加藤よしき

こんな残酷な話がありますか

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  • カサンドラ獄中記

    忌憚なき映画の話

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試写会便り『FALL/フォール』

■評価 ★★★☆☆ ■一言 シリアスな雰囲気は好みが分かれそう。高所恐怖症なら悶絶必至 ■あらすじ  高さ600メートルの鉄塔のてっぺんで、仲良しコンビが立ち往生 ■思っていたのと違う! という問題  映画を見ていると、しばしば面白い・面白くない以前に「思ってたんと違う!」で悩むことがある。本作『FALL/フォール』(2022年)もそういう映画だ。だってね、動画配信者が高いところに登って降りられなくなるってあらすじを聞いたら、そりゃアレな人たちを笑う、イイ意味で悪意ある映

    • 試写会便り『パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女』

      評価 ★★★☆☆ 一言 パク・ソダムのキュート&ヴァイオレンスなアイドル映画で、午後のロードショーの新レギュラーになれるポテンシャルはあり ■あらすじ  ウナ(パク・ソダム)は、裏社会の運び屋をやっている。今日も持ち前のドライビング・テクニックで、ワケありの依頼人を車に乗せて目的地へ爆走した。そんなある日、ウナのもとへ一件の依頼が飛び込んでくる。悪い奴らに追われる父と子を密航船へ運ぶ、というもので、いつもの調子で現場に入るウナ。ところがどっこい、この案件は想定を超えるタチの

      • 【映画の感想】『ノンストップ』

        ■まとめ ★★★☆☆ すべてが良い意味で中くらいで、僕は好きです! ただし「ユルすぎるだろ」と言われたら、ぐぅの音も出ねぇっす ■予告 ※以下、決定的なネタバレがあります。 読まずに観た方が楽しいので、ご注意ください。 ■あらすじ  つつましい暮らしを送る夫婦ミヨン(オム・ジョンファ)とソクファン(パク・ソンウン)。ことあるごとに抱き合ってじゃれ合う程度には夫婦仲は良好だが、経済的にはけっこう厳しい。最近の悩みは洗濯機が壊れたこと。愛する娘のために金を稼ごうと、今日

        • 【映画の感想】『ダニエル』

          ■まとめ ★★★★☆ いや~これはお好きな人にはたまらんですよ ■予告 ※以下、決定的なネタバレがあります。  読まずに観た方が楽しいかもしれないので、ご注意ください。 ■あらすじ  物語は、孤独な少年ルークの荒れた生活から幕を開ける。母親は精神を患い、父親とケンカばかりしている。家庭に嫌気がさしたルークは、近所に遊びに出かけるが、何やら人だかりが。気になって見に行ってみると、レストランに銃を持った男が乱入して、客も店員を皆殺しにしていた。惨殺された死体を直視したル

        試写会便り『FALL/フォール』

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          4本

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          4月のお仕事まとめ

          お疲れさまです。4月の各媒体で書いた記事をまとめました。お手すきの際にでも、ご確認いただければ幸いです。 ▽tayorini by LIFULL介護 さま(連載企画) 第2回「頼まれてないのに家族に無人島を買う男~ウィル・スミス伝説~」 https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/hollywood/002/ ▽リアルサウンド映画部さま ・海は広いな大きいな……人なんて無力やッ『アドリフト 41日間の漂流』 https://realsound.j

          4月のお仕事まとめ

          1~3月のお仕事まとめ

          こんにちは。ライターの加藤よしきです。なかなかtwitterだけですと、記事が流れてしまっていくので、一旦、こちらに1~3月までの仕事のまとめを書いてみるとことにしました。今のところ、こんな感じに記事を書いております。お暇な時にでも読んでもらえると幸いです。 ▽tayorini by LIFULL介護 さま(連載企画) ------------------------------------------------------------------------------

          1~3月のお仕事まとめ

          短編BL_007「そっちとこっち」

           高校の同級生が遂に結婚した。「遂に」っていうのは、そいつが結婚するのにそれだけ苦労したってことだ。その同級生は男で、嫁さん……と言っていいのかは分からないけど、ともかく相手も男だ。2人は同性婚ができる国に移住して、正式に結婚した。  あいつから「結婚した」という手紙が届いたとき、僕は呆れた。よくもまぁそこまでやるもんだ。僕にはこんな真似はできないな、と思った。  いや、正しくは真似できなかった。そんな真似をさせてやれなかった。    あいつとは高校の頃に付き合っていた。もち

          短編BL_007「そっちとこっち」

          短編BL_006「全部先輩のために」

          卓球には2対2で行うダブルスという試合形式がある。選手は2人交互に打球を打たねばならない。このためダブルスの選手には、シングルのように対戦相手の打球を2人が同時に見極めつつ、それに応じて即座にパートナーと立ち位置を変える柔軟かつ複雑なコンビネーションが求められる。  「足引っ張っるな。ブッ殺すぞ」  「うるせぇ。そもそもテメーが邪魔なんだ」  こんなのはよくない。それは重々承知だが、売り言葉に買い言葉だ。足を引っ張るなんて言われたら、頭に来て当然だろ。  八神 祐樹(や

          短編BL_006「全部先輩のために」

          短編BL_005「先客ストロング」

           自殺に来たら、まさか先客がいるとは。  花井 博(はない ひろし)は高校教師だ。しかし激務にうんざりしいたところに、彼氏にフラれ、自殺を決意した。せめて自分の人生を狂わせた学校に嫌がらせをしてやろうとストロング酎ハイ5本を片手に深夜の学校の屋上へ。さぁ飛んでやろうと思ったのだが。  「なんで、先生?」  4階建ての校舎の屋上には先客がいた。教え子の榊原 修一郎(さかきばら しゅういちろう)だ。安全柵の外側に出て、脱いだ靴は揃えてある。その隣には眼鏡と「遺書」と書かれた封筒。

          短編BL_005「先客ストロング」

          短編BL_004「気休めに、アイスを」

           アイスを2本買った。「奢り」と言って、山村 圭(やまむら けい)は幸田 隆太(こうだ りゅうた)に渡した。太陽はギラギラと照りつけ、アスファルトは鉄板のようだ。駄菓子屋の店先の置かれたプラスチック製の長椅子も火傷しそうなほど熱される。  8月、夏期講習の帰り道。いつもの道を歩いただけなのに、息が切れている。こうして冷たいアイスを食べると、ほんの一口でも救われるようだ。  「それで、考えてくれた? 大学のこと」  圭がそう言うと、隆太はアイスを食べるのを止めた。  「うん。考

          短編BL_004「気休めに、アイスを」

          短編BL_003「教科書の隅っこ」

           「好きな人を絵に描きましょう!」  幼稚園で先生にそう言われたとき、同じヒマワリ組だった山岡 肇(やまおか はじめ)の絵を描いた。すると途中で先生が「これ……山岡くん? すご~い! 上手に描けてるよ。大事な友だちなんだね」と聞かれたので、「ううん。ぼくのこいびとだよ」と正直に答えた。すると先生は言った。  「あはは、恋人はおかしいよ。だって岡崎くんも男の子なんだから」  岡崎陽介(おかざき ようすけ)は、それから絵を描くのをやめた。彼は絵が好きだった。好きなものを好きなよう

          短編BL_003「教科書の隅っこ」

          短編BL_002「図書室のマナー」

           うちの高校の図書室は1階にあって通いやすく、広いわりに人が少ない。その少ない利用者もマナーがよくて、とにかく静かだ。何人もいても、まるで2人きりみたいに。だから――。  矢田 明(やだ あきら)は図書館が好きだった。ここでなら、3年の先輩、藤田 健一(ふじた けんいち)と2人きりになれる。実際は2人きりじゃないけれど、2人きりだと思えば2人きりだ。  「その本、面白いですよね」  日が沈む頃、皆がボチボチ帰り始める。明も立ち上がり、先輩に一言だけ声をかける。今日の先輩はミ

          短編BL_002「図書室のマナー」

          短編BL_001「話は続くよ何処までも」

           この気持ちを口にすれば、「好きだ」と言ってしまえば、きっと何もかもが変わってしまう。だから ――  高校からの帰り道、川崎 啓太(かわざき けいた)は思った。  伝えたいことがある。だけど口に出すことはできない。「好きだ」というたった一言は、何もかもを変えてしまう。だから伝えられない。自分のすぐ横で「今日もだるかったなァ」とボヤき、かったるそうに微笑む男、向井 亮(むかい りょう)に。  高校3年生の春。そろそろ進路を決めなければいけない。大学受験は高校受験と全く違う。高校

          短編BL_001「話は続くよ何処までも」

          ギャルの魅力について

          今週は感情を大きく揺さぶられた一週間であった。落ち込んだり、凹んだりすることが多く、何とも哀しい気持ちになることが多かった。従来なら、こんな気持ちの時、私に元気をくれるのは、もちろん黒ギャルである。辛いときには黒ギャルに思いを馳せる事で、時には現実からの逃避行に成功し、時には現実に打ち勝つ力を得た。しかし、あまりにも黒ギャルについて考えすぎたせいか、あるいは黒ギャル縛りで小説を書いているせいか、黒ギャルというのが良く分からなくなってきた。「俺はなぜ、黒ギャルが好きなのか?もう

          ギャルの魅力について

          色々な黒ギャル13「子供と触れ合う黒ギャル」

           ガキは嫌いだ。ギャーギャーうるせーし、聞き分けはねーし、頭悪いし。親になったヤツらはみんな、「でも、子供って可愛いよ」って言うけど、そうは思えねぇ。今だってそうだ。ガキはギャーギャー泣く。泣くなって怒ると、もっと声を大きくして泣く。これだからガキは嫌いなんだよ。 仕事でガキを預かることになったとき、最悪なことが起きそうな予感がした。うちとガキの相性は最低だ。うちはガキが大嫌いだし、ガキもうちみたいな人間のことが嫌いだ。通りすがりのガキでも、うちの香水とか化粧品の匂いを嗅ぐと

          色々な黒ギャル13「子供と触れ合う黒ギャル」

          色々な黒ギャル12「時をかける黒ギャル」

          その老人から「時給一万出すから」と聞いたとき、立花由加里はてっきりエロい仕事かと思ったが、実際はもっとヤバい仕事だった。  老人は望月健と名乗った。彼は、その日も日サロを終えて、繁華街をブラブラしていた由加里に話しかけてきた。そして、「時給一万出すから、わしの家に来て働いてくれ」と言った。絶対にヤバイ仕事だと思ったが、由香里も遊ぶ金が欲しかったし、まぁそういう変態相手の商売の経験がないわけでもないので、とりあえず着いていった。  銃を渡された。それもM4カービン。由香里に

          色々な黒ギャル12「時をかける黒ギャル」