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まんじゅうは一つ目から!

はじめに

このタイトルだけでは意味が分からないのですが、このエントリーの大意は「リーダーシップは属人的資質ではなく、伝えたい思いに対し定義されるため、この思いについては余人の追随を許さないかもしれんがいが、それ以外のことに対しては平凡以下かもしれない」ということです。つまり、偉大なリーダーでも全体を見ると普通なところも多いんじゃない、ってこと。

マネジメントとリーダーシップ

既存のリーダーシップ理論は、極論すれば「効率」に関する理論で、本質的にはマネジメントに関する理論です。効率が測れるのは、目的が与えられている場合であり、既存の組織におけるのリーダーシップが主な研究対象です。しかし、創業者のように、組織がない時期におけるリーダーシップでは、一般に試行錯誤(つまり失敗)が必要であり、非効率的に見えますが、これらについて既存の理論は無力です。

まんじゅう五つの話とは

タイトルの元となった話は、「腹がへっていた人がまんじゅうを食べても、なかなかお腹いっぱいにはならないので、次々にまんじゅうを食べていく。五つ食べたところでようやくお腹いっぱいになったので、『なーんだ、最初から五つ目のまんじゅうから食べればよかった』と言った」というようなものでした。

当研究室では、この話の意図を変えて、以下のように話しています。五つ目のまんじゅうは「成果」です。研究でも、あらかじめ成果に到達できると知っていれば前に進むのは恐くないでしょう。いっぱい食べればいつか満腹になるでしょうが、研究では必ず成果がでるとは限りません。そのため、テーマを変えたがるようなケースが時々あります。テーマは変えてもいいんだけど、例えば、最初のテーマについて「サーベイをしよう」と決めたのであれば、そこまではやろうよ、という意味で、「成果がでるかどうか分からないし、テーマを変えるのであれば無駄なように思うけど、進んだ分は必ず身になる(四つ目までのまんじゅう)よ。逆に進まないと(一つも食べないと)何も身につかないままだよ」という話をします。

だけど、失敗は恐れるもの

ただ、前に進むことを恐れることが悪いというわけではありません。それは、当然の反応だと思います。「失敗を恐れずに進めば」というのはよく聞きます。特に、成功した人の話しとしてよく聞くような気がします。実際、だいぶ前に『本当に「失敗を恐れていない」のか?』というブログを書いたのも、山中先生のノーベル賞受賞前後に同様の話しを聞いたからでした。

このブログは「失敗を恐れないようにしたい」というテイストですが、ビジョン主導型のリーダーシップを提案するようになって、「ビジョンが見えたことに関しては、見えているので失敗を恐れないけど、それ以外のことに関しては、失敗を恐れることが普通だよ」とリーダーシップを発揮しない場合のことが見えるようになってきました。「ビジョンあるいはリーダーシップの寿命」に書いたように、性格や資質としてのリーダーシップではなく、見えたものや対象に対してのみのリーダーシップであり、それ以外は普通ですよ、ということです。

ビジョンに依存した様々なリーダー像

古典的なリーダーシップ理論はである特性理論は、まさにリーダーシップを天性の資質と捉えています。次に行動理論や条件適合理論などがでてきます。これらの理論は、リーダーシップを発揮する場面や前提を分類していき、こういう場合にはこういう行動というように環境にあった行動を取ることが優れたリーダーという見方になっていきました。しかし、依然として組織が前提であり、ゴール(ビジョン)はあらかじめ定まっています。そのため組織のトップ(これはマネージャーであり、一般にはリーダーではない)は、与えられた目的がトップの「やりたいこと」かどうかに関係なく、良好なパフォーマンスを出すことが求められています。逆に、提案のリーダーシップ理論では、やりたいこと(ビジョン)を共有させることがリーダーシップのプロセスである一方、これとは関係ない、興味ないことに対してはリーダーシップは発揮しないし、むしろそのようなことには保守的であってもよいわけです。

例えて言えば、既存の理論では「男なら泣くな!」とか「女の子はおしとやかに!」のようにある種の役割(ロール)が、個性とは関係なくリーダーに対し期待されているわけですが、提案のリーダー像では、自分の中に(システム1として)あることがやりたいことであり、やりたいことに応じて千差万別のリーダーが存在しうるわけです。

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