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the quiet room - You レビュー

大丈夫だよ どうか 心の向く方へ

春になると、くわるーを聴きたくなる女の子って、多いんじゃないか。

あたしは、くわるーが好きだ。とくに、春に聴くくわるーが。

「くわるー」の愛称で親しまれるthe quiet roomは、2021年にニューアルバム『You e.p.』をリリースした。

先行シングルとして一足に配信されたのが、タイトルトラックである「You」。

配信が開始された頃は、北陸では雪が積もるほど、春は立っていなかった。

でも、春は来てないのに、「You」は、春一番のように、あたしに爽やかに吹いてきた。

音質とメシは、いつもよくわからん!けど、好き嫌いははっきりしてる。だから、そこらへんの電気屋さんで買える、やっすいイヤホンで、いつも最高の音楽を聴く。

ああ、すごくいい。あたしは、『You e.p.』の中でも、「You」が一番お気に入りだ。この曲だけは、ボーカルのメロディと歌詞が、頭ひとつ飛び抜けている。

それは、『You e.p.』に限った話ではなくて、今までのくわるーのすべての曲の中で、頭ひとつ飛び抜けているのだ。あたしには、そう思えるほど、この「You」に胸を撃ち抜かれた。

ピアノの音も、ドラムの硬くて抜けるスネアの音も、ギターソロも、すべてこのボーカルのメロディラインと歌詞を支える土台になっているように感じる。

どんなに前に出てきても、ボーカルのメロディと歌詞には勝てない。そして、あたしはそんな曲が大好きなのだ。

くわるーが好きな人は、くわるーのどんなところが好きなんだろう。声や歌詩やギターソロやベースの音や顔や雰囲気や……などなどたくさんあるだろう。

あたしは、くわるーの歌詩が好きな人間だ。特に、このフレーズをみてもらいたい。

後悔なんてしないで 街に雨が降って 雨が降って 躊躇いなんて全部 流していくから

サビの2まわし目の歌詞なのだけれど、「後悔なんてしないで 街に雨が降って 雨が降って」で、一度途切れるのだ。

ここだけ聴くと、「街に雨が降って」というネガティヴな情景を浮かべたまま、「後悔なんてしないで」と励まされるのだ。

そのあとのフレーズで、「ああ、雨が躊躇いを洗い流すから、後悔なんてしないでと励ましてくれるんだ」と、無事に納得できるのだけれど、「後悔なんてしないで 街に雨が降って 雨が降って」という、矛盾した励ましのほうが、あたしの感情を揺さぶった。

新しい世界で挑戦する少女が、『雨に唄えば』のジーンケリーのように、雨に打たれながら、笑顔で街を翔んでいく、そんな溢れる躍動感が雨すらをも飲み込んでいくイメージが、頭に想起される。

そして、それは、この世界を、こんな状況を生きていくうえで、とても大事なことのように思えるのだ。

青春なんて消えても、限界が近くても、なんなら愛しい日々が消えてしまっても(!)、街に雨が降るなら、きっとあたしは生きていけると思う。







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