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2021年12月の日記~就活力より就活観、経営力より経営観が大事号~

12月*日
 世田谷文化生活情報センター「生活工房」で行われたワークショップに二日間、参加した。ゲストスピーカーでもあったのだが、出番は二日目のラストなので、一日半は文字通り参加者だった。
 タイトルは「どう?就活」で、初日のテーマは「仕事ってなに?」、二日目は「会社ってなに?」。何かしらの事情でこのテーマが気になる人が、両日とも50人以上集まった。
 最初のゲストは「慎さん」。慎さんは軽井沢で風越学園という学校を開設した。「観(かん)がないのに力(りょく)ばかり身に付けようとするから辛くなる」という言葉が印象に残った。例えば恋愛観がないのに「モテ力」ばかり身に付けようとすると、八方美人的な振る舞いを自分に課してしまう面が出て来かねない。同じように、就職観が未熟なままに就活力ばかを身に付けようとすると、という問い。観と向き合うのが就活であり内定がゴールではないと、ぼくも心から共感した。
 二人目のゲストは校正者の牟田さん。小さいながら出版社をしている自分にとって職業人としてもとても気になる存在だったが、仕事への丁寧な向き合い方に感動すら覚えた。「期限があるから仕方ないのだけれど、ゲラを返したくない気持ちになります。もっと読みたい、もっと良い本にするために何かできることがあるのではないか。そう思いながら仕事しています」。そんな風に自分が今向き合えている仕事は何か、あるのか・ないのか、そんな風に日々の仕事を棚卸ししながら、心地よく聞いた。

12月*日
 二日目。
 最初のゲストは東野(あずの)カナコさん。カナコさんは長野でリビルディングセンタージャパン(リビセン)という会社をやっている。印象的だったのは「やっぱり会社は旗でしょ」という話。「目指す景色は同じかどうか。その会社が作りたいと思っている未来に住みたいかどうか。それがYESなら、いい会社なんじゃないですか」と。後半で話そうと思っていたことを全部先に言われた感がありつつも、深く共感した。
 かくして私の出番。そこで話したことがどうだったのかは参加者に聞くしかないが、ファシリテーターである西村さんとの対話は楽しかった。良い聞き手がいてこそだと思った。
 振り返ると、何よりも良かったのは、参加者としてグループワークを重ねて一日半。なんのラベルも貼られていない状態で、多分一期一会になるだろう相手に自己開示する場が久しぶりだったこともあり、その中でたくさん心が動いた。頭が動くことよりも、心が動くことの方が何倍も大事だ。

12月*日
 朝、アソブロックの経営会議にゲスト参加した。毎週行われる会議の月初めの会にだけ出てくれと、新経営陣から言われている。引継ぎ事項もあるので議事は、
 1:新経営陣からの質問に答える
 2:伝えたいことがあれば言う
の二本立て。今日は後半でこんなことを伝えた。

・次週の社員総会では新執行部としての旗(ビジョン)を見せなきゃいけない
・「人の成長支援プラットホーム」は旧体制が20年かけてたどり着いた場所
・踏襲も悪くないが1から自分たちで考えてダイナミックに変えることを勧めたい
・3人に次のステージに行ってほしくて重めの役割を任せている自覚はある
・大変だろが1年間全力で頑張って。成否に関わらず見える景色は変わるから

そりゃそうだろうとも思うが、まだ20年の歴史への遠慮が新経営陣には垣間見える。前例踏襲がラクな面もあることも否めない。でもそれでは成長が加速しない。1から考えるのは、本当に苦しいことだけど実に楽しいことなのだ。

12月*日
 カンマのメンバーたちと、児童養護施設・舞鶴学園でお菓子作りのワークショップを行った。舞鶴学園とは3年のお付き合いで、初年度はクリスマスディナーにご招待、2年目は各小舎(子供たちが少人数で共同生活する家のこと)にクリスマスケーキをお届けした。
 カンマはカフェとしての営業を始めた当初から「舞鶴に【カンマがあって良かった】を増やす」をミッションに掲げていて、当初はカフェとして自立するのに四苦八苦だったけれど、応援してくれる人も増えて色々と外向けの取り組みを増やしている。中でも舞鶴学園との取り組みは初期から行っているもので、顔なじみの子供たちも少しずつ増えてきた。
 日頃から料理コンテストを学園内で開催したりもしているので、みな手際が良く、こちらが思っていた以上のスピードで作業が進み、予定になかったゲーム大会なんかも開催して大盛り上がりだった。施設内はもちろん、施設の外にも、みんなのことを応援したいと願う人がたくさんいる、そんなことが少しでも思い出として彼・彼女らの心に残れば、これほど嬉しいことはない。

12月*日
 関わっている組織のひとつで、メンバー間のコミュニケーションが課題になっている。長い経過の中で固定化されたポジションが発言の幅を狭め、忖度しあう関係が常になっているという訴えがあった。こういった事態は容易には変わらないが、まずは解消に向けてアクションを取っている(取ろうとしている)という姿勢を見せることが大切だ。
 関係するメンバーに話を聞き、原因を究明するというよりはどこに変化を加えれば関係性が変わるだろうか?と考える。そうして手を打ってみたもののさほど効果的だったとは言えず、でもそんなもんだとも思うし、期待しすぎず変化を処し続けることが大切だと思う。
 日本の政治も同じかもしれないが、忖度しあうことで維持されている関係性にはそれなりに当事者間の合理性がある。例え関係する本人が「本意ではない」と口にしたところで、変化に向けた行動を起こすまでには及ばない利害があることが多い。それは会社の不正に気付き、いけないことだと分かっているが知らないことにしておくみたいなものにも近いのかもしれない。だからこの手の訴えは取り扱いが余計にやっかいだ。

12月*日
 長男が14歳になった。健康にこの年を迎えられて、親としてありがたいことこの上ない。最近は父子で話す機会も減ってきて、いわゆる思春期というやつかなと思うことも多かったが、先日「もしかしたら思春期というラベルを勝手に貼って私の方が気を遣っているだけではないか」と思うことがあった。
 さすがに小3娘のように「今日何があった」「誰さんと遊んだ」という報告はないから、話す内容や質を変えないと自然と会話は減る。つまりこれまでの延長の会話が減るだけで、新しい会話が生まれる余地があると捉えるべきなのだと思う。ということで、心機一転、新しいトピックスを種に色々としゃべりかけようと、誰に言うこともなく思う父であった。

12月*日
 9月に社長を退任したアソブロックの社員総会があった。前社長として前期を振り返ったが、新しい期の方針発表は当然新経営陣が行った。話中に「先代の思いを引き継ぐ部分は引き継ぎながら」なんて発言も出てきて、「おれは先代かぁ」などと思った。
 社長を辞めて2カ月。かなり自分の中でも辞めた感が出てきた。正直、直後は何の変化もなかったのだが、徐々に事実が身体に沁みてきた。近しい人を亡くした際の「まだ信じられません」状態から少しずつ事実を受け止めていくプロセスに似ている気もする。当たり前だったことが当たり前じゃなくなるというのは、当事者性が強いほどすぐには適応できないのだろう。伴って「気にはなるが気にしないようにしよう」という律し方もできるようになってきた。信じて待つ、信じて任せる、たぶん子育てと同じで、それを現役感があるうちに体験できるというのも財産なのだと思う。

12月*日
 クリスマスイブを東京オフィスへの年内最終出社日として、週明けから家族で恒例の初滑りに丸沼高原に行った。今年は雪が多くお客が分散し、ゲレンデは混み合うこともなく快適だった。ゲレンデで長年の友人である幼稚園の園長とその娘さんのTちゃんに合流し、6人でケラケラ笑い合いながら滑った。
 我が家の長男と長女はスキーと同じくらいレストハウス内にあるUFOキャッチャーが楽しみで、今年も小遣いをはたいて飽くなき挑戦を続けていた。だいたいこんなところにあるUFOキャッチャーなんて取れるわけないよ!といつも思うのだけれど、何かしらはゲットしてくる。今年も小さなぬいぐるみをひとつ。高価なぬいぐるみだこと。

12月*日
 大みそかは毎年妻の実家で過ごす。甥っ子と遊ぶことを待ちきれず子どもたちは先に電車で向かい、妻と二人でケーキや手巻き寿司の食材を買って向かった。一時期調子が悪かった義理の母の体調も良く、妻の妹家族もともに楽しく過ごした(夜勤で義弟は不在なのが残念)。
 思えば今年は大きな変化があった。20年魂を込めて経営してきたアソブロックの社長を退いたことだ。もちろんほかの会社にも溢れんばかりの愛情を注いでいるが、ある種一番変な経営方針を貫いてきた分、考えさせられることも多かった。その荷物をおろして、リスタートになる2022年。振り返ればここがターニングポイントだったと後世に思うような年にしたい。ということで、早速三つを誓いに立てた。

・これから10年続けることを始める1年目にする
・団遊ヨノナカ編集舎としての仕事量を増やす
・家族にも仲間にも会社にも変化を作り続ける自分であり続ける