能登半島地震ファクトチェックシリーズ3「能登半島地震の死者数は熊本地震の5倍です」をファクトチェックしてみた

野嶋ゼミ2年のファクトチェックチーム宮本です。
今回は、「能登半島地震の死者数は熊本地震の5倍です。」という書き込みのファクトチェックを行った。



検査対象

「一般通報」誰でも情報提供できるの情報提供フォームから寄せられた精査された、精査されてない情報。能登半島地震による死者は熊本地震の5倍。

X(旧Twitter)

1.このテーマを選んだ理由

我々がこのテーマを選んだ背景には2つあり、被害状況が確定していない状況やデマを含めた多くの情報が溢れる中で、みんなが気になるようなわかりやすいポップな文言で書かれたデマは悪質だと感じたという点 、ツイートの投稿者は比較的権威高い人であり、また投稿者のフォロワーは4,7万 人もおり影響力が大きいと感じたという2点で、調査を開始することにした。

2.検証判定、レーティング

「全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあると評価する」というレーティングの「誤り」に該当すると判断した。

FIJ

3.検証過程1

 まず我々は、現在の両地震の死者数を比較してみることにした。
まずは今回起きた能登半島地震の方からだ。

令和6年能登半島地震による被害状況等について(令和6年1月16日08:40現在) 内閣府

こちらの資料では2024年1月16日(*検証時最新時刻)時点で死者は222人になっていることがわかる。
次に2016年年に起きた熊本地震の方を調べてみたいと思う。

平成28年熊本地震に関する被害状況について(344報) 熊本県HP

こちらの資料では2024年1月16日(*検証時最新時刻)時点で死者は273人になっていることがわかる。この比較だけで見ると到底5倍以上になるとは考えられない、だが我々は単純比較だけではいけないと次の検証に進んだ。

4.検証過程2

 次に我々は地震発生から 16日経過時点(*検証時最新時刻)での死者数を比較してみる事にした。まずは能登半島の方から。

令和6年能登半島地震による被害状況等について(令和6年1月16日08:40現在) 内閣府

こちらは先ほどと変わらず(*検証時最新時刻のため)222人だ。では熊本地震の方はどうであろうか。

平成28(2016)年熊本地震等に係る被害状況について(34報)熊本県HP

こちらの資料は地震発生から16日経過時点の2016年5月1日での資料だ。こちらの資料によると死者数は66人となり能登半島地震の死者数と比較するとその数は3.36倍で、間違いとは言い切れない数字となっている。しかし、やはり5倍は誇張表現ではないかと考えられる。


5.検証過程3

 加えてもう一つの検証事項は、死者数についてで、我々はもとのツイートがかなり先の(例えば半年後)の死者数を今現在の死者数を元に仮定し比較しているのではないかと推察し、検証過程2までの16日から更に約一週間経過した1月24日のデータをつかい、一週間でどれだけ増えたか、また地震発生から25日時点での死者数は何倍になるのかを検証した。
 以下が能登半島地震についての部分で、

令和6年能登半島地震による被害状況等について(令和6年1月24日09:00現在) 内閣府

こちらの資料では233人となっている。では熊本地震の方はどうだろうか

平成28(2016)年熊本地震等に係る被害状況について(52報)熊本県HP

こちらの資料をみると67人となっている。
このふたつの表を比較してみると25日経過時点での死者数は3.47倍と16日時点より増えており、また16日からの死者数増加数だけを見ても熊本地震が1人しか増えていないのに対し能登半島地震では11人も増えており両地震の増加死者増加数を比較すると11倍になっており、もしかすれば将来的には5倍に達する可能性もあるだろう。

補足

このツイートの主、早川由紀夫氏は日本の地質学者で2017年現在は群馬大学教授であり、情報源としては安心できると考えられる可能性は高いが、氏は過去の東日本大震災時において下記のような過激な発言をしている。

このままだと福島県がつぶれる。命か生活か。 togetter

その結果以下の様に大学から訓告されるまでに至ったので情報源としては注意が必要である。

訓告3 togetter



6.まとめ

以上、いくつかの観点から検証・調査したが、現段階で死者数は5倍には達しておらず、また将来的に5倍になる可能性があるというのも憶測の域を出ない。関連ツイートを見ると、能登半島地震の死者数は熊本地震の5倍なのになぜ自衛隊の派遣が少ないのかという日本政府への批判と言った意味合いもあるのかもしれないが、死者数と日本政府の批判は切り分けて考えるべきである。
またこのツイートをつぶやいている早川由紀夫氏は著名な地質学者で影響力もあり、情報発信には慎重さが求められる立場であるので、今後発信にはより慎重な姿勢で臨んでいただきたいと考えている。

出典

https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/11311 3.pdf  https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/23846 7.pdf 
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/113135.pdf
 https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/r60101notojishin/pdf/r60101notojishin_15.pdf
https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/r60101notojishin/pdf/r60101notojishin_22.pdf
https://togetter.com/li/127858
https://togetter.com/li/224486









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