DaiTamesue為末大

新しいスポーツをつくる仕事をしています。 人間らしさを探求しています。 https:/…

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新しいスポーツをつくる仕事をしています。 人間らしさを探求しています。 https://www.deportarepartners.tokyo/

最近の記事

私たちは本当は何を経験してるのか

長文ファンの皆様おはようございます。 私たちは本当は何を経験しているのでしょうか。以前、大変疲れている時にカフェラテを飲んでいたところ、半分ぐらい飲んだところでずいぶん薄いなと思って蓋を開けてみるとコーヒーが入っていなかったことがありました。 この紙コップの半分を飲むまでの私は一体何を経験していたのでしょうか。事実から言えば温かい牛乳を飲んだだけですが、認識としてはカフェラテを飲んでいるわけです。 人間の知覚とても敏感でありながら、大雑把な部分もあり、まだらです。実際に

    • コスパがいい人生とはどんな人生か

      長文ファンの皆様おはようございます。 「コスパ」という言葉があります。「コスパがいい」はできるだけ少ない労力や時間で、より多くの満足や価値を獲得することだと定義できます。 コスパを追求することでより合理的な人生を生きられるような感じもしますし、実際にそういう側面もあります。 しかし、肝心の「価値」と「満足」を考えてみると、そうことは簡単ではなくなります。なぜならばそれは個人の価値観によって決まるからです。 コスパを考える際に追求しなければならない二つの問いがあります。

      • 人はなぜスポーツをするのか※2024年春51号

        【人はなぜスポーツをするのか】 スポーツをする人口は三〇億人を超えると言われている。人びとはワールドカップや五輪に熱狂し、大谷翔平選手の一〇年間の契約金が一〇〇〇億円を超えた。子供たちがスポーツを行うことも、地球上のあちこちで見られる。  しかし、元アスリートながら思うのだが、スポーツなんてなくても人は生きていける。適度に運動し、適度に食事すればそれで健康は保たれる。やり過ぎればむしろスポーツは健康を害する。娯楽は他にもある。それでも、なぜかスポーツは求められている。

        • もし私たちが自分の考えが伝わることを止められないとしたら、死はどうなるのか

          長文ファンの皆様おはようございます。※ネタバレを含みますのでご注意を 私は無類の三体ファンですが、三体の中に「嘘がつけない」という設定の宇宙人が出てきます。しかもテレパシーでコミュニケーションをとっている。小説の中にはない設定ですが、さらに考えを進めて、自分の考えて感じたことを自分の意思で止められなかったとしたら死はどんなふうに感じられるのでしょうか。 私たちが「自分は自分である」と確信するのは、考えていることがこの身体に閉じているからだと思います。閉じているというのはお

        私たちは本当は何を経験してるのか

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        記事

          「最近の私、何か変化ありますか?」という質問とメタ認知

          長文ファンの皆様おはようございます。 アスリートにとって客観視は大変重要な能力です。 人間は常に「何かを思い込んでいながらそれに気づいていない」生き物です。例えば少しの技術の狂ったり、自分の心が疲弊する時になるべく早い段階で気づいて対処した方がバランスも保たれますし、対処の負荷も小さいです。 ただ、それを自分から気づくのは簡単ではありません。普通はコーチが担っていたり、またはチームメイトとのやり取りの中で気づいていきます。 それでも難しいことも多くあり(そもそもコーチ選び

          「最近の私、何か変化ありますか?」という質問とメタ認知

          目標達成の二大要素は「明日できることをやる」「自分にできることをやる」

          長文ファンの皆様おはようございます。 コントロールできないものだけに意識を向けると、二つの問題が起きることが考えられます。 「コントロールできない問題をすぐ諦め他責にしがちになるのではないか」 「自分のやれるだけ考え、世の中の解決し難い問題を無視して自己中心的になるのではないか」 コントロールできないものは二つに分類できます。一つは絶対に変えられない「過去」と「他人」です。もう一つは難易度の高いものです。厳密に言えば前者のみがストア派の定義したものですが、両方考え

          目標達成の二大要素は「明日できることをやる」「自分にできることをやる」

          アスリートがどのように、問題を切りわけ、精神を落ち着かされているかの具体的な手法

          長文ファンの皆様おはようございます。 昨日友人と大谷選手の話になったので、彼が心理的に大変な状況でなぜあれほど活躍できているのかをスポーツの世界の理論で説明してみます。とは言っても、それ世界レベルで実行しているのは、想像もできないほど難しいはずですが。 メンタルが強いと良く言いますが、具体的には「自力では解決できない問題を箱に入れておける力」だと考えられます。そのためには分割と、一旦置いておく、ことが必要になります。まずよく知られているストア派の哲学から引用します。 「

          アスリートがどのように、問題を切りわけ、精神を落ち着かされているかの具体的な手法

          評価されることから逃れたくても逃れられないこの社会で生きていくには

          長文ファンの皆様おはようございます。 私たちは常に評価にさらされています。世間が評価をし、上司が評価をし、お客様が評価をし、先生が評価をします。評価されることによって、立場を得たり、利益を得たりします。 普通であれば評価者に評価されるように振る舞うことが、人生をより豊かにしていきますが、ここに一つ課題があります。それは評価者のレベルを超えた行為を評価者は評価できないという点です。 なまじ評価者に合わせようとしてしまったせいで、能力が開花されないこともあります。 さら

          評価されることから逃れたくても逃れられないこの社会で生きていくには

          業の深い人は、なぜ自己理解が深いのか。

          長文ファンの皆様おはようございます。 「自分を知る」というメタ認知能力は、生きていく上でとても重要なものだと思います。 興味深いことに依存症を経験した方で、回復のプログラムを受けた人はこのメタ認知能力が高まることが知られています。それができなければ自分を止められないのがいちばんの理由だとは思いますが、自分がなぜ依存していったのかを他者や自己との対話を通じて理解していくからだろうと思います。 依存症以外でも、人生で 「思うようにならない自己」 が激しいほどメタ認知能力

          業の深い人は、なぜ自己理解が深いのか。

          子供達が社会で生きていけるようにするには、社会を体験するしかない

          長文ファンの皆様おはようございます。 教育の目的は様々ですが、役割の一つに「社会で生きていけるようにすること」があります。 例えば目的を海で泳げることだとします。姿勢の作り方、水のかき方など、実際に泳ぐ際に必要なことを学ぶ機会も必要ですが、どこかのタイミングでは水の中に飛び込んで実際に泳いでみなければなりません。できるとわかるは違うからです。できるためにはやってみるしかありません。 これを教育に当てはめると、どこかのタイミングで実際に社会でやってみなければならないことに

          子供達が社会で生きていけるようにするには、社会を体験するしかない

          見立てる力はどのように育まれるのか

          長文ファンの皆様おはようございます。 私はクリエイティブと言われる能力は「見立てる力」に支えられていると考えています。何かになぞらえる、そうだとしてみるというものが見立てることだと私は整理しています。 例えばある形の雲を見て「キリンのようだ」と思うのも見立てです。新しいテクノロジーを「まるまるのようなものではないか」とするのも見立てです。 都市部の生活は基本的に誰かが作った人工物に囲まれて生きるということですが、それは誰かの「意図」に促されて生きていることに他なりません

          見立てる力はどのように育まれるのか

          イメージトレーニングを考察する

          長文ファンの皆様おはようございます。 トレーニングで最も教えるのが難しいのは「イメージトレーニング」です。純粋に本人の主観体験であるためにアウトプットを確認することができないからです。トマスネーゲルが言うように体験は観察できません。 いや、MRIなどを撮って脳内の反応で測定する方法があるではないかと言われるかもしれません。しかしどの反応が良いかという基準を決める際に、結局イメージトレーニングが上手い(どうやってそれを知るの?)とされる人の主観報告に頼るしかありません。

          イメージトレーニングを考察する

          トップアスリートが持つ特性の分析

          長文ファンの皆様おはようございます。 トップアスリートは努力するだけではなることができません。「勝負強さ」と「ぶれない執着心」が必要です。しかし、これには裏の側面もあります。 勝負の時、アスリートは多くの期待を背負っています。観客がたくさんいる中で、自分のプレーでチームの勝敗が決まる。さらには観客もそれで一喜一憂するわけです。 よくアスリートは優しすぎるとダメだと言われますが、もう少し正確に言えば「共感を遮断できなければならない」だと思います。社会的重圧の正体は他者への

          トップアスリートが持つ特性の分析

          今ここを生きる※『更生保護(令和6年3月号)』に寄稿

          2008年の北京を最後のオリンピックにしようと決めて競技を頑張ってきました。2008年のオリンピックは苦難の一年でした。まず1月頃にアキレス腱を痛めます。だいたいそこに痛みが出ると1ヶ月程度は走ることができません。 ようやく治ってきたと思った3月ぐらいにまた足を痛めます。今度はふくらはぎでした。4月のシーズンを迎えてもなかなか足が治りません。他の選手たちは皆試合に出ていい記録を出しているのに私だけ試合にも出られず、リハビリを続ける毎日でとても焦っていました。 ようやく足が良

          今ここを生きる※『更生保護(令和6年3月号)』に寄稿

          薄まらないものを握ることが戦略ではないか

          長文ファンの皆様おはようございます。 戦略を考える時「薄まらないものを握る」のが重要だと考えています。私は個人の人間なので個人でできることで考えてみます。 社会には薄まりやすいものがあります。例えば通貨、情報などでしょうか。物質的なものや情報は、供給可能なので、金や土地などを除いて薄まりやすいのだろうと思います。 何かが広がることは、自然と薄まることだとも考えられます。例えばSNSの参加者が10倍になるなら、自分をフォローしてくれている人数も10倍にならなければ占有率は

          薄まらないものを握ることが戦略ではないか

          その手段でストレスを解決できると知ってしまった後に

          長文ファンの皆様おはようございます。 人間は辛い時に「解決する手段があると知っている」と、その選択肢が常に頭の中をよぎるようになります。 人間が何かを選択するのは、良い感情の獲得であり、悪い感情の解消だとも言えます。 人生は解消手段を知る旅でもあります。子供の時はイライラしても、お菓子を食べるとか、人に当たるとか、ゲームや漫画にハマるとか、そんな解消方法しか知りません。選択肢がないわけです。 大人はそうではありません。多様で、大量な感情の解消手段があります。酒、ギャン

          その手段でストレスを解決できると知ってしまった後に