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ドラフト順位予想における"適正順位"の考察と、今後のドラフト順位予想の発展について

 お久しぶりです。だけんさんです。

 さて、皆さんはドラフトファンたちの間に”適正順位”という考え方があることはご存じでしょうか。

 誰が言い出したかは定かではありませんが
このドラフト候補を何位で獲得するのが最も適正なのか?
 を思い思いに設定し、本番のドラフト会議において、適正順位と照らし合わせる事でどの球団がより他球団より巧く(――または下手に)指名をしたのか、を大まかに測ることが主な目的とされています。

 今回はそんな適正順位についてもう少し掘り下げてみたうえで、今後のドラフト順位予想についても考えてみよう!というnoteになっております。

① 適正順位とは

 適正順位には大まかに以下の特徴があります。

12球団が参加するドラフト会議を想定しているため、「○位」には12人の幅がある。(1位で競合するかor外れ1位か。2位でもウェーバー巡の前の方かor後ろの方か。と部分的に強調付けされる場合もある)

・本番のドラフト会議で適正順位と異なる順位で選手を獲得した場合、適正順位より上で獲得してしまったなら低評価、適正順位よりも下で獲得出来れば高評価とされることが多い。(あくまで選手単体への評価ではある)

・(周囲の評価を参考にしていることもあるが)個人の主観による

 ざっくりですがこれくらいになるかなと思います。


 そもそもドラフト候補への評価制度自体はNPB球団やMLBでも、[S,A,B,C]といったランク付け方式や、「20-80スケール」といった評価方法があります。

 そんな中で生まれた”適正順位”方式はどういったメリットがあるのでしょうか。

② 適正順位方式のメリット

 この適正順位方式のメリットですが

①”誰が見ても”その選手の評価・ドラフトの成否が分かりやすい。

  適正順位はドラフト候補の情報に明るく無い人達にとって、非常に分かりやすく簡便な判断材料です
 適正順位は事前に用意された適正順位と実際の順位を見比べるだけで、「適正どおりの順位で選手が獲得出来たのだな」「本来○位で消えていただろう選手が残っていたんだな」といったように、毎年ドラフトを追っていなかったり、ランク評価に明るく無い人でもドラフトの成否を理解しやすい仕組みになっていると思います。
②12人の幅があるので、比較的予想がしやすい

 
一口に2位と言っても"13番目~24番目"、3位なら”25番目~36番目”といったように、各順位には12人の幅が存在しています。
 この幅は”予想する側”にとっても比較的参入障壁が低いと言えます。
 これは全体順位と比較すると分かりやすいのですが、外れ1位に迫る全体順位13番目の選手と、3位目前の24番目の選手、この両者の順位の間には「なぜ13番目と24番目なのかという"根拠"」が要求されます。その一方で適正順位ではこの2者を”2位クラス”という同一線上に置くことが出来ます。候補1名毎に細かく上下を決めずに幅を持たせることで、『提示する側も大きな負担なくドラフト予想に参加出来る』ことも利点の一つだと考えられます。

 以上のように適正順位は、予想する側・見る側双方にとって扱いやすさが優れていることは大きなメリットだと考えます。
 知らない選手の名前を見た時に「何位くらいなの?」と聞いたことのある経験をしたことのある方は多いように思いますし、"適正順位"という言葉は使っていなくても同じ事をしているケースは多いでしょう。

③ 適正順位方式のデメリット

 続いて適正順位方式のデメリットについても考えてみます。

①各チームの補強ポイントに対応出来ない
 
適正順位方式はあくまでも「その年の選手をどれくらいの順位で獲得するのが適正なのか」というものであり、基本的にはそれまでのドラフト結果などを基に作成されます。
 一方で各チームには『補強ポイント』が存在し、場合によってはファンの順位予想より上での順位で指名されることがままあります。
 なぜなら、既に長所となっている箇所よりもチームの弱点を補強する方が上積みを作りやすいからです。逆に各球団の補強ポイントから外れている選手は適正順位とされた順位より下で指名されることもあります。
 このため適正順位と実際のドラフト会議での指名とは乖離した内容になる可能性が高く、指名順位を基にした評価制度としては正確性に欠けます。
②個人の主観によるので人によって評価が異なる
 
他の評価制度にも共通して言えることですが、順位評価は個人の主観に依るところが大きく、人によって評価が異なるケースがあります。
 特に適正順位方式は、簡便な評価方法であるためSNSや掲示板、メディアを含めて多くのドラフトファンに使われています。
 そのため周囲の意見や仮想(模擬)ドラフトの影響や、知識や経験の有無などなど、『情報を収集する環境や野球観によって、主張する適正順位が大きく異なる』ことが頻繁に起きています。本番ともなれば、当然のことながらプロスカウトの目線とファンの目線で評価が異なっていることも当然多いです。(厳密にいえば球団毎にも評価が異なるケースがあります。良かった時の試合を見ていたか/怪我の状態はどうか/素行はどうかetc…)
 もちろんすべての評価を確実に的中させることは不可能ですが、適正順位方式は特に個人毎のブレが大きい評価制度であると考えられます。

 以上のようにデメリットとしては、正確性に疑問が残るという、なんだか身も蓋もない話になってしまいました。
 勿論順位で評価を測る構造上の問題でもあったり、個人の主観で評価している以上はどうしようもない問題ではあるのですが。

④ 今後のドラフト順位予想の発展

 さて、適正順位方式にはメリット・デメリットがあるのは示したうえで、今後どのようにドラフト順位予想は発展していくのでしょうか。
 具体的な例を挙げながら考えてみましょう。

・モックドラフト(仮想/模擬ドラフト)方式

 既に行われており一定の信頼性があるものといえば、Twitterや掲示板、はては大学の同好会に至るまで、大きな広がりを見せているモックドラフト方式です。
 適正順位方式ではカバー出来ない”補強ポイント”への対応が出来る点は大きな強みと言えます。
 一方で、1位指名が抽選方式であるNPBでは、1位指名の抽選がその後の指名に大きく影響してしまうという点や、参加者のスタンス(選手紹介型/本格予想型/理想追求型…等)によっては、ドラフト順位予想という意義からは外れてしまうケースも。
 主催者が”完全予想型”のモックドラフトである意思を明確にしたり、参加者をチーム制にすることで、よりドラフト順位予想を近くすることは出来ます。その一方で、今度は参加のハードルを引き上げてしまうことになり、開催の成立自体が怪しくなってしまうなどトレードオフな関係と言えるでしょうか。


・カテゴリー別ランキング方式

 一部のドラフトファンの間で採用されており、実際に私もドラフト予想や仮想ドラフト参加時に取り組んだことがあるのが、このカテゴリー別ランキング方式です。
 画像を見る方が早いと思いますので一例を載せておきます。

ランキング

 このように同じカテゴリー同士の選手でランク分けをすることで、ポジションの違いや育成/即戦力といった違いを排除し、同一カテゴリーの中においての指名順を予想するという方法です。
 上記は2020年における本指名を基にした図ですが、即戦力投手の5名が全員1位指名のメンツなのに対し、他のカテゴリーは早くても4位指名にならないと5名が埋まらないという結果になっており、あくまでもカテゴリー別の指名順という事は考慮する必要があります。
 そのため、誰が何位で指名されるかという指名順位予想には適さない方法ですが、比較する要素が少ないためカテゴリー毎の指名順予想は容易であるというのはメリットでしょう。
 一定程度の知識やフォーマットさえあれば参加しやすい方法ですが、こちらも適正順位方式と同じくやや主観的な評価になりがちです。比較する要素を絞ることで個人間のブレは適正順位より小さくなるとは思いますが、選手間の能力の差をこうした表から読み取ることは困難です。


・"多人数参加型"適正順位方式

 最後にご紹介するのが多人数参加型で適正順位を決めるという方法です。
 因みに周りでやっている方を見たことはありません(多分)。
 google フォーム等のアンケート機能を用いて、ドラフトファンにアンケートを取り、どの順位帯で最も適正順位であると認識されているかを調査する方法です。
 例えば下図のようなアンケートを作成して回答してもらい

アンケート

  以下のようにグラフにまとめて、適正順位を把握するというやり方です。

画像3

 この方法のメリットは、従来と同じように適正順位の考え方を用いながらも、個人の主観を纏めることで全体的な傾向を可視化することが出来ます。
 上記図であれば、春の選抜で活躍した石田隼都(東海大相模③)選手は、『単独1位指名が適正である』と考えているのは回答者の2割程にすぎませんが、『2位後半が適正である』と考えている回答者は8割強に上ります。
 このように個人の感性による適正順位も集積すれば傾向が見えてくるのがこの方法の利点であると思います。
 補強ポイントに対応していない点は難点ですが、『過大評価である』という回答が全体的に少ないのであれば、「適正順位的にはやや高い評価だが、補強ポイントに合致しているのであれば一定の評価対象になる」といったように柔軟な使い方も可能ではないでしょうか。

 デメリットとしては、多人数へのアンケートの性質上、ドラフト候補全員の評価を判定するのは不可能に近いという事です。
 特に映像の少ない地方の選手や、独立リーグの選手など、回答者の多くが情報にアクセスしにくい選手となると回答の信頼性を損ねます。
 全国大会に出場していたり、ネット中継のある大学リーグであったりといった、全員がある程度前情報をもって回答出来る選手を評価するのに限られる手法であると言えます。
 また、どれくらいの人数から信頼出来る母集団であるかという"数の担保"は考えないといけないですし、同時に回答者がドラフト候補に精通しているかどうかといった”質の担保”も考えなくてはならず、相反した問題も抱えているのが課題です。


⑤ まとめ

 今回のnoteのまとめは以下のようになります。

・適正順位は予想する側・見る側双方にとって扱いやすさが優れている。

・一方で、
正確性に疑問が残るという問題も抱えている。

・今後は『
モックドラフト(仮想/模擬ドラフト)方式』・『カテゴリー別ランキング方式』・『"多人数参加型"適正順位方式』などの順位予想方式の発展可能性があるが、どれも"一長一短"である。

 今や”適正順位”という言葉が独り歩きしていますが、使い方さえ間違えなければ非常に簡便で親しみやすいドラフト会議予想の手法であると言えます。
 その一方で、正確性には問題を抱えており、だれかれ構わずなんでも鵜吞みにしたり、信頼しすぎては損をすることでしょう。

 更に今回はいくつかの順位予想方式を紹介させてもらいました。
 直接名前は出しませんでしたが、現在進行形の企画があったり、昨年の企画者がせっせと今年も準備をしている様子を見ています。興味があればチェックしてみてください。

 また、今後上記とは違った順位予想方式が新たに発案される可能性はありますが、完全に問題を解決する方法は中々現れないと思います。
 結局のところ、自分がドラフト会議予想で悩んでいる原因や、深く考察したい目的に合わせて、最適な順位予想の形をチョイスするのが一番であると思います。 
 このnoteが皆さんがドラフト会議を楽しむための手助けになれば幸いです!

⑥ 宣伝

 今回紹介した『"多人数参加型"適正順位方式』を、仮想ドラフト仲間である蘇龍さんが開催した「Deドラ2021」参加メンバー+ゲストで実際に試してみました!

 というかこのnote全体がその導入部でした(テヘペロ😋)

 その結果とまとめたグラフは後日noteで公開しますので

お楽しみに!!!!

多分甲子園が始まるまでには出せると思います(激遅)

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