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うさぎちゃん -11-

盲点である。喫煙所の植え込みで座れる場所は2方向あり、片方は正面にガラスがあるが、植え込みを挟んだその反対側にはガラスはない。

今日久しぶりにうさぎちゃんに会うことができた。彼女の定位置はガラスに面した側の端っこなのだが、先に座っている人がいたらしく、あろうことかガラスなしの方に座っているではないか!

これではガラスに反射したうさぎちゃんを眺めることは不可能である。勿論、座っているうさぎちゃんの前方にさりげなくたたずむことはできるが、それこそどうやって彼女を眺めることができようか。

私は座っている彼女から見て3時方向、いや正確には2時方向に3メートルほど離れて立ち、顔の向きは彼女とは逆向きにしてタバコを吸った。3メートル離れて互いに真逆方向を見ていたとしても、視界に気配をギリギリ感じるゾーンのハズだ。

気づくかな、、、うさぎちゃん

うさぎちゃんは誰かと電話をしていたので、しばらくは座っているのかと油断していたところ、突如立ち上がり、私の方に歩いてきたのだ。。。オフィスに戻るのだろう。

私の右目の視野にギリギリ収まっているうさぎちゃんが、今私を見ながらこちらに歩いてきていることが分かったとき、緊張のあまり棒立ち。蛇に睨まれたカエル。うさぎちゃんに睨まれたおっさん。カエルはどうか知らないが、おっさんは天にも登る気持ちである。

私は何もすることができず立ち尽くす。

そして2時間後。再びうさぎちゃんに遭遇。今日は、リズムが彼女と合っている。

今回もうさぎちゃんの指定席は別の人が占領していた。彼女は普段座らないはずの一つ遠い植え込みにこちらを向かって座ったのだ!

遠目にうさぎちゃんをチラ見する。彼女はスマホに夢中だ。

私がタバコを吸っていたことを彼女が気づいていたかは知らないが、うさぎちゃんの盲点に立って久しぶりにスケバンのうさぎちゃんを拝むことができたのだ。

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