【唖然】NHKによるロッキン2024の”解禁破り” なぜ水戸放送局は暴走したのか?
8月9日、日本最大の野外ロックフェスティバル、ROCK IN JAPAN FESTIVAL(通称ロッキン)を巡ってNHKが異常な”独自”報道を行いました。
しかし、このニュースを巡って主催者は猛抗議。「フェスの最終日にファンたちと喜びを分かち合いたかったのに、NHKに台無しにされた」ことに対して強い怒りを露わにしています。今回は、その一連の報道に関連して、NHKの裏側に資料をベースに迫っていきましょう。
ロック・イン・ジャパン2024を巡るNHKの報道への主催者の抗議
私が今回の件を知ったのは、主催者の発表からでした。
エンタメ系ニュース媒体で報じられた他、X(旧Twitter)上でもNHKに対する抗議の声が渦巻いています。
事態を重く見たのか、NHK水戸放送局も早速次のような事実上の“謝罪文”を主催者に送付。早くもNHKが完敗を認めた形です。
確かに、ロッキンはコロナ禍におけるエンタメ業界を象徴する問題でした。行政・医師会との利害の衝突なども多数報じられてきた中、NHK的には「ニュースバリューがあるから報道に踏み切った」と捉えられなくもありません。
実際、このニュースを巡っては、自称新聞記者やメディア関係者が「NHKは普通のことをしただけ」・「文句をつける主催者がおかしい」的な論調のPostを多数投稿しています。
自称ジャーナリスト達の奇妙なNHK擁護
文藝春秋への所属を明らかにしながら、NHK側を取材せずにこんなPostを行う人がいるとは正直呆れました… 他にも新聞社系のアカウントで類似の論調が多数見られました。貴方達、NHKのような巨大権力に対しては、「不正」を前提に疑いの目を向けて真相を暴き出すのが仕事じゃないんか?
前田改革の最中に生まれた“火種”
少し前置きが長くなりましたが、実はこの件、NHK側が「独自」を打った背景にあったのは「ニュースバリュー」とか「知る権利に応えるため」といった通常の報道基準ではありません。いや、それも少しはあったかもしれませんが、単なるオマケでした。
原則局長級幹部のみが回覧するNHK内部の資料を読み解くと、SNSで「バズる」ことだけに執着したNHK水戸放送局の異常性が浮かび上がってきました。奇しくも、前田改革の一環として、ネット受信料獲得のためにWeb業務を膨張させていた頃に、今回の“事件”の火種が生まれていたのです。
発端は、2022年に投稿されたNHK水戸放送局のあるツイート
なぜ、今回のような事案をNHK水戸放送局が起こしたのか?その発端は、2022年1月のツイートでした。
NHKが証拠隠滅した場合に備えて、公益のための観点から、当該投稿を画像でも貼っておきます。
この投稿、奇妙なことに午後0:00ピッタリになっていますよね?
ちなみに、ニュースへのリンクは切れていますが、第一報は当日の全中昼ニュースに先立ち、11:59にWebへとアップされています。
実は、この時もNHK内での扱いは【独自】(※いわゆるスクープ、PDの私も幾つか持っています)でした。しかし、【独自】が、昼ニュースで原稿が読まれるよりも前にWeb投稿されたばかりか、Twitterにまで投稿されるとかおかしいと思いませんか?
このツイート(現post)こそが、今回のNHK水戸放送局暴走の引き金となっていたのです。
若者へのニュースのアピールだけが目的だった
取材を進めると、暴走を紐解く鍵となる資料「地域改革通信」という内部文書を入手することができました。これは、全国局長会議に関連して作成されたもので、部長級以上の幹部だけが原則回覧できます。
この中で、当時の水戸放送局長が報告した、一連のツイートと報道連動の取り組みが異様なまでに激賞されていました。
一体、どんな狙いがあったのか?連中にとっての課題とは何なのか?文書を詳しく読んでいきましょう(なお、取材源保護の観点から、文意を保ったまま一部改変しています)。
のっけから、局長級幹部とは思えないような軽いノリですが、私が紹介した0:00のツイートこそが、「狙い通りバズる」ための仕掛けでした。
この先には、独自情報をどのように掴んだのか?一体、どのような調整を経て報じられたのかが赤裸々に語られています。
これが、奇妙な0:00の投稿の真相です。ただし、SNSが完全先行したとなると問題と考えたのか、当該ニュースのWeb記事の公開時刻は11:59に設定されていましたので、プチ解禁破りではありますね。
既に削除されていますが、一連の報道の経緯は公式サイトでも公開されていました。WebArchiveから読めるのでリンクを貼っておきます。
首尾よく、全中ニュースに先立って第一報をツイッターで打つことに成功した水戸放送局。その後の経緯の報告には、高揚感さえ伺えます。
確かに、ツイッターではハッシュタグでロッキンとありますが、この時のニュース原稿は正式名称です。これ以後のニュースや今回の報道では「ロッキン」からタイトルをスタートさせていますので、この時の成功体験がいかにNHK水戸放送局的に革命的な事象だったかが伺えます。
営業(デジタル担当)までもがグルだった
AK(渋谷)一強のNHKにおいて、とりわけ存在感が薄い首都圏の水戸放送局。小さな地方局がツイッターのトレンド1位に関与したことは、職員達にとっても異様な興奮となったようです。
さらに、私の元にはデジタル担当が作成した資料が寄せられました。
主要メディアに先駆けて報じたことや、エンゲージメントが他よりも高かったことを「全て水戸局以下でした」と、下品なまでに誇っています。
自画自賛の勢いは止まりません。資料の中には、次のようなスライドも含まれていました。
「圧倒的な速報性や適切なハッシュタグにより、ネットのトレンドに乗って拡散された」と、まるで北朝鮮の報道を見ているかのようです。
まぁ、私の担当番組なんて大体トレンドになってたし、私個人のアカウントさえもトレンドになったことがあるくらいだから大したもんじゃないが、これが一つの“成功体験”として水戸放送局には刻み込まれてしまったのです。
2022年のロッキン報道における呆れた「課題」
成功裡に終わったと見受けられたこの施策、一方の「課題」とは何だったのでしょうか?文書内には、次のような記述がありました。
そりゃ、当たり前だろって内容です。あのねぇ、幾らSNSでトレンドになろうが炎上しようがWebで記事化されようが視聴率には全く影響無いよ。そんなの総合テレビの定時番組でもわかっている「常識」です。
裏を返すと、担当者からポスト長・局長に至るまで、視聴率や接触率は変わらないとわかっていながら、SNS上で目立って他の地方局に対して優位に立ち、自らが出世競争で優位に立つために行なったことだと考えられるのです。
そのために無駄な人件費を使い「デジタルファースト」の掛け声で、放送の「補完」を超えたWeb展開がなされていたわけですから、放送法にも抵触する極めて危うい取り組みでした。
前田改革で叫ばれた「外部環境への適応」とは、要するところネットへの膨張です。要するにネットで存在感を増していくことで、単にインターネットに接続しているだけで受信料を取る「ネット受信料」への野望が背景にはありました。そして、この文脈の先に、あの9億円不正もあります。
報道によれば、必須業務化した場合の配信対象は「放送番組と同一のもの」に加え、「災害情報、字幕(放送番組の原稿)など国民生活に必要な情報」に絞ることと、ネットオンリーの受信料はアプリからの同意確認などを取得することになりそうで、ヒマネタを「デジタルファースト」で出すなどの暴走には一定程度の歯止めが掛かりそうな公算ではあります。
ちなみに、私は新聞嫌いが甚だしい人間ですが、今回の一連の新聞側の働きかけについては、NHKが放送局として再生するために必要なことだと捉えています。
そして、2023年の暴走へ
と、ここまでの経緯を踏まえて、今回の暴走を改めて見てみましょう。
消されないように、8月11日午前7:50時点のスクショも載せておきます。
投稿時間は午後8:39となっています。全中にはお買い上げして貰えなかったのか、時間帯的には845の前ですね。前回の「デジタルファースト」よりも更に5分早められています。直前ではなくて、5分前と少し余裕を持つことによって、ローカルニュースの視聴率・接触率が向上することを期待したと考えられます。
しかし、前回が1日経過時点で4476RT、1735引用RT、4224いいねだったことを思えば、圧倒的な成功と言えるかもしれませんね!
原稿の締めには次のような記述があります。
一応、主催に改めて当てた結果として、「うーん、やっちゃえ!」と判断したのでしょうね。というか「この温度感だったら、去年の経緯もあるし炎上することも無く、むしろ歓迎されるだろう」と甘えたようです。
主催からすれば、去年と同じように公式の発表に揃えて欲しかったところ、NHKからすると「他社や地方紙がフライングして抜かれるかもしれない」という、記者の世界だけの内輪の恐怖があったのでしょうね。あれだけSNS展開の準備もしてきたのが「水の泡」だ、と。
NHKの地域放送局の役割に反する愚行
もちろん、今回の【独自】にニュースバリューが無かったとは私も思いません。ただ、わざわざ【独自】にする意味があったとも思えません。今回について言えば、ただ単に、2022年に「課題」として浮かび上がった「放送への還元」をリトライするためだけに【独自】を出したのですから。
では、なぜ今回の件に関連して「事実を知ったら報道するのが記者の役割」のようなメディア関係者の擁護が的外れだと言えるのか?この点については、まずそもそもの地方局が果たすべき役割を考える必要があります。
まず、NHKの地方局(地域放送局)に求められる役割は、地元と良好な関係を築いて地域振興を応援することです。今回で言えば、ニュースバリュー云々よりも、主催者と円満な関係を築きながら、イベントが成功のうちに閉幕して、密着ドキュメンタリー等の番組まで展開しつつ、さらに来年度以降にも緊密な関係を築いていくことが最大のミッションでした。
ここがどうもNHKの職員でも理解出来ていないようで、私のような制作局系の人間からすれば当たり前でも、NHK職員記者の中にさえ今回の件を受けて「知ったことはASAPで出して何が悪いのか」と開き直る者が多数います。
そういう連中に限って、例えば先日の岸田総理ウクライナ訪問に関しては、深夜のうちに汎用化まで済んでいたのに、ご丁寧に政府の指示に従って「解禁待ち」をして大谷選手の中継に速報を突っ込んだ件はだんまりです。
証拠の画像を掲載していますので、ご覧ください。
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