見出し画像

男気チャレンジ ~ 超高級ホテルに泊まって分かったセレブと庶民の違い、私たちが支払っているのはサービスへの対価ではない

男気チャレンジとは「心細さを楽しむ」遊びのことです。知らない定食屋に入る、通りすがりの人に道を聞く、髪を明るく染めてみる。他人にとっては当たり前かもしれないけれど、自分にとっては普段やろうともおもってもいなかったようなちょっとしたチャレンジを、遊びとして楽しみます。

さて今回、平凡な社会人である私は、平凡な日常生活では決して出会うことのないであろう超高級ホテルに1泊してみることにしました。コロナで外出自粛が叫ばれ、県をまたぐ移動もなく旅行するにはどうしたらいいかと考え、会社のすぐそばにあるインターコンチネンタルホテルに泊まりました。しかも、クラブインターコンチネンタルのコーナースイートルームです。めっちゃ広いです。

画像1

写真のセンスがないので今ひとつ分からないですが、東京タワーが正面に見える32階の角部屋でした。エレベータに乗るときは宿泊カードをかざさないと階指定すらできない特別なフロアで、クラブインターコンチネンタルラウンジという空港にあるゴールドカードラウンジみたいな特別なラウンジにも入れる、VIP待遇な感じのお部屋でした。やばい。

ここで1泊して、いろいろと気付きがあったので、簡単にまとめます。

過剰なサービスは不親切

超高級ホテルは、基本的にはなんでも聞いてください、というスタンス。そして、お金の話をするのは下品という概念があるっぽくて、何が無料サービスで何が有料サービスなのか分かりにくい。聞けば教えてくれるけど、そんなこと聞く奴はたかが知れる、という選民思想に基づくサービスを提供しているので、庶民には非常に不親切。

画像2

部屋の引き出しには各種リキュールやコーヒー、ティーバッグなどいろいろなものが備え付けられていました。このうち、無料なのはティーバッグだけでした。あとペットボトルの水も無料。まぁ直感で分かる気もするけど、分からない。

セレブはそんなこと気にしない。飲みたいものを飲む。いらないものは手をつけない。それだけのこと。庶民は、無料のサービスを最大限活用しよう、とか考えるから卑しいんだ。

選ぶのではなく望む

超高級ホテルのサービスは過剰なので、どんなお客様の我がままにも答えてくれます。朝食ビュッフェなのに、ウェイトレスを呼びつけて「ごはんと味噌汁」と告げるセレブ。かしこまりました、といってごはんと味噌汁を持ってくるウェイトレス。庶民である私には信じがたい光景です。それくらい自分で持ってこい。

クラブラウンジに行っても、お飲み物はいかがいたしましょうか、とだけ聞かれる。セレブは、そこで飲みたいものを自由に答える。シャンパンでも、ホットコーヒーでも、欲しいものをオーダーする。そういう世界だ。しかし私はそれができない。何があるんでしょうか。メニューはないでしょうか。これがセレブと庶民の差だ。私たち庶民は、そこにあるメニューから選ぶということに慣れ過ぎていて、自ら欲しいものを告げるような脳の使い方ができない。

足るを知る

クラブラウンジでは、飲み物が無料で飲める。コーヒーも紅茶も、りんごジュースもパイナップルジュースも、コカ・コーラもジンジャエールも、なんでも無料で好きなだけ飲める。プールに行ってもフリードリンクサービス。朝食ビュッフェでも当然のように多種多様な飲み物が並んでいる。

私はグァバジュースが大好きだし、パイナップルやマンゴーなど普段飲めないジュースも飲み放題ということで調子に乗って飲みまくる。フルーツジュース天国である。そんな環境で丸一日過ごすと、どうなるだろうか? もう体内が糖分であふれかえって、フルーツいらない、という状態になる。過剰摂取である。

それでも、庶民なのでチェックアウト直前に、最後にまたクラブラウンジに行く。お飲み物はいかがいたしましょうか。私は、心の底から、水をください、と告げていた。もう、糖分は、いらない。

静かで優雅なクラブラウンジで、普段は絶対食べないような甘さの全然ない苦いチョコレートを食べつつ、水を飲む。そして体内の糖分を中和していく。何をやっているんだろう、という疑問が湧く。

庶民は、余分なものがあれば、蓄えようとするんだ。無料で提供されていれば可能な限り享受しようとする。もったいない精神。常に飢えの恐れを感じながら、蓄えを続ける。これが庶民の脳だ。しかしセレブはそうではない。セレブは常にモノが余っているので蓄える必要がない。だから無理にフリードリンクでがっつく必要もないし、ただ必要なときに必要な分の飲み物を注文すればいい。まさに「足るを知る」だ、と気付いた。

私は、もう十分に蓄えを手に入れた後でも、庶民の根性が抜けていないので、可能な限り蓄えようと頑張っている。自分にとって十分であるということを分かっていない、それこそが庶民の庶民たるゆえんなのだ。

サービスの値段

さて、超高級ホテルで働くホテルマンとは、どのような人間なのか。もちろん超一流のホテルマンは、ものすごい接客をしてくれるかもしれない。でも、大半のホテルマンは普通の人間だ。できる接客には限りがある。

今回はインターコンチネンタルホテルということで、客も従業員も外国の人が多かった。もちろん外国スタッフだって全員日本語を喋れるが、接客の中身を見ると、日本人に見劣りする面がある。少なくとも、日本人の好む機微を察する能力は、日本人以下だ。

結果として、ホテルマンの対応は、その辺のホテルの方がマシではないかと感じることもある。たぶん、日本人の接客能力はめちゃくちゃ高いので、ロイヤルホストくらいのファミレス接客で既に接客レベルはMAX近くまで飽和している。そこから更に上はコストばかりかかって差が見えにくい効率の悪い領域なので、あまり意味がない。

超高級ホテルだからって段違いの接客を期待してはいけないのだ。相手はあくまで普通の人間だ。こちらの意図が通じないこともあるし、間違いを犯すこともある。それは仕方ない。そこを勘違いして、接客レベルが低いとじゃらんの☆評価を低くつける客は、そもそもこのホテルの狙っている客層ではないのだ。

じゃあ、こんなにも高いお金を払って、いったい何の意味があるのか? 価格に見合うサービスを提供してくれるのではないのか? そう、ホテルに払っているお金はサービスの対価ではなく、客層の選別費用だ。

ホテルでも、レストランでも、喫茶店でも、高級店には、それに見合った高級な客しか来ない。安い店には安い客が来る。店の雰囲気は、店が作る部分もあるが、同時に客が作る部分もかなり大きい。良い客が来れば、それだけで店の雰囲気は良くなる。高いお金を払って高級ホテルに泊まれば、それだけの価値を認められる客たちと一泊を過ごすことができる。それこそが、最大の価値なのだ。

背伸びしない、ありのままで

超高級ホテルには、利用料1日1万円のプールがある。信じられない値段設定である。ちなみに月曜・火曜はレディースデーで女性は5000円だった。でも、宿泊客はなんと2500円で利用可能! なんだよ有料かよ! いえいえクラブコンチネンタルにご宿泊のお客様は無料でございます。

画像3

ここまでの価格設定をかいくぐって遊びに来るお客さんは、当然セレブである。お美しい水着をお召しになって、インスタ映えしそうな写真をたくさん撮っていらっしゃる方がいたり、外国からいらっしゃったご家族が、楽しそうに小さな子どもを泳がせていたり、どこを見ても様になる。そんな中、市民プールと間違えてやってきた、イオンの水着に身を包んだ田舎者の私。

どの家庭にも、いろんな人生がある。互いに詮索する必要もないし、そもそも、誰も私のことなど見ていないかもしれない。それでも、自分が場違いだと思えばすごく居心地が悪くなるし、とても1万円分のリゾートを満喫できるわけがない。

そう、私にとっては、アクアブルー多摩の610円のプールの方が楽しいし、もっと贅沢をしたければ昭和記念公園レインボープールに行けばいい。それが私の幸せなんだ。無理をする必要はないし、背伸びしても仕方ない。そのことに気付けただけでも、とても有意義な体験だったし、感謝でいっぱいである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?