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リーダーシップは正しくない?

はじめに

プロフィールにあるように専門は情報学で、リーダーシップを研究として考え出したのはここ数年です。「リーダーシップは情報伝播」という新しいモデルを広めたいわけですが、調べてみると既存のリーダーシップ論と大分違います。土俵から違うものは単純には比較できないため、定義や公理を用いた数学の理論のような考え方を使って、間違いのないモデルにしようと思いました。これが結果的に、リーダーシップに関する新しい見方にもつながりました。

理論について簡単に

「理論」とは何か簡単に確認しましょう。まず、使う言葉や概念を準備(定義)します。また、それまで知られている事実や、正しいと仮定した前提(公理)、準備した定義から論理的な操作を経て得られるものが結論(定理)となります。

ある理論で得られた結論は、途中の操作が違っていなければ正しいわけですが、定義や公理など(ここでは、まとめて前提と呼ぶことにします)の正しさはその理論では証明できません。もちろん、荒唐無稽な前提は意味がありませんが、妥当な(だと思える)前提でも、それが正しいかどうかは、その理論では分からないというのがポイントです。前提を含めた理論が受け入れられるかどうかは、従来の理論では示せなかった結論が得られるなど、その理論から得られる結論の量や質によります(fruitfulと言います)。

例えば、相対性理論では「光の速度は一定」という前提を置きました。それまでの理論(ニュートン力学)では、どのような速度で見えるかは結論として導くべきことであったわけですが、そうではなく前提としました。このように、これまでの常識とはかけ離れた理論が受け入れられたのは、ニュートン力学では導くことができないけど、現実の現象とよく合致する結果が得られたからです。

リーダーシップの定義から導かれること

さて、提案するリーダーシップのモデルでは、まず「リーダーシップは情報伝播です」と定義しています。これまで述べたように、この定義自体は、提案する理論から導けるわけではありません。ある種の前提です。

この定義を使うとどんなことが言えるかを、既存のリーダーシップ理論と対比させて、いくつかリストアップします。
・組織を仮定せずにリーダーシップが定義可能(従来の理論のほとんどは組織があることが前提)
→創業者など組織を作った人のリーダーシップを説明できる(従来のではできない)。
組織はリーダーシップの実現のための手段(従来の理論では、組織は前提であるため、導かれる結論ではない)
・リーダーシップの源泉は伝えたい想いであり、これが達成すればこのリーダーシップは終了→(雇用などを考えなければ)組織を解散してよい

部活の問題(強制される教員や生徒)、雇用の問題(正規/非正規、終身雇用など)、女性の社会進出を阻むもの(古くからの役割分担など)など、自分が気になる問題の多くは、組織を重視する文化や風習、慣習に根ざしているように感じていましたが、上の理論では先に個人の想いがあり、この実現の手段として組織を位置付けることができ、自分としては満足です。

リーダーシップへの反対は正しい?

リーダーシップに関する多くの研究は成果でリーダーシップを評価しています。これが何を意味するかというと、これらの研究におけるリーダーシップは効率の追及であり、実はリーダーシップではなくマネジメントと言えます。逆にいうと、マネジメントの場合、ゴールが与えられており、ゴールへの到達度によって成果が評価できます。一方で、提案しているリーダーシップは、システム1による閃きなどで得られたビジョンを広めるプロセスとして定義されていて、ゴールを共有するプロセスと言えます。

これらを、上述した理論に関する説明で言えば、ゴールは定義に対応します。ゴールを設定しても、それ自体が正しいかどうかは分からないわけで、ここから得られるもので評価されます。さらに、新しい定義(ゴール)自体は、既存の理論でも示せるわけではないし、(結果がでていないうちは)論理的な整合性だけで言えば、既存の理論がよく見えることもあるでしょう。つまり、初期のころには「あるリーダーシップは、多くの人にとって、正しくない」ということになり、反対派の言うことは論理的でもっともらしいということになります。

周りに反対され、しかも、(既存の理屈では)論理的に正しい反論をされてもなお、自分のビジョンを信じられるかどうかが重要になってきますが、システム1によって得られたビジョンはある種の強制力を持つのではないかと思います。有名なリーダーには、偏屈であったり、非常に個性的な人が多そうですが、ビジョンの強制力という側面があるのではないかと思っています。

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