雑談 好き嫌い


私には愛妻や恋人に先立たれた人を題材にしたものを好む傾向がある。
好きなバンドの歌詞もそんなのが多い、大抵楽しそうに後追い自殺する。

原民喜という作家が好きだ。
一般的には人類はじめての原爆体験をいち早く書いた人として有名なのだろうが正直それは重要じゃない。
マイ・ベスト・先立たれ小説を書いた人として好き。
病床にある妻に励まされながら小説を書き、そんな自分を頼りないと言いながら、自分の神経の細さ、優しくされる自分が嫌いじゃないというのがひしひし伝わってくる。
自分が自分に愛想を尽かさないのは度を越した妻の優しさがあるからだ、というもう雛の刷りこみみたいなピュアな依存っぷりが潔い。


同じ先立たれでも他殺・事故は好きじゃない。
「MOZU」というドラマがあり、リアルタイム時は母と見ていた。精神的マッチョは嫌いだが、エンタメは肉体ステータスが極端であればある程面白いと思ってる。なのでささみのように脂っけのないバイオレンスさは割と面白く見ていた。

旦那さんと住み始めて、経緯は忘れたが観よう、となって観た。
無理だった。このドラマでは主人公の妻がテロで亡くなるところからはじまる。突然、妻が亡くなるところから始まり、何度もそれをリフレインし、何回死にかけても真実を追い求めるというハードボイルドさが自分には受け入れられなくなっていた。
何がどう、とは上手く言えないし結局全部観たし別にずっと顔をしかめてたわけでもない。

両親がたまたまテレビでやっていた「キック・アス」を見て似たような反応をしていたのを思い出す。私も親になったら、元気にキレ散らかしながら人を殺しまくる少女を見て顔をしかめるかもしれない。

人間、いろいろ忘れていくけど、経験の種類は増えていく。フィクション上の苦しみを想像する材料が自分の中に増えていく。苦手な食べ物は減るけど苦手な作品は増えていくのかもしれない。今のうちしか楽しめない物がたくさんあるのかもしれない、そのうち思いもよらぬところで無理になるかもしれない。

ちなみに最近は同居人の手料理のおかげで切干大根への苦手意識が軽減しました。

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