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HHhH (プラハ、1942年)

★★★★★。HHhHとは「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」というドイツ語の頭文字を意味する。1942年、ナチス・ドイツに占領されたチェコスロバキアのプラハ。ヒトラーの右腕のヒムラーのさらに右腕であるラインハルト・ハイドリヒが統治者として君臨し、残虐なユダヤ人絶滅政策を実行している。ロンドンの亡命政府は、2人の青年工作員を占領下のプラハへと送り込んだ。祖国を蹂躙する「金髪の野獣」ハイドリヒを暗殺するために。ミッション・インポッシブルな作戦をドキュメンタリタッチで描く実にスリリングでドラマチックな作品だが、内容はかなり細部まで史実に基づく。

本作がゴンクール賞最優秀新人賞を受賞するほど、とても独創的なのは「歴史小説とは何か」という問題意識が主題になっていること。史実の細部にこだわればこだわるほど、作為が生じてしまう矛盾に、作者自身が苦悩する声が作戦進行の文章に頻繁に挟まれる。たとえば登場人物の会話に続いてこんな独白が置かれる。

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