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なんか凄そうな虫垂炎を見つけた時の話

今回の教材はこちら

複雑性虫垂炎とは?

前回は単純性虫垂炎の話をしました。
https://note.com/daisukemuller/n/ncb8db80685ac

おさらいですが、虫垂炎の病期はカタル性、蜂窩織炎性、壊疽性と炎症病期が進展していき、炎症がひどいと穿孔といって虫垂壁に穴があきます。今回取り上げる複雑性虫垂炎はいわゆる壊疽性、穿孔性のことを指します。

虫垂は狭い内腔を持ち盲端で終わります。なので、例えば糞石などが原因で簡単に閉塞してしまうんですね。約35%の症例で糞石が認められます。

閉塞が起こると、虫垂粘膜からの持続的な粘液分泌により、数時間以内に虫垂内圧が上昇します。この圧力が虫垂壁の血管内の圧力を上回ると、虚血性壊死が起こり、虫垂内腔に存在する細菌に対して粘膜が無防備な状態になってしまいます。やがて、細菌が血液に乗って全身に運ばれると敗血症も合併することに…。

壊疽性虫垂炎の超音波所見は?

壊疽性の意味を考えてみましょう。糞石などで虫垂が閉塞して、細菌感染が起こると虫垂が粘膜から全層に炎症を起こします。壊疽性虫垂炎では炎症が虫垂壁の全層に及び、出血・壊死などで層構造が消失します。つまり、壊疽性虫垂炎はこのような状態を反映して、壁が菲薄化し、層構造が不明瞭化します。これが壊疽性虫垂炎の所見になります。以前に"カタル性の壁肥厚がない状態と、壊疽性の菲薄化した状態が区別がつかないのでどうしたらいいですか?"と質問があったのですが、そういう場合は周囲の炎症を加味してみてください。カタル性では炎症は粘膜に限局しているので広範囲な脂肪織肥厚はないはずです。層構造だけでなく、全体の様子を見てください。

あとは、炎症の波及がどの程度あるかも記載してもらえればいいかと思います。回盲部まで高度な炎症があると、回盲部切除術も検討される場合があるはずです。

壊疽性は層構造消失し周囲炎症強いよ

穿孔していたら?

穿孔の程度にもよりますが、虫垂の内容物が腹腔内に漏れ出します。これが膿瘍形成です。穿孔すれば、緊満していた虫垂が減圧されるので、虫垂径は小さくなり、時には虫垂の形態自体が追えなくなります。

膿瘍形成していた場合、内科的治療になる場合と外科的治療になる場合がありますが、詳細は専門家に委ねます(私は医師ではございませんので悪しからず)。技師としてはどちらになっても大丈夫なように対処しておきます。つまり、内科的(待機的手術も含む)に見る場合に備えて、正確にサイズを計測する。個人的には似たような角度で何枚か撮って欲しいですよね。何枚かあれば頭の中でCTにのように立体的にイメージ構成できるんですが、1枚だけだと想像しにくいんです。ただし、たくさん画像を撮るとどれを比較したらいいか分からなくなるので、これでフォローしてください!という画像を1枚Key画像として決めます。かなり実務的ですが、すごく後でフォローがしやすくなります。

外科的治療に備えては、膿瘍ドレナージを想定します。経皮的に穿刺してドレーンチューブを留置するのですが、安全なルートが必要です。具体的には穿刺ルートに腸管がのらないルートがあるかないかです。血管の情報もあるといいですね。プローブに取り付けるアタッチメントは通常ガイドの向きが固定されていますので、穿刺方向を変えるためにはプローブを左右反転させて、画面も反転させたりします。膿瘍ドレナージ全般に言えることですが「引けそうか」「引けそうじゃないか」も考えなくちゃいけなくて、流動性があって液体と認識できるものは比較的"引けそうな"膿瘍です。逆に流動性なく、粘調性が高そうなのは"引けなさそう"な膿瘍です。虫垂炎の膿瘍は虫垂から漏れ出るやつなので、大部分が"引けそう"な膿瘍ということになるのですが、肝膿瘍や腸腰筋膿瘍など実質由来の膿瘍は"引けなさそう"なフェーズもあるためこういった情報も添えてくれれば医師も助かると思います。

まとめ

このような複雑性虫垂炎の方はプローブ走査でかなり痛がることがほとんどですし、炎症も派手なのでわかりやすいと思います。あとは落ち着いて1つ1つ上記の内容を確認していくと良いと思います。盲腸の憩室炎も炎症派手な場合ありますので、いかなる場合も虫垂を同定する手順はしっかり踏みましょうね!


by みけ ٩( 'ω' )و




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