンサルタントの堤大介( @22minda )です。

前回の記事では、「課題の粒度」と「関わり方」というNPO支援のスタイルを分類する2つの支援を掛け合わせることで支援者ごとの得意分野や支援の特徴、契約時に目標とする成果物の設定の仕方などさまざまな違いを捉えやすくなるということを考えました。

今回も前回の続きで、「課題の粒度」と「関わり方」を掛け合わせることでNPO支援のさまざまなあり方を深堀りして考えてみたいと思います。


支援者による支援内容提示方法の違い(事前提示と事後提示)

「課題の粒度」×「関わり方」の二つの視点の掛け合わせでNPO支援者の支援スタイルの違いをわかりやすく説明することができる、というのが前回と今回の記事の主旨ですが、支援者として具体的にどのような支援を行うのかという支援方法の提示の仕方も支援者によって異なります。大きく分けると支援する課題や関わり方ををある程度固定し事前に提示している場合と、相手の課題や状況に応じて提示する支援スタイルを変更する(事後提示する)場合に分けられるでしょう。

事前提示

事前提示を行うのは、特に機能支援で、支援方法や成果物がある程度固定化されている(裏を返せばNPO側が抱える課題がある程度共通化している)支援テーマの場合が多いように思います。会計を始めとしたバックオフィス系の業務を支援する個人や企業などはある程度支援方法も固定化しており、事前に明示されているケースが多いでしょう。また、NPO向けの寄付決済サービスの提供を行っているような企業(その他様々なサービスベンダーによる支援、営利企業によるNPOプランも該当します)も特定の機能を代行的支援として提供するものと捉えることができると思いますが、基本的には事前に支援方法が提示されている形式といえるでしょう。

事後提示

一方で例えば私は、複数の専門テーマ領域を持っています(それぞれの領域に特化した方には敵わない広く浅い専門レベルになりがちなタイプともいいます笑)が、各団体が抱えるさまざまな課題のうち、どの課題に対しての支援を行うかや具体的な関わり方については基本的にすべて団体の状況や要望に応じて提示する形にしています。もちろん相手に応じるとはいえ、やはり私自身の得意な関わり方に偏りはあります。

例えばファンドレイジングという支援テーマの場合、私が提案することが多いのは育成的支援を主題としつつ初期の段階では教師的支援を組み合わせるといったスタイルです。なるべく早く団体が、自立してファンドレイジングを行っていけるように担当者の育成やファンドレイジングチームの組成、PDCA文化を醸成することを目指した支援を行っていくことをゴールとしてご提案することいった形などですね。団体が自立することを目指すというのは何よりも良いことのように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、弱点も存在します。成果が出るまでに時間がかかるということです。担当者個人の育成にしろ、チーム育成にしろ短期間で急激に達成することは難しく、最低でも半年以上、長ければ2年ほどかかるケースもあります。短期的な成果(寄付獲得目標)が求められている場合にはあまり適しませんので、団体側のニーズがそのようなところにある(◯◯までに△△円を調達しないと団体や事業の継続が不可となってしまう、など)場合には代走的支援でご自身の専門性を直接手と頭を動かしながら発揮して短期的・資金的な成果を生み出してくれる支援者の方の方が良いはずであり、このことを説明した上で他の支援者の方を紹介したりしています。

同じように個人でNPO支援を行っている方で機能的なテーマとしては様々なものを扱っている方でも、個別団体への関わり方では私とは違い代走的支援や伴走的支援を中心に行っているという方もいらっしゃいます。

事前提示と事後提示はどちらが良い、悪いという類の話ではなくどのようなサービスを作りたいのかという点に関わるものですし、両者を折衷しながらサービス提供を行うことも可能ですので対立的な概念ではありませんが、整理をするための視点として捉えていただけると良いかと思います。

NPOにとっての意義:自組織はどのような支援を求めているのかNPO自身が考える指針になる

本記事をお読みいただいている方の中には支援者ではなく、依頼側であるNPOの方もいらっしゃるでしょう。何らかの組織課題を解決するために外部支援者の活用を考える際には、ぜひ本記事で解説した「課題の粒度」×「関わり方」という視点でどのような支援を求めているのかを一度考えてみてください。一度自分たちなりに整理をした上で、支援者の提案を聞くと、自分たちが求めていた支援なのかどうかが判断しやすくなるはずです。また、提案された内容が当初想定していた支援方法ではなかった(例えば代走的支援を求めていたが、教育的支援を提案された)場合に、自分たちが想定していた支援方法(伴走的視点)をしてもらうことが可能かを支援者側に質問してみることもできるようになります。このような視点を持つと、複数の支援者に相談を行ってそれぞれから提案をもらった場合などにも、提案内容同士の比較がしやすくなるでしょう。

(私自身の経験からも、NPO側から相談時に何を成果状態としているのかを明確に提示してもらえると、それが可能なのか、不可能だと考えるのか。他にどんな成果設定の方法があるのかなど、NPOの求めているものを元に話を進めていくことがしやすいと感じます)

支援者を目指すなら「専門性」だけでなく「関わり方」もイメージして経験を積むべし

これからNPO支援者になることを目指す方はまずはどのような専門性(≒「ファンドレイジング」「広報」など機能支援のテーマ領域)で支援を行えるようになりたいのかを明確にし、その専門性を身に着けていくということが必要ですが、それだけでなく、本記事で紹介してきたように関わり方の面からも自分の支援の特徴を説明できるようになることを目指せると良いかと思います。

代行的支援に特化したいのか、伴走的支援がしたいのか、教育的支援がしたいのか。どこを得意なスタイルとするかによって、NPOとの付き合い方も仕事の仕方も変わっていきます。(研修講師として教育的支援を中心に行えばより多くの団体に対して自分の専門性を使って支援することができますが、一つ一つの団体への関わり方は浅くなります。逆に代行的支援や伴走的支援であれば特定の団体に深く関わることができますが、全体で支援できる数を多くすることはしにくくなります)先輩支援者に話を聞いたり、自分自身がトライアルで複数の関わり方を経験して、どのようなスタイルを理想としていくのかを明確にしていけると良いのではないでしょうか。もちろんどれか一つの組み合わせを選ばなければならないということはなく、私自身も含め様々な支援の仕方を組み合わせたり相手に合わせて柔軟に使いこなしている方も多くいますが、将来的にそのようなスタイルを目指すとしても、まずは何か特定の支援テーマや支援スタイルの確立を目指していくのが歩んでいきやすい道だとは私自身の経験からも思います。

専門性の育て方や支援スタイルの確立方法などは「支援者育成試論」としては主テーマになるべき部分でもあるので、この連載記事内でも別途詳しく書いていきたいと思いますが、今回はまず手短に本記事の前半で書いた「事前提示と事後提示」について言えば、少なくとも支援経験が浅いうちはなるべく「事前提示」から始められる方が安心安全に経験を積んでいきやすいと思います。事前提示は事前に支援メニューや提供する価値、コミット量や方法などを事前に明らかにした上で支援開始の合意をつくるので支援者・依頼者ともに「そんなつもりではなかった」という意志のズレが起こりにくいですし、支援内容としてもイレギュラーが発生しにくいからです。(NPOは活動内容も組織の体制や状況、文化も本当にさまざまなので営利企業相手の仕事に比べると基本的にイレギュラーが発生しやすいというか固定化しにくい支援分野が多いかと思います)プロの支援者になる前にフリーランス的なプロボノ活動をしている方はどちらかというと事後提示というか組織の状況に応じて柔軟に対応ということが多いかと思いますので、その経験を踏まえてプロ化する場合はこの限りではないと思いますが。

本日はいったん、ここまでです。

お読みいただきありがとうございました。

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NPOコンサルや伴走支援者になりたかった数年前の私のような方に向けて仕事をする中で感じたことや考えたことを書いています。 支援者育成やNPO支援の仕組み化などに取り組んでいくために、もしいいなと思ってもらえたら、サポートしてもらえると嬉しいです。