俺とお酒と時々バーと

酒を飲みだした時のことは、今でもよく覚えている。当時SNSがなくてよかったなあと思う。もしあったら、きっと炎上していた。

まあその辺りの話は置いておいて、話せる話をしよう。

俺が二十歳の頃、年上の友達ができた。彼は大学生で、バーでバイトをしていた。俺はバーなどはシブいおじさんが行くところで、綺麗な女の人を見かけたら一杯おごり「あちらのお客様からです」とかやるところだと思っていた。

「一回遊びに来てみなよ」と言われて、二十歳の俺は二万円を握りしめてバーの扉を開けた。相場が全くわからなかったので、とりあえず二万円を下ろしたのだった。

富山市の総曲輪通りの裏手にある、洞ほら屋というバーだった。マスターが

「皆様の愛で成り立ってるお店です!」

と声高らかに宣言するほど、その店は緩かった。バーデビューとしてはもってこいの店だったと思う。地下一階にあるその店は、名前の通り洞穴を思わせる作りで、カウンターが十席ほどあるだけで、ボックス席はなかった。ボックスがなくて逆に良かったと思う。何故なら、カウンターで横並びのお客さんと話をすることを覚えられたからだ。

一通りの酒はあった。が、初めての俺には全くわからない。ついでに横文字も苦手なのでラベルも読めない。とりあえずオススメを聞いて飲み始めた。一杯目は確かカナディアン・クラブだったように記憶している。C.Cと呼ばれるカナダのお酒だ。それまで洋酒はジョニー・ウォーカーの赤かサントリーの角しか知らなかった俺にとって、棚に並ぶ酒瓶はどれも魅力的に見えた。何杯かいろいろと試した後、衝撃の出会いをすることになる。それはバーボンとの邂逅であり、その後の酒人生の決め手になる出会いだった。

ワイルド・ターキー8年、これがあまりにも美味かった。そこのマスターはバーボン党で、いつもこれをストレートで飲んでいた。ここから俺のバーボン好きは始まった。

洞ほら屋は決して広い店ではない。だから酒の種類に限界がある。そこで、マスターが「今日は◯◯の日」を作る。お買い得だったウイスキーなどを重点的に飲む日だ。スコッチやらバーボンやら、日によって違った。そういう日は他の種類をほとんど飲まない。ただひたすらボトルを空にしていく。だから酔っ払っていても味は結構覚えているものだ。まあ、今となっては銘柄をあまり覚えていないのだが。日によってはマッカランの日もあった。そういう日は会計が高くついたが、基本的に他の飲み屋よりはかなり安かった。若い俺を慮って、かなり勉強してくれていた。その時に出会ったオールド・グランダッド114というバーボンは、今でも俺の大好きな酒だ。もう終売になってしまったようだが、今でも入ったバーにこれがあると必ず飲んでいる。あの頃の自分を思い出しながら。

かなり高頻度で通っていたので、マスターとも仲良くなり、何故か店の鍵をもらったりした。一度、その鍵を使って仲間内だけの営業をしたことがある。

その日は俺が主催した飲み会で、かなりの大人数だった。そもそも店に入れるのか?と思ったが、とりあえず行ってみたら店が閉まっていた。マスターの携帯に電話を入れると

「お前、鍵持ってるだろ?お前がやれ!売上を立てろ!いくらだったとしても、俺は一切文句を言わん!」

あまりにも衝撃だった。が、他に行くところもないので店を開け、仲間を中に通し、俺はカウンターに立った。当時は「ありえねえだろこの店」と思ったが、今となってはいい経験だったと感謝すらしている。その日は仲間に飲ませ、俺も飲み、売上を立てた。本当に一言も文句は無く、ただ一言

「助かった!」

と笑っていた。懐の深い人だと思った。

本当に、いろいろやった。クソガキ的行為も多かったし、トイレに籠城したこともあった。今だったら出禁を食らっていても仕方ないと思う行為もあったはずだ。でも、許してもらっていた。失敗すると後悔する。だからそこを治す。俺の治療と成長を大きな心で許してくれた優しいお店だった。

その後俺は上京したが、帰るたびに立ち寄り、飲んだ。いつかのタイミングでマスターが県外に出ることになり、代替わりして、今はもうお店は無くなってしまったが、きっと一生忘れることはないだろう。


俺は何度か引っ越しをしている。引っ越すたびに、近所にバーを探す。それは純粋に飲みたいのもあるのだが、土地土地のマスターと話すのは面白いし、来ているお客さんと話すのも楽しい。かっこよく言えば、大人の社交場だ。社交場は別にバーだけでなく、居酒屋でもスナックでも何でもいいと思う。つまり、場の空気を読み、年齢層やバックグラウンドの違う人達と話す練習なのだ。

今住んでいるところの近くにも、顔なじみのバーが五、六軒ある。それぞれ雰囲気は違うし客層も違う。だが、それぞれが面白く魅力的だ。今日もこれを書き終わったらどこか飲みに行きたいなと思っている。


酒を飲まない若者が増えた。昨今の若者はお金がない。まあ俺も無いが、食費を削って飲んでいる。

コスパという言葉が台頭してきた。非常に重要な概念だ。だから今、安く手軽に酔えるストロング系のチューハイが売れている。時代の流れだな、と思うし、寂しいもんだな、とも思う。確かに500ミリ缶一本で百円ちょっと。手軽に酔える、飲み口も爽やかで飲みやすい。俺もたまに飲んでいる。

インターネットをしながら、ゲームをしながら、それもいいだろう。だが、そうでない形の酒もある。居酒屋でキンキンに冷えたグラスに氷を放り込んで飲むホッピーは抜群に美味いと思う。バーで100プルーフのバーボンをストレートで飲み下し、胃に火が付く感じが好きだ。オネーチャンのいる店で、鏡月か真露かを使って見たことのない緑茶で割られた、やけに濃い酒も嫌いではない。たまに外に出て飲んでみること、俺はこれをオススメしたい。好き嫌いはある、合う合わないも確かにある。だがもしも、これを読んで「興味があったけど、あと一歩が踏み出せない」と思っている人がいるかもしれない。行ってみてくれ。合わなかったらやめればいい。だが、二十歳の頃の俺のように、もしかしたら目から鱗が落ちてやたらとハマる可能性だってゼロではないのだ。

酒と一口に言っても膨大な種類がある。そこから自分の好きな酒を探すのも楽しいのではないだろうか。


ここまで勧めたが、最後に言っておく。

お酒は二十歳になってから!

お酒は適量を守って楽しく飲みましょう!

飲酒運転は法律で禁止されています!


以上!楽しいアルコールライフを。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

49

八雲みつる

note編集部のお気に入り記事

様々なジャンルでnote編集部がお気に入りの記事をまとめていきます。
1つのマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。