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小石の夢

 おれは小石。昔は神社の上で、大きな木の根に抱え込まれた大きな岩の一部分だった。
 ある日のこと、ポロリとはがれ落ちて神社の端っこにいたけれど、大水の出た日に田んぼに流され、水の中で見る水面に心奪われていると、お百姓さんの手で土手に放られた。
 土手の小石はなんだか田んぼを守っているようで、いるかいがあるものだと思っていたら、子供のポケットに入れられ小学校の校庭に下ろされた。
 掃かれて隅に寄せられ、宙に投げられ、子供の膝とゴッツンコ。
運動場中を転がり回って、目まぐるしい毎日を送っていたが、下校の供にと蹴り出され、途中砂利道に着地し、別の石が石違いされ連れて行かれた。
 大勢の小石仲間とワイワイやるのは、大きな石の中に居るのとはまた違った面白さがあるものだった。
押し合いへし合い、互いに音を鳴らし、角が取れたり尖ったり。
 そんな日々は、何かの蹄に挟まれ終わりを告げた。
しばらく挟まれた先の、どこかの家の軒先に転がされ、今はこうして雲を眺めている。
 雲というやつはじっとしていることが出来ないらしく、年がら年中かたちを変えている。
 小石仲間の話では、雲は海というところに行き、石の中でもそこにたどり着くものがいるらしい。
いつか海で、静かにただこうしていることの楽しさを教えてやりたいものだ。
雲の方でも変わっていく楽しさを教えたがるかもしれないが、おれは話を聞いてやることにやぶさかではない。
 
 


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