EP10 少年Nの変貌

6月も中ごろになりかけていた時、少年Nが変貌を遂げた。

少年Nは僕の最初にできた友人であり、山奥の中学校出身の素朴で素直な可愛い顔をした少年であった。彼は国立中を交えた、非F中軍団のなかではあまり良い位置にいなかった。テストの点数や成績を材料にたびたびノッポのHなどのクラッシュに合うからだ。

非F中軍団の中での地位を下げていった少年Nは日に日に軍団の中で存在感を失っていき、黙り込むように思えた。

そんなある日の休み時間。少年Nとある男が話しているのを見た。この学年一の悪(ワル)と言われていたYM(他のクラス、学科所属)である。YMは後に喫煙や万引きがばれて停学を食らうような男である。少年Nは遠慮しながらも彼と楽しそうに喋っていた。なぜ、YMと少年Nがしゃべっているのか。どのような接点があるのか。最初に見た時はそれが疑問だった。

後々、話を聞くと少年Nが所属していたバスケット部が練習終わりに学校近くのコンビニ前でたむろしているところにYMが出くわし、YMと知り合いだった部員を交えて、話していたところYMが少年Nを気に入り、話すようになったのが始まりのようだ。そして、僕らのクラスには後白河というYMと大そう仲の良い人物がいたため、その後白河に会いにきて話すのに少年Nも交えるようになったらしい。

要はYMに少年Nが気に入られたのだ。

少年Nはこれを機に非F中軍団から距離を置き、同じクラスの後白河やその友達YMを中心とした学校で「悪」で名が通っていた者たちの集団へと取り込まれていった。YMや後白河と絡む少年Nは何か今まで出会うことのなかった境地を手に入れたようでとても生き生きと、楽しそうな表情をしていた。

非F中軍団で縮こまって、何かを恐れていたのとは大違いだ。

そんな生き生きとしていた少年Nであったが、傍からみると完全にYMや後白河の太鼓持ちであった。しかし、彼にそれを気づかせるものもいないし、たとえそれに気づいたとしても彼は非F中軍団でクラッシュに合うより、YMや後白河の太鼓持ちの方がずっとよかったのだろう。それは、彼の態度や表情を見てもわかった。

少年NはYMや後白河と出会ったことによって突如として変貌をとげた。そして、非F中軍団を離脱したのだった。

僕ら非F中軍団は変わりつつあった。

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