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通勤のご褒美

田舎に住んだら朝型人間になれるかと思ったけど、そうでもなかった。今さら変われるほど若くないのか、…いや、待てよ。年を取ったら朝が早くなるとか、強くなるとか聞くけれど、加齢ごときじゃ変われないほど、私は朝の弱さを持ち合わせているのか。とにかく、湯河原に引越して半年、早起きもさして辛くない理想的な気候になってきたけれど、いまだちっとも早起きが習慣づかない。とはいえ、片道2時間の通勤日はそうも言っていられず。セットした目覚ましが鳴ると、人生何万回も襲ってきた、あのめげそうな気持ちを振り払いベットから降りて、分刻みでパタパタと準備し、お決まりの東海道線に乗る。そして、こんな海と空が見れると、あのめげそうになった気持ちに勝った自分へのご褒美のような気がして、しばし幸せ気分に浸るのだ。

都内の学生だった頃も、実家のある静岡への帰郷は東海道線を使っていた。小田急沿線に住んでいたので、小田原まで行き、東海道線に乗り換える。小田原から、早川、根府川、真鶴、湯河原、熱海へ続くこの東海道の5駅間が当時からとても好きだった。あれから30年ぐらい経っても電車から見える海の大きさは変わらない。背の高い建物が立つ事もなく、民家が増える事もなく、台風が来たら決壊しそうな道路も当時のまま。(1回ぐらい決壊したかな。)ずーっと好きだったあの路線が私の日常になるとは。。。この区間は今や私の”通勤大動脈”で、ストップしたら時間内の出勤はほぼ不可能。

きらきらと光る海が見れると、これから1時間半以上続く乗車でも「それほど大変じゃないか」と、田舎暮らしの充実感を変わらず満たしてくれるのだが、遅延した時、電車1本しか通っていない田舎の不便さを目の当たりにする。都内に住んでいると、地下鉄、電車の遅延はしょっちゅう、時には止まってしまう事があっても、何かしら手段がある。ちょっとぐらい遠回りになっても、都営や東京メトロ、JRがそこらじゅうを網羅していて最終的には目的地にたどり着く。が、湯河原ではそういう訳にいかない。せいぜい小田急線の発着がある小田原からは何とかバックアップが効く。東海道線がだめでも、湘南新宿ライナー使えたら、都内に向かっていける手段がある。ついでに、帰りの終電に関して言えば、小田原より手前か先かで、1時間も差があるという事実!具合的に言えば、新橋で飲んでいて22時40分まで飲めるか、23時50分までの飲めるか、という差だ。小田原から東京寄りに住むか、熱海寄りに住むかで電車通勤にこんな差があるとは、山手線沿線に住んでいた当時、考えたこともなかった。

現在の生活は、湯河原を人体の頭にイメージすると、小田原までが首。湯河原〜小田原間は頚部大動脈みたいな感じ。都内に進みにつれ、他の”動脈”、”静脈”が増え、最後は細かい血管もたくさん網羅されていて、ちょっとくらい切れたりしても命には別状なし、何とかなります…みたいな。そんなバカな妄想も、きっと電車内で過ごす時間が長いからか。明日は雨らしい。通勤ご褒美は望めそうもないけど、今夜はさっさと温泉入って早起き用の心の準備しよう。

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