夏目友人帳同人誌的夏

「初めて、ですよね?」
広い屋敷の奥に通されると
これまた豪華な調度品で彩られた部屋に案内された
その部屋の中央に敷かれた布団の上で
これから何が行われるのかと思うと
とてもじゃないけど的場の目を見られない
「こちらを見て、くれないのですか?」
「的場さん、や、やっぱり俺⋯」
「ここまで来ておいて安々と帰すほどわたしが優しくないのは
君が一番よく知っているでしょう」
そうだ、この人の本性はよく知っている
その上で何故自分がここに来てしまったのか
夏目は自分でも理解ができない
「ここなら誰の邪魔も入らない
もちろん君の猫ちゃんもね」
ニャンコ先生には田沼と会うと嘘をついて出てきてしまった
嘘をつき慣れている自分が本当に嫌いだ
「それにしても君は本当にきれいな顔をしていますね」
的場に顎を撫でられて全身が総毛立った
何とか話題を変えようとこれも慣れっこな作り笑いをする
「的場さん今日は和服じゃないんですね」
「このほうが脱ぎやすいと思いましてね」
藪蛇だ
ラフな格好の的場は眼帯さえなければ普通の青年に見える
でも隠れた恐ろしさを知っている夏目には
何故かそれが痛々しく感じる
「目を閉じてください」
真顔でそう言われると抵抗できない
そっと唇を重ねるだけの的場のキスは優しかった
と思った瞬間後頭部を押さえつけられ激しく舌を絡ませてくる
「んんん!ううん!」
体が火照る
生まれてこのかた一度も感じたことのない衝動が駆け巡る
気が付くと夏目は自分から的場の服の下へ手を入れていた
「おや、積極的ですね」
にっこり笑う笑顔は余裕たっぷりだ
こっちの気も知らないで
布団にいきなり押し倒されて服を乱暴に脱がされる
「細いですね、まるで女の子みたいだ、可愛いですよ」
体温が10℃上がったみたいに顔が真っ赤になる
甘くとろけるような愛撫だった
夏目は自分でも初めて聞く声を漏らし続けた
「そんな声を聞かされたら我慢できなくなるじゃないですか」
的場は荒々しく自身の衣服を全て取り去ると
夏目を四つん這いにさせる
「ま、的場さん、俺、やっぱり⋯」
「大丈夫ですよ、痛くなんかしません、
という確証はできませんけどね」
的場のそれが少しずつ夏目の中に入ってくる
「あ、あああ!ま、的場さん!的場さん!」
初めはゆっくり腰を振っていた的場の動きが
徐々に激しくなってゆく
「ああん!あああああ!まと、的場さ、あああああ!」
「そんな可愛い声で名前を呼ばないで下さい
こちらも我慢が利かなくなるじゃないですか」
「す、すき、で、す⋯」
「おや君のほうから先に言われてしまいましたね」
その瞬間夏目の中に的場は全てを放出した
布団の中で的場に腕枕されていると
さっきの行為とはまた別の恥ずかしさに見舞われる
「これっきりなんて、言わせませんからね」
意外と厚い胸板に顔を埋めて返事の代わりにした
帰り道、車で送るという的場の申し出を断って
森の中を歩いた
ただいまといつもの笑顔で扉を開ける自信がある
ニャンコ先生にも楽しかったよと笑える自信がある
嘘をつき慣れてしまったから
そんな自分を的場はわかってくれている
怖い人だけどどうしても嫌いになれなかった
まだ火照りの残る体を北風で冷やして
さあ帰ろう
あの人の愛おしい温もりを胸に仕舞って

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