アンタッチャブル

昨日、品川から恵比寿に向かうため山手線に乗っていたら、

「真っ黄色のタンクトップ」

を着て、

「ケミカルウォッシュのホットパンツ」

を履いた、

「ロン毛のおじさん」

が、ちょうど僕の右斜め前に立っていたんですね。
なんというかこう、みなさんも一度は経験があると思うんですが、電車の中でたまに、

「アンタッチャブルな人」

に出くわすことってありますよね?

「あ、この人ちょっと変わった人なんだろうな。でも、なんかちょっと怖いから、あんまりジロジロ見たり、関わったりするのはやめとこ。」

という感じで周囲の乗客間でコンセンサスが取れている様な、あの感じ。
昨日もまさにそんな状況でした。
だって、「最強寒波」が襲来しているこのタイミングにも関わらず、

「真っ黄色のタンクトップ」

を着て、

「ケミカルウォッシュのホットパンツ」

を履いた、

「ロン毛のおじさん」

ですよ?
しかもそのおじさん、何かこう、よくわからない独り言をつぶやきながら小刻みに揺れているんです。不気味じゃないですか。
僕は、

「うわー、関わりたくないなぁ」

と思いそのおじさんのことは極力見ないように、視線を自分の左側、つまりそのおじさんとは反対方向に向けていたのですが、
今度は僕の左に立っていたおばちゃんが突然、

「へへ…タンクトップ。黄色。」

と言うんですね。

「ん?」

と思ってまた耳を傾けてみると、今度は、

「へへ…半ズボン」

とつぶやくわけです。

「なるほど。」

僕はピンときました。
どうやらこのおばちゃんは、

「自分が考えてることをそのまま口に出してしまいがちな人」

だったんです。
そして、何かを発言する前に必ず、

「へへ…」

と薄ら笑いをする癖があるようなんです。
というか、よく見たらこのおばちゃんもどちらかというと「アンタッチャブル」な感じの人だったんですね。

「なんかややこしい車両に乗っちゃったな。」

そう思いつつも、僕はスマホを見てその状況をやり過ごそうとしていたんですが、
そのおばちゃんが今度は、

「へへ…鳥肌」

と言うわけです。

「えっ、鳥肌?」

そう思って、おじさんのことをチラ見してみると、肩から腕にかけて、それはもうびっちり鳥肌が立っていたんですよ。

なんというか、僕としてはタンクトップおじさんのことをを敢えて見ないようにしてはいたものの、おばちゃんがの実況によっておじさんの情報が次々に入ってくる、そんな状況になっちゃってたんですね。

すると、今度はそのおばちゃん、

「へへ…右」

と言い始めたんです。

「なになに?右?今度はなんだろう?ていうかなんか怖いからあんまりこのおじさんを刺激しないでくれよ。」

そう思いつつもおばちゃんの視線の先をよくよく確認してみると、あろうことかそのおじさん、ホットパンツが短すぎて、右のお尻がガッツリはみ出しちゃっていたんですね。
で、おばちゃんはそれを見て、

「へへ…右」

と指摘していた訳です。

「マジか。」

と。

「たしかにこれは右だわ。」

「右が出ちゃってるわ。」

「いや、待てよ。でもこの人、かなりきれいなお尻してるわ。」

「うわっ、ていうか、お尻にもびっちり鳥肌たってる!」

そんなことを考えていると電車が大崎駅に到着して扉があいたんです。
するとこのおじさん、突然右の拳を高らかに天に掲げ、まるで相手選手からダウンを奪ったボクサーが自分のコーナーに帰っていくかの様なダイナミックなガッツポーズを作り、

「よっしゃー!!」

と叫びながら氷点下のホームに消えて行ったんですよ。

「一体あの人は何だったんだろう…?」

そんな風に呆気にとられながらも、

「そう言えば、おばちゃんはこれ見てなんて言うのかな?」

「やっぱり『へへ…ガッツポーズ』かな。」

と考えていたら、このおばちゃん、
 


「いってらっしゃーい!!」



と突然大声でおじさんのことを送り出したんです。
あまりの唐突さに心臓が止まるかと思いました。
いつもの、

「へへ…」

も、なしでしたからね。

ちなみにおばさんは次の駅で、

「へへ…五反田」

と言いながら降りていきました。

一体あの人達は何だったんだろう?
本当に不思議な体験でした。

いずれにしても、あのおじさんのきれいなお尻と、そしてそこにびっしりとたっていた鳥肌の映像が目に焼き付いて離れません。


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田中大介

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