書くことが3倍どころか4倍になったホロスターズはいいぞ

奇跡は継続している。

本稿はホロライブプロダクションの男性Vtuberグループ「ホロスターズ」(通称ホロスタ)について、そのJP・ENに所属する全てのユニット・グループの紹介をすることを通して、2022年から2023年にかけて起きた規模の拡大を振り返るとともに、その本質において彼らは変わっていないこと、そして今とても面白い集団になっているということを述べたい。

(これまでのホロスタ関連記事より倍以上長くなってしまったので(7200字)、のんびり読んでいただければ幸いです。)


1、ホロスターズ = HOLOSTARS + UPROAR!! + TEMPUS + ARMIS

2022年から2023年にかけてホロスタは大きくなった。どのくらい大きくなったかというと人数でいうと3倍弱、ユニット・グループ数でいうと4倍にもなった。公式サイトの図が全てを表しているので引用する。

ホロスターズ公式ウェブサイト「ホロスターズとは」 (https://holostars.hololivepro.com/about)より

現在、ホロスターズには以下の4ユニット・グループが所属している。

  • HOLOSTARS (ホロスターズ) / ホロスターズJP

  • UPROAR!! (アップロー!!) / ホロスターズJP

  • TEMPUS (テンパス) / ホロスターズEN

  • ARMIS (アーミス) / ホロスターズEN

え?アップロー!!はホロスターズに含まれないの?4期生じゃないの?と思う方もいるかもしれないのだが上掲の画像は公式のものである。他にも、例えば以下のイベントへの出展名義が「HOLOSTARS & UPROAR!!」となっていたりする。

そもそも2022年の時点でHOLOSTARSの自己紹介ソングで「他にはない9人組!」と言い切ってしまっていたりもする。

(ホロライブプロダクション傘下のグループ構造がどうしても気になる方は以下の拙文をご参照いただきたい。実は本稿の準備のために書きました)

念の為書いておくと、ユニット・グループ分けについて公式からはっきりと明言されきった訳ではない。あくまで本稿の目的は「ホロスターズはこれら4つのユニット・グループに分けられる」という前提のもとにそれぞれの特徴・個性を紹介してみることにある。

2、HOLOSTARS = FLAGSHIP (旗艦)

さて始めよう。1~3期生からなるHOLOSTARS、いわゆる狭義のホロスタである。英語圏での非公式表記だとOG9 (Original 9)。ホロスタ(部門)の中のホロスタ(JP)の中のホロスタ。

このグループは一言でいうと「男性Vtuberグループの基準・ショーケース」である。現在の環境・技術で男性Vtuberができることのほぼ全てを彼らは網羅しているし、その水準は極めて高い。

例えば以下の動画のサムネイルのようにVtuberのeスポーツイベントを沸かせ、ハイライトとして地上波でも紹介されたのはホロスターズのメンバーの活躍するシーンだった。

このメンバーは他の大会でもプロが参加するチーム相手にゲーム内リーダーとして数多く実績残してきている

またトークイベントをすれば男女問わず多くのファンが駆けつける。

歌系Vtuberの中でも実力を認められ人脈の中心にいる。

つまり「FPS・eスポーツ」「トーク・バラエティ」「歌・音楽」、ほかにも「ダンス」「声の演技」など特定の分野に優れた男性Vtuberを列挙すると、その全てにしばしばHOLOSTARSのメンバーの名前が入ってくるという状況にある。

もちろん男性Vtuberの業界自体が成長したのもあり、特に歌やFPSなどについては最近ではより特化した企業Vtuberがデビューしてきていることは否めない。しかしそれによって彼らが存在感を失ったかというと、上に紹介したようにそうではない。

これは彼らの強みがもはや特化だけにとどまらないことを意味しているように思う。HOLOSTARSの面白いところはその全員がだいたいなんでもできることにある。例えば、歌に定評にあるメンバーが例外なくFPSも強かったり、トーク力で知られたメンバーの普段の喋り声と歌声のギャップが人気だったりする。

日々の配信に加えVtuber界隈内外での大会や3Dライブなどこれまでの活動を通した彼らの努力の結果、ほぼ全員が「歌えて踊れて器用で喋れて演技ができる」ようになっている。このような、いわゆる「アイドルグループ・ボーイズグループ」的な要素を満たした存在はより少人数のユニットならともかく、HOLOSTARSのような規模では他にはなく、今のところ後に続く気配も感じない。

上掲した自己紹介ソングでも「他にはいない9人組」「お茶の間アイドル」を自称しているが、この形容におおよそ誤りはないと思う。ここでは詳細は述べないが、少なくとも歌唱力だけとっても他の追随を許さない水準にある。

そして彼らのアイドルとしての集大成はやはりライブにある。下記動画の冒頭の全体曲だけでも彼らの歌唱力が分かり、その後のゆるいオープニングトークで「お茶の間」感も理解していただけるように思う。

このような彼らのホロスターズ全体での立ち位置を表現するのに、3周年に東京・池袋で開催されたファンミーティングのタイトルに使われたFLAGSHIP (旗艦)の文言は、ぴったりなものだった。音楽ライブなど「ホロスターズ」を象徴するような高クオリティのコンテンツはHOLOSTARSから発信されることが多い。

彼らなしにはホロスターズはないし、彼ら以上にホロスターズである存在もいないのである。今後も彼らがどのような活動をしていくのかは常に注目に値するし、とりわけ1st、2ndACTに続く3rdACTには大いに期待していいと思う。

3、UPROAR!! = Vtuber界隈の「弟キャラ・新人グループ」

2021年12月のHOLOSTARS 1stACTの終わりに告知された新メンバーの発表は非常に衝撃的な出来事だった。

https://twitter.com/holostarstv/status/1475073914476900355より

新たに加入するのはHOLOSTARSの4期生なのか新グループなのか、もしくはENなのか。その後2022年の3月にホロスタJPの新ユニットとしてUPROAR!!がデビューしたあとも、彼らがいったいどのような存在であるのかについては興味の対象であり続けた。

その後、年末の3Dお披露目、そして1周年を迎えての3Dライブというように活動を重ねる中で、着実にUPROAR!!独自のコンセプトや魅力というものが具体化されてきたように思う。

ものすごくわかりやすいところから始めると、まずビジュアルの面から見て衣装が違う。HOLOSTARSのこれまでのステージ衣装がいわゆる「王子様系」なのに対してUPROAR!!のそれはよりポップでストリートよりなものになっている。

また活動の面からいうと、以下のFPSゲームの大会においてUPROAR!!の4人が初心者チームとして微笑ましくわちゃわちゃしつつも奇跡的に勝利を収めたシーンは非常に印象的だった。(下記配信アーカイブの31:40~)

これはHOLOSTARSのメンバーがこれまで見せてきたような、大規模な大会で活躍する、プロ混じりの大会で優勝する、というような姿とはまた違ったものであった。UPROAR!!はその成長を視聴者だけでなくVtuberの界隈からも見守られ愛されるような魅力を持ったグループになりつつあると筆者は感じている。

また、歌などのパフォーマンスの面でもこれまでにない様々な試みが見られた。ラップを得意とするメンバーは、比較的最近のラップ楽曲にフォーカスした3Dライブを披露し、音域の広さを特徴とするメンバーはそれを生かし内外の様々なVtuberとの大規模な歌コラボ企画を成功させた。

余談にはなるが、ホロライブプロダクション自体がそうであり、そしてホロスターズのデビュー頻度が低いのもあって、たぶんUPROAR!!の彼らは少なくとももうしばらくはホロスタJPの新人さんであり続けると思われる。

これは同時期にデビューした他企業のVtuberが早々に「先輩」になっているのとは対照的である。毎日続々と新人がデビューするVtuberの界隈でここまで新人らしさ・フレッシュさを保っている存在は非常に稀なことであるし、それが上記した愛される一因にもなっているように感じる。

今後も彼らがどのような独自性を見出していくかには大きく期待できるし、一方でホロスタJPから新たなユニット・グループがデビューしUPROAR!!がいよいよ「先輩」になった時の姿も筆者は楽しみにしている。

4、TEMPUS = ホロスタのENかつホロライブENのホロスタ版、そして新たな「アイドル」への挑戦

さて、ここからはENである。TEMPUSを短く表すと「ホロスタのENかつホロライブENのホロスタ版」となる。

TEMPUSはその構成にかなりHOLOSTARSの影響を感じられる。まず歌が上手い。(洋楽を歌った配信はアーカイブが残らないので割愛)

そして有名FPSゲームOverwatchのプロチームへの勧誘を受けたことがあるメンバーがいるなどゲームも上手い。(下記配信アーカイブの10:39-)

トークも上手い。Tシャツの告知をするためだけに通話や仕掛けを混ぜつつも基本雑談で6時間弱引っ張れる。別企業のVtuberからも絶賛される。

また最近ではヴィジュアルノベルも発売され、そのトレーラーからも分かるように声の演技にも長けたメンバーが多い。

そして、日本文化や日本語への理解が極めて深いメンバーがいるのはHololive English Mythとの共通点である。ENの配信なんて言葉がわからないと思う諸兄姉は騙されたと思って以下のデビュー配信を見てほしい。突然話している内容が完璧に理解できる瞬間が訪れるはずだ。

(余談ではあるが、ホロスターズENのメンバーは全員極めて聞き取りやすく標準的な英語を話すので、英語学習者に強くおすすめしたい)

このメンバーの語学能力は、Vtuberを集めて行われる大規模なFPS大会において史上初の「海外を活動拠点とするVtuberのみ」で構成されたチームの出場を可能とした。さらにこのことはVtuber界隈の2大運営の混成チームが構成されたこと、コーチに北米の競技シーンの選手が就任したことなど、様々な面で大きな意義を持つものとなった。

そもそも、このような企業間のコラボの実現自体が、TEMPUSのメンバーがこれまでに成し遂げたことの一つとして挙げることもできるかもしれない。例えば以下のコラボの告知は、いわゆるENの視聴者たちに大きな驚きと快哉を持って受け止められた。

運営間の細かい事情はわからないが、他の同様のコラボの時期やそれぞれの発言など状況を鑑みると、このメンバーの寄与が推察される状況にはある。(そこに至るまでの経緯について本人からも控えめには語っている。 以下配信アーカイブの34:48-)

ちょうど良く該当箇所を抜粋する形で文字起こししているものもあったので紹介しておく。その部分だけでもいいので是非読んでみていただきたい。EN系の企業Vtuberを取り巻く環境がよく分かる。

そしてホロスターズといえばアイドルである。デビュー当時はTEMPUSの彼らがアイドルを自称するのか気になっていたのだが、割と初期の段階から"seiso idol"と言っていて妙に安心した。

ただこれはアイドルに係る特定の教条に贄す対象を見つけたという意味ではなく、ずっとHOLOSTARSが向き合ってきた「男性アイドルVtuber」という概念に彼らも立ち向かっていくのだ、と思ったということである。

彼らは物事を良く考えている。ときにアイドルについてアジアと欧米の違いを挙げ自らがアイドルであることに関する懐疑を示しつつ、その考えを説明していたりする (下記配信アーカイブの1:09:48-)。一方で謎枠と言っていい歌枠コラボのサムネにアイドルと銘打ったりもするのだが。

Vtuberという文化の性質上、日本のサブカルチャーの影響を受けることは避けられない。上掲したビジュアルノベルなどもその延長線上にある。しかし面白いことに、TEMPUSの彼らの歌枠ではOne DirectionやBackstreet Boysなどのいわゆる欧米のアイドルグループの楽曲が歌われることもある。

そもそも「男性アイドルVtuber」という概念自体が、HOLOSTARSが現在進行形で作り上げているものである。HOLOSTARSが到達したのは2次元的な要素と、3次元的な日本のお茶の間アイドルの要素を配信者のフォーマットの上に組み合わせたような存在であった。

ではTEMPUSにおいてはどうなのだろうか?One DirectionやBackstreet Boysのようなアイドルの概念はバーチャル化するのだろうか?考えるだけでも本当に興味深い。彼らは、彼らなりのアイドルをしようとしている

彼らの3Dのお披露目や全体でのライブも本当に楽しみである。彼らが考える「男性アイドルVtuber」はどのようなステージを作り上げるのだろうか。彼らは少しずつそこに向かって進んでいる。自らを取り巻く環境を少しずつ変えながら、現状に安寧を求めるのではなく確実に歩みを続けている。

最後に、最近発表されたLilyPichu氏作詞作曲のオリジナル曲を紹介しておく。同時期に発表されたDEAD WORLDとFLEXも是非聞いてほしい。

5、ARMIS = 確かなスキルを持つメンバーが集まった「より賑やかな」グループ

「書くことが3倍になった」という題で本稿の構想を練り始めたところ、新たなユニット・グループのデビューが発表され、書くことが4倍になってしまった。とはいえまだ色々と考えるには材料が足りないので簡単に触れることにする。

TEMPUSとは別組織としてホロスターズENからデビューしたARMIS。これまでの配信などからわかることは、彼らも確かにホロスターズである。声が良く、日本語の発音も上手い。しかし内容とテンションがおかしい。

そしてホロスターズはやはり歌が上手い。

全体的に声の出し方などが完成されていて、声の演技を得意とするメンバーも多い。ただし集まるとほんとに賑やかで、話している内容もいい意味でも悪い意味でもやんちゃである。(下記配信アーカイブの1:27:48あたりからとくにすごい)

ユニット・グループのオリジナル曲も一曲目からラップを主体にした構成となっており、TEMPUSとはコンセプトの違いが感じられる。

これからARMISがどうなっていくのか、TEMPUSのように後発の追加メンバーが発表されるのか、今後ARMISから発信されるコンテンツがどのようなものになるか興味が尽きない。

6、最後に = 彼らは全員でホロスターズである

想像以上に長くなってしまった。ここまで読んで頂いた諸兄姉に感謝を申し上げるとともに、ホロスターズがここまで大きくなったのだということを共感していただけたらうれしい。

そして最後になるが、1番初めに着想が浮かんだのはこの部分である。具体的には2022年から人数が急激に増えたことでホロスターズに何が起きたのか?グループの雰囲気に変化はあったか?ということについて。

結論からいうと変わらなかった。もちろんより様々な個性を持ったメンバーが加入することでそれまでは見られなかったような出来事もあった。しかしこれまでHOLOSTARSが作り上げてきた仲の良さ、雰囲気の良さはUPROAR!!、TEMPUSの加入後も続いているし、おそらくARMISが加入した今後にとっても変わらないのだろう。

特にENの加入については、どうしてもコミュニケーションのことが気に掛かってしまっていたが全くの杞憂だった。最初に明言した本稿の目的を覆すようで恐縮ではあるが、やはり彼らはその全員がホロスターズであり全員でホロスターズである

語学の面ではお互いに不完全なところが多くても、お互いに敬意を払い意志を伝えまた汲み取る努力をすることで、協力して何かに取り組んだり逆に対戦をしてみたり、冗談を言ったり敬愛を伝え合うことができる、ということを彼らは視聴者にずっと見せてくれている。これは奇跡のようなコンテンツだと筆者は信じてやまない

もちろん日英バイリンガルもいるし、読み書きを基本に語学ができるメンバーも多いのだが、いつもそのメンバーが窓口になる、というようなことはなくほぼ全員が全員と関わっている。そこにはJP・ENをひとまとまりにする全体での結束が確かに感じられる。

さすがにJP・EN合同での大型コラボの頻度は低くなってしまうが、例えば下記配信アーカイブの1つ目の3:59:00あたりからや2つ目の1:36:00あたりからなどは、ともすれば荒んだ雰囲気になりやすい対戦型の企画で、お互いにきちんとユーモアを伝え合うことができている非常に良い場面だったので見ていただきたい。

さまざまな個性・特技を持ったメンバーがホロスターズに増えていくことで、幅広い企画・表現がなされるようになり、また協力して取り組むことで実現できることの幅も大きく広がった。

それが分かりやすく表れているのはやはり歌だと思う。以下の歌みたにはBlessing、Paintërの頃のHOLOSTARSのような荒削りな表情がたくさん感じられ、ある意味でとてもホロスターズらしいカバーになっている。今後ARMIS、そしてさらにその次に繋がり広がっていくホロスターズの未来に大いに期待している、というところで本稿はおしまい。

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