見出し画像

エリートの、ふりしてアート「いまに生きるということ」

「昨今、実際はすべてのものが変わっています。しかし、私は違います。私は幼少時代を送った町に暮らしており、私と同年代の人々の目で私は再び過去を見るのです。私は古い習慣を破ることなく年齢を重ねてきた人々の容貌が何にもまして好きです。」

 SNSで世界中の人々と繋がり合える2019年において、”グローバル”がもはや錆びれた言葉になりつつある。わざわざ近隣のスーパーまで出向かずとも、生鮮食品が宅配され、家での暇つぶしとしてTVをつけっぱなしにする代わりに、AIによりオススメされた、自分好みのYoutubeチャンネルを流し見する。

 冒頭の文章は現在に生きる哲学者か思想家、アーティストの言葉と思う人も多いと思います!が、、、これは19世紀の画家、ポール・セザンヌが晩年(1900年頃)語ったものです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 19世紀中頃までのパリは悪臭漂う不衛生な街だったそうです。上下水道が整備されていなかったため、トイレがなく、汚物は外へ投げ捨てられていたのだとか、、、omg

 1953年にオスマン男爵がセーヌ県知事(パリを管轄する知事)に就任してから、パリの街は徐々に変化しました。上下水道が整備されたり、新たな建物、ランドマークが出来たりと、近代化が急速に進められたのです。これが”パリ大改造”と言われている都市整備なのです!

 現在、光の都として名高いパリの街は、この時に形作られました。

 そんなパリから身を退け、故郷の町、風景、そして、そこに住む人々を描いたのが1880年以降のセザンヌです。好んで描いた題材に”サント=ヴィクトワール山”、と”農民”が挙げられます。

 ”サント=ヴィクトワール山”は本記事トップにある風景画で、この主題で何枚もの連作を描き続けました。

 そして、もう一つの題材である”農民”を扱った絵画がこちら!


ポール・セザンヌ『カード遊びをする人々』


 会話が弾み、和気あいあいとカードゲームをするふたり!!、、、ではなく、淡々と、物静かにカードをいじり、ゲームが進められています。まるでカード遊びを通してコミュニケーションを取っているかのようです。

 彼らの目から過去を感じたというセザンヌ。近代化するパリから離れ、生まれ育った街での生活を選んだ彼は、単なる懐古主義ではなく、好きな物がわかり、それらに囲まれて生きていきたいと願った結果なのではないでしょうか。。。

 いつの時代も変革が起き、周りの状況は日々変わっていくのだと感じると共に、その時代の流れに乗らず、自分が好きで心地よいと感じられる環境に身を置き、生業を果たす意思が素晴らしいと思えた作品でした!!ステキ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「昨今、実際はすべてのものが変わっています。しかし、私は違います。私は幼少時代を送った町に暮らしており、私と同年代の人々の目で私は再び過去を見るのです。私は古い習慣を破ることなく年齢を重ねてきた人々の容貌が何にもまして好きです。」



 ちなみに〜〜〜トップ画にしている『サント=ヴィクトワール山』は葛飾北斎の富嶽三十六景を題材にしていると言われています。「北斎が引用されたモチーフは?」との記事で取り上げておりますので、ぜひ、併せてご覧いただけたら幸いです!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?