契約交渉への積極的関与について

12/15  全体的に修正しました。論旨は変更しておりません。
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この記事は、法務系Advent Calendar 2019 の8日目(12/8)の記事です。
Nakagawa さんからバトンいただきました。


とても興味深い記事です。以前から法務職以外の職種にも興味はあるものの飛び出す勇気はなく。。。


ただ、個人的には「ポータブルスキル」って「どこででも通用するスキル」ではなくて「どこででも必要とされるスキル」という気がしており、結局それがあって初めてスタート地点に立てるようになるんだと考えています。特定の分野、職種でゴリゴリやっていこうとするのなら、どこへでも持ち運べる工具セットよりも、その場でしか使えないけど破壊力抜群の重機の方が良いんだろうなと。


1.契約交渉におけるもどかしさ
さて、タイトルのとおり今回は「法務担当者が契約交渉に積極的に関与すること」について考えたいと思います。
私自身が最初にこれを考えるようになったのは、下記のツイートをした頃から。

現職では、トップ同士の交渉から事業担当者同士の交渉まで、それほど数は多くはないものの契約交渉への同席したことが数回ありました。また、交渉への同席ではないものの、先方へのメールでの回答、先方法務担当者との電話での協議にも対応したことがあります。

そもそも私自身が法務での経験も数年、まだそのような場への同席・対応をした経験もあまりないことから、どの程度まで関与して良いのか分からず、例えば、契約交渉の協議ではその場では様子を見て交渉終了後の社内ミーティングで交渉時に出てきた法的な問題にコメントする、というような形で関与していました。


非常にもどかしい。。。


ある程度の法的な問題に関しては交渉担当者同士に知見があれば,法的な結論、論拠を前提に交渉を進めていくことができます。しかし、交渉担当者同士の知見を超えた複雑(そうに思えるよう)な法的な問題に関しては「持ち帰って確認する」ということが少なくないと思います。

上記のツイートをした頃に私が契約交渉に入った案件は、私にとって経験がほとんどないようなものだったこと、それに加えて案件の重要性や専門性から、ポイントとなる部分では顧問の弁護士に相談をした上で進めた方が良いと判断していたので交渉の場では私はほとんど発言しませんでした。


結果、非常にもどかしい。。。


日常の業務でも事業部担当者から「取引の座組としてどのような契約形態にすればよいのか」という点が取引先との交渉時に出てきたので意見を聞きたい、と相談に来ることがあります。聞いてみるとそれほど難しい問題ではない。にもかかわらず持ち帰りとなってしまい、案件の進捗に多少なりとも影響が生じていました。

このような状況の中で「契約交渉に法務担当者が一緒に入ったり、協議において積極的に関与することで、少なくとも些細な問題で持ち帰りとなることもなく、しかも比較的早めに契約書の内容の交通整理ができるのではないか」ということを考えるようになりました。

ちょうどこのようなことを考えていたところ、先日、同じようなことを考えてらっしゃった法務の方のおかげで複数の法務の方のご意見に触れる機会がありました。

そこで、今回は自分自身の考えに加えて、そこで触れたご意見も参考にしながら、非常にあっさりとした関西風おだし的な検討をしたいと思います。



2.契約交渉への関与におけるメリット・デメリット
法務担当者が契約交に積極的に関与する、という場合様々なメリット・デメリットが考えられます。下記では自分自身が考えたこと、上記の複数の法務の方のご意見を参考にまとめてみました。

◆メリット
・案件のスピードアップ
 通常であれば事業部担当者が持ち帰って法務に確認する必要がある場合で
 も、その協議の場に法務担当者がいることでわざわざ持ち帰る必要がなく
 なるので交渉も捗ります。
 また、通常の協議においては自社事業部担当者→自社法務担当者→自社事
 業部担当者→先方事業部担当者→先方法務担当者→先方事業部担当者→自
 社事業部担当者→・・・のようなフローでやり取りを行うためそのフロー
 の途中で発生しやすい説明不足/理解不足による誤りや勘違い、コミュニケ
 ーション自体に必要となる時間が回避でき、結果として案件の進行をスピ
 ードアップできます。

・ちゃぶ台返し防止
 法務で仕事をしていると、事業部担当者が持ってきた案件が実は法務的な
 観点からハードルが高く、諦めていただくような場合も稀に発生します。
 もちろんケースによって違うとは思いますが、法務担当者が契約交渉に
 積極的に関与することで上流で内容を把握でき、整理をすることができる
 ことで案件がほぼ着地しそうな段階で発生する「ちゃぶ台返し」を回避す
 ることができます。

・バージョンアップ
 これは法務担当者のメリットですが、契約交渉の場に積極的に関与するた
 めには、自社のビジネスに対する理解、ビジネス一般に必要となる知識の
 習得、リアルタイムで法的な問題を解決するために必要となる問題発見・
 解決能力、法的な知識等の習得が必要となります。その結果として、法務
 担当者が積極的に関与することで、そうではない法務担当者と比較して多
 くの経験と知識を得られることができそうです。

◆デメリット
・事業部からの丸投げ
 契約交渉に積極的に関与し、うまく立ち回れば立ち回るほど契約交渉にお
 ける役割が広がる可能性があります。その結果として、事業部側で担うは
 ずのビジネス面での交渉含めて法務担当者に丸投げされる可能性がありま
 す。

・業務負担の増大
 一般的な事業会社においては、リソースとしては事業部門>法務部門とい
 うことが多いと思います。その結果、多数の事業担当者が抱える案件の交
 渉に少数の法務担当者がアサインされることとなり個々の法務担当者の業
 務負担が大きくなる可能性があります。

・責任の発d生
 契約交渉に積極的に関与する場合、交渉への影響度を増すことになりま
 す。契約交渉の結果、法的な条件について交渉がまとまらずブレイクする
 ことになった場合、その責任を法務担当者において負うべき(なすりつ 
 け)ということになる可能性があります。


3.法務担当者は契約交渉への積極的関与をすべき
ちょっと酔っ払った頭でも色々とこのようなメリットデメリットが考えられます。ただ、冒頭で述べた個人的な経験を前提とした場合、多少のデメリットがあったとしても契約交渉に法務担当者が積極的に関与すべきではないかと考えています。


デメリットとして挙げた「事業部からの丸投げ」について、個人的には事業部との信頼関係やコミュニケーションによって十分回避解決ができるんじゃないかと考えています。例えば契約交渉に入ると決まった段階で交渉事項の役割分担を明確化することが避けることができそうです。

また、「責任の発生」についてはそもそも法務部門って責任を負わないんでしたっけ?という疑問があります。法務相談についての回答に責任を負わないということはないはずで、「法務担当者が契約交渉に関与する」という組織的な意思決定がなされ業務の一部ということになれば、当然法務担当者としてはその責任を負うことになります。もちろん、上記「丸投げ」の結果として、本来責任を負うべきでない部分にまで責任を負う可能性がありますが、そもそもの「丸投げ」の回避、事前の責任範囲の明確化を行うことで解決ができるのではないかと考えています(この問題は契約交渉だけではないはず)。

一方で、「業務負担の増大」自体は新たな業務を担当することになれば当然発生するもので、今回のように「契約交渉に積極的に関与する」となった場合も業務負担が増えることは容易に想定でき、安直に全件の契約交渉をフルで関与することとなるとすぐに業務はパンクすることになります。
そこで、契約交渉への関与のタイミング・範囲を事業部とすり合わせ、例えば経済条件等のビジネス面での交渉は事業部担当者が行う、またはこれらの条件交渉を終了した段階で法務的な問題に絞って対応する等によってコントロールすることが考えられます。これにより「丸投げ」や「責任の発生」についても対応ができることになります。


4.まとめ
既に日付けが変わって1時間以上が経過しています。ヤヴァイ。
ずっとあったモヤモヤをとりあえず吐き出すことだけを目的に書きました。相変わらず全体的にフワフワした内容で恐縮です。

今回の議論は法務の機能的な部分を事業部サイドに拡張することを前提にしています。このような議論においては組織論的な反論がされることが想定されます(特に上記「責任の発生」と同じ文脈での反論が考えられます。)。
しかし、そもそも法務部門は機能的な組織であり、その機能を効果的にワークさせて事業目的の達成に貢献するためのツールとして組織論が存在しているべきであって、組織のために機能が縮小されてしまうことは本末転倒ではないかと考えています。

事業部側としては法務部門の関与についてどのように考えられているのでしょうか(法務が入るとややこしくなるから入らないでほしいって言われる可能性もありますネ・・・)。是非事業部側に転身された元法務担当者の方のご意見もお伺いしてみたいです。


個人的には今後積極的に関与していこうと思います。結果として、色々と問題が発生してやっぱり交渉に入らないほうが良い!ということになるかもしれません。また追ってご報告できればと思います。


さて、お次はysaksmzさん、お願いします!



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