だらねこげーむず

【パラメーターデザインのコツ①】細かい数字はどうでも良いのでコンセプトを大事にすること

※最後に言いたいことをまとめてるので、読むの面倒な方はそちらをどうぞ

◆とっても大事なパラメーターデザイン

ゲームは数字で溢れています。RPGでもアクションでもシミュレーションでも、多くのゲームは何かしらのパラメーターをつけるのは当然のごとく存在するわけで。

ゲームの売りとなるのはゲームシステムの方なんですが、そのシステムを生かすも殺すも「1つ1つのパラメーターをどうするか?」というデザインにかかっています。(非常にッ!地味なところなのでッッ!!注目してくれる人なんざほとんどいないんですがッッッ!!!)


雰囲気最高で期待MAXで買ったけど、蓋を開けてみれば微妙なゲームだった……みたいな経験、あるじゃないですか。特にインディーゲーム。アイディアは良いけどそれを生かすゲーム作りができていないのはやはり致命的なわけです。神ゲーになれるポテンシャルを持ちつつ凡ゲーになる。

そんなとっても大事なパラメーターデザイン、じゃあ具体的にどうするの?と言う話になると調べてもそんな出てこないんですよね……。なんかもう日本じゃ全然重視されていないんじゃないの?実はそんなに必要ないやつ?な気分になっちゃう。

とはいえ私もパラメーターデザイン(ゲームデザイン、レベルデザイン)の重要性を信じ、それで飯を食っている人間です。なので、具体的にどういうやり方でやっているのか共有しようと思った次第であります。

前置きが長くなりましたが、語っていきましょ。


◆デザインに正解はない。ただし必然性はある

具体的な方法について語ると言いつつまだ語らない。

ちょっと頭に置いておいて欲しいことがありまして、こういうデザインには決まった「正解」がありません。頑張って考えた方法が最高の方法かもしれないし、実はそれよりも100倍良い方法があるかもしれない。

じゃあ考えるだけ無駄なんじゃない?というと、そんな悲しい話はないです。なぜこのパラメーターにするべきなのか?という必然性はあります

雑魚敵の攻撃力、ショップに並ぶ商品の値段、攻撃の猶予時間などなど……細かいパラメーターに対して「こういう設定にすれば面白くなる」というのを考えて設定していけば、ゲームはだいたい面白くなります。もちろん考える人の力によって大きく面白さは変わりますけど。

逆によくわかんないからなんとなくこの数字にしとこー、と思ってやるとまぁ相当運がよくない限りは微妙なゲームになります。ギャンブルです。ゲーム作るのってかなりの労力がいるので、面白さの鍵となる部分を運任せにするのは正直……正気の沙汰ではない、と思っています。いやホント。


◆必然性を考えるのにはコンセプトが必要

ちょっとした例を出しましょう。最初のキャラクターが勇者、2人目のキャラクターとして戦士が登場するので、戦士の攻撃力についてデザインをするとします。常に一人で行動するタイプのゲームで、操作するキャラを選択できるようなイメージでいてください。参考に言うと、勇者の攻撃力は50です。さて、どういうパラメーターに設定しますか?


っと、ここでいきなり具体的な数字を考えるのは無意味です。無駄です。止めはしませんがオススメはしないです。

これはパラメーターデザイン以前の問題なんですが、そもそも「戦士ってどういうキャラクターなのか?」というコンセプトを決めておかないと、その存在がブレブレでよく分からない奴になります。

言い換えれば、「そのキャラクターの魅力は何なのかをしっかり決めてからパラメーターデザインをする」ことが大事とも言えますね。


◆「手段ベース」のコンセプトには意味がない

ここでは戦士の存在を「勇者よりも攻撃力の高いキャラ」としましょうか。プレイヤーは攻撃力が大好きです。さて、どういうパラメーターに設定しますか?


はい。まだダメです。この段階でも、具体的な数字を考えるのは下策です。コンセプトが抽象的すぎて、コンセプトの意味を為していないのです。どんな数字にしても、必然性は生じません。

勇者の攻撃力(50)より高い設定なら、まぁ攻撃力が51でも成立するわけです。でも50と51って、かなり特殊なシステムでない限りはほとんど差がなくて意味がない。…でも、意味のある差ってどのくらいでしょうかね?攻撃力が60なら意味がある?75から?

そもそも「攻撃力が高い」って1つの手段でしかないんです。問題は「攻撃力が高い」ことで何を達成したいのか?という目的の部分で、そこを考えないと意味のない数字になりがちです。


◆「体験ベース」でコンセプトを詰める

例えば、雑魚敵のHPが40。勇者の攻撃でダメージが20入るとしましょう。戦士の攻撃力を75に設定すると、戦士の攻撃でダメージが30入ります。戦士の攻撃で勇者の攻撃よりも1.5倍ものダメージが出ているので、戦士はとっても攻撃力が高いといえるかもしれません。素晴らしいですね。

ただし、この状況に限定して考えるなら、勇者と戦士の攻撃力の差は意味がありません

プレイヤーの体験として、攻撃回数で置き換えてみます。この敵を倒すにはHPを40減らせれば良いので、一回で20ダメージを与えられる勇者は2回攻撃すれば倒せます。次に戦士ですが、こちらは一回で30ものダメージを与えられるので、2回攻撃すれば倒せます。

つまり、どちらも2回攻撃しないと倒せない。そんな状況だと「勇者よりも攻撃力の高い戦士」というキャラクターに魅力はないということになりかねません。

逆に言えば、「勇者が2回攻撃しないといけないのに、1回攻撃するだけで雑魚敵を倒せるくらい攻撃力の高いキャラ」であれば、プレイヤーとしても分かりやすく魅力が伝わります。戦士の時代が到来するかもしれません。


◆必然的に決まる戦士の攻撃力

先ほど言った、「勇者が2回攻撃しないといけないのに、1回攻撃するだけで雑魚敵を倒せるくらい攻撃力の高いキャラ」を戦士のコンセプトにしましょうか。

この段階でようやく、細かい数字を考えます。とはいえそこまで考える必要はありません。1撃で倒したい雑魚敵のHPが40なら40ダメージ与えられる攻撃力にすれば良いのです。

攻撃力50で20ダメージ、75で30ダメージなら、100くらいで40ダメージが出そうです。もし100にして足らなかったら上げれば良いし、50ダメージとか想定よりも大きな数字が出たなら下げれば良い

「敵を1撃で倒すには40ダメージを与える必要があって、40ダメージを与えるには攻撃力が100必要だ。だから戦士の攻撃力は100なんだ」というのは、必然性があります。少なくとも、手段ベースで悩んでいたような、60がいいかな?75がいいかな?みたいな迷いがこちらにはありません。

このように、「プレイヤーにどんな体験をさせるのか」という体験ベースのコンセプトを基にパラメーターデザインをすると、「この数字にしよう!」というのが明確な根拠をもって決まります


◆良いパラメーターデザインは良いコンセプトから

まとめに入る前にちょっとまとめます。

パラメーターを決める時には、細かい数字から考え始めるのではなくて、「どういう存在なのか?」「何が達成したいのか?」をまず考えることが大事です。数字はそれらを達成するための手段でしかありません。

追求していくと「良いパラメーターデザインは如何に的確で優れたコンセプトを作るか」と言えるかもしれません。数字を扱う仕事と言われたりもするんですが、こう考えると数字を考える事自体にはそんなに重要性は無い気がしています。


◆今回の話まとめ

語っていたことを簡単に箇条書きにします。

・ゲームを生かすも殺すもパラメーターデザイン次第
・数字は手段でしかない。方針を決めるコンセプトが大事。
・「攻撃力が高いキャラ」みたいな抽象的なコンセプトは意味がない
・パラメーターに差をつけるなら「意味のある」差にしないと没個性になる
・「体験ベース」にコンセプトを決めると、必然的にパラメーターが決まる

実際のゲーム制作だと本当にいろんな要素が絡むので考えることも複雑化しますが、基本的な考え方はここに集約されるかなーと思っています。

ただ、これもあくまでパラメーターデザインの1例です。冒頭で言ったように正解のない話であり、これも私が独学で勝手に言っていることではあります。なので、「もっと良い方法あるよ?」という方はですね。その方法を共有して頂けるとですね。非常に嬉しく、助かりますです。

私も、今回語ったのは基本の所なので、時間ができたらまた色々と書いていく予定です。


◆ちょっとした宣伝

長文になるようながっつり目の話はnoteに書いていきますが、ちょろっと気が付いたこととか、簡単に語れることは Twitter で垂れ流しています。今回の記事が参考になった方は、フォローして頂ければそちらもご覧にですね、えぇ(チラッ

現在、個人でインディーゲームを作ってまして。ゲームブック風のRPGです。まだ開発序盤の序盤くらいで、公開できる情報はほとんどないんですが……。私のゲームデザイン能力の粋を集めた作品になる予定なので、それとなく気にしてもらえると嬉しいです。
これも情報が公開できるようになってきたら、Twitter で進捗を垂れ流していこうかなと思っとります。


◆素材提供

勇者と戦士の画像は「王国興亡記」さんから。
http://makapri.web.fc2.com/index.html

モンスター画像は「シアンのゆりかご」さんからいただきました。
https://cyanyurikago.web.fc2.com/

(考える人のアレは言うまでもなく「イラストや」さんからです。)
https://www.irasutoya.com/2014/02/blog-post_28.html

サポート(投げ銭、金銭支援)歓迎です。 頂いたお金はゲームの開発費に使用させていただきます。  ↓ 支援が多いと私のゲームのイラスト枚数が増えたりオリジナルの曲が組み込まれたりします。美味しいお肉を食べに行ったりはしません。