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【読書メモ】法華経

私がこの経典で、着目したのがその「政治性」である。

法華経では、無我、無常、縁起などと言った、仏教の基本的な理論は踏襲されている。しかしそれまでの経典と比べ、明らかに経典の重要性が強調されている。

火事に巻き込まれそうな子供を家から救い出すために、羊の車の玩具、鹿の車の玩具、牛の車の玩具を使い、子供たちを救い出す、しかしこれは方便であり、本当に正しいのは牛の車の玩具だけであるとされている。つまり法華経である。

また、この経典を学び、伝え、これに基づいて修行することでいかなるものでも仏になれるとする。そして、この経典は何億何劫にもわたって輝くとしているのである。

経典に出てくる菩薩のうちの一人である、不常軽菩薩の姿も示唆的である。経典を伝えながら、誰からに対しても軽んじないと言い、その結果軽んじていると思われ、そして軽んじられたが、最後には皆から軽んじられないようになる。

これらの巧みな比喩表現、挿入される話を通じて考えられるのは法華経の部派仏教への反感と、経典の絶対性を訴えることにより経典を末長いものにしていこうというまさに仏教内での政治闘争における役割であるである。法華経にでてくる菩薩は、上に上げた不常軽菩薩のように現在では軽んじられているけれど、それにもかかわらず教えを理解されるまで永きにわたって説き続ける姿が多くみられる。このような経典による宗教的ストイックさは政治性の観点から説明できるように思える。法華経を信じることで生まれる外部からの目や疑念を持つものたちを払拭し、その目を教えのみに向けさせるのだ。

法華経が現代に通ずるものもある。法華経を読むと、法華経に帰依している宗教団体や人物の原理主義的な態度や、宗教的なストイックさ、主張の強さが説明できるようにも考えられるのである。

法華経は上のようにそこに含まれた政治性をくみ取ることが容易にできる経典であったので、その背景や時間軸を捉えることにより面白みがさらにましたのであった。

【参考資料】


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