momi yamashita

映像作家。2021年「かの山」が78回ヴェネツィア国際映画祭に入選された。二人兄弟の母…

momi yamashita

映像作家。2021年「かの山」が78回ヴェネツィア国際映画祭に入選された。二人兄弟の母。アメリカの大学で人体解剖学や進化学を学ぶ。帰国後、「ちい&ゆうゆう散歩」NHKドキュメンタリーほか多くの番組にディレクターとして携わってきた。自主製作監督映画が国内外の映画祭に招待。

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Momi Yamashita//山下つぼみ filmmaker

映像作家・映画監督・映像ディレクター 逗子在住 Filmmaker, video director(TV, CM & WEB) Living in Zushi, Kanagawa, JAPAN プロフィール 山下つぼみは、映像作家・映画監督・映像ディレクターとして活動する逗子在住のクリエイターです。2000年にテレビディレクターとしてキャリアをスタートさせ、300回以上のインタビューを行いながら数々の番組を手掛けました。その後、自主制作映画の制作を開始し、短編映画『小太郎

    • 「陽は昇る」/マルセル・カルネ//語り継がれる「歴史的価値」を掘り下げてみる

      映画「陽は昇る」は、映画史に語り継がれる名作として知られている。 確かにマルセル・カルネの巧みな演出と、ジャン・ギャバンの魅力が融合してパワフルな一作だった。 正直、私にはドンピシャ好みな作品ではないのだけど(どちらかというと苦手だった)、色々と解剖してみた。いろんなところから情報を引用して、解剖しながら、映画がより素晴らしいものに感じられるようになったので、学ぶのマジで大事。 「陽は昇る」の映画史における位置づけ映画「陽は昇る」は、第二次世界大戦直前のフランスで製作さ

      • 「ゲームの規則」ジャン・ルノワール監督//風刺は上品にかわいく包んで

        一番好きな映画のランキングなどを見ると、だいたい10位以内に入ってくる「ゲームの規則」。私もたぶん入れてしまう。もしかしたら1位、2位くらいに入れてしまうかもしれない。この映画のことを思い返すだけで、脳内で最高の映画と時間が流れる。なんて洒落た作品なのだろう。大好きな「ブルジョワジーの密かな愉しみ」にちょっと似ていて、「ブルジョワジーの密かな愉しみ」より上品で美しい。 冒頭からもうすごい。群衆をクローズアップで捉えて混乱の様子を見せ、その後だんだんとズームアウトして、画面の

        • 「FOR EVER MOZART」ゴダール監督//肉体を脱いでしまえば、思考だけがそこにある

          正直、私はこの映画で何を理解したのかわからない。だけど、面白かったと いうか、見て良かったというか、しっかり「映画を見た」感覚がある。 冒頭で、ゴダールとおじさんがエアサッカーをしている中、おそらくあるべきでない公園の道路で車が走っているを見て「実態があるかないか」を思考する映画なのではないかと想像し始めながら見た。なので、ここで書いてあることは超主観的に観察した結果、どう思ったか、でしかないなと思う。 とある作家がミュッセの公演をするためにサラエヴォに行くと言っている。

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        Momi Yamashita//山下つぼみ filmmaker

          「ドイツ零年」ロッセリーニ監督//人間のスタートとゴールをカットに納める

          まじで、なんで今までちゃんと見ていなかったのか唖然とする。傑作。もういうまでもなく傑作であり、かつて(今もだけど)敬愛していたフェデリコ・フェリーニの原型みたいなものが見える。カメラワークしかり、フェリーニは「ドイツ零年」の裏っ返しみたいな作品だなと思って見ていた。 ワンカットが長い、長いのだけど、「流れている時間を撮る」というよりも、「人間がひっきりなしに交差している様子」を撮っているので、展開が目まぐるしい。カットの代わりに人がシャッターするというか、カットを割らない強

          「ドイツ零年」ロッセリーニ監督//人間のスタートとゴールをカットに納める

          「私、あなた、彼、彼女」シャンタル・アケルマン//"Je Tu Il Elle" Chantal Akerman

          ※今まで頑張って構成を考えながら感想を書いていましたが、自分のメモとして記録を残すことにしました。 タイトルそのままのミニマルな作品だった。家具を動かし続け、砂糖を食べ、手紙を書き、裸になり、外に出て、男と出会い、女と交わる。冒頭はモノローグで埋められ、セリフもほとんどない。このシンプルで簡略化された物語は、何かのメタファーなのかと思わせる。 だんだん主人公が外へ開くと同時に、場所や物語も展開するようでしない。退屈かもしれないが、部屋の中にいる時の方が居心地が良く、外へ出

          「私、あなた、彼、彼女」シャンタル・アケルマン//"Je Tu Il Elle" Chantal Akerman

          「駅馬車」ジョン・フォード//"STAGECOACH" John Ford

          ※今まで頑張って構成を考えながら感想を書いていましたが、自分のメモとして記録を残すことにしました。 冒頭シーンや、カット割り、時間の飛び方、画面の切り取り方、あらゆるところで「ベーシック」であり「スタンダード」を築いた作品なのだろうと始めの10分くらいで気づく。偉大な作品。 一方で、ネイティブアメリカンの扱い方や、女性の描き方、映画の中で語られる倫理観…全てにおいて、白人が圧倒的な強者として君臨している姿は目を背けたくなる。 憧れの作品、人生のベスト、とあらゆる人が挙げ

          「駅馬車」ジョン・フォード//"STAGECOACH" John Ford

          「ゴールデン・エイティーズ」シャンタル・アケルマン//"Golden Eighties" Chantal Akerman

          ※今まで頑張って構成を考えながら感想を書いていましたが、自分のメモとして記録を残すことにしました。 冒頭でミランダ・ジュライを思い出させる。おしゃれ。ミランダ・ジュライがアケルマンに影響されていてもおかしくないだろう。 アケルマン作品は「ジャンヌディエルマン」のイメージが強かったので、冒頭のキスシーンに面食らってしまった。美男美女が登場するわけではなく、滑稽なミュージカルらしいビギニング。「8人の女たち」にカラーも雰囲気も似ている。この作品がどこまで有名で人気なのかわから

          「ゴールデン・エイティーズ」シャンタル・アケルマン//"Golden Eighties" Chantal Akerman

          「右側に気をつけろ」ジャン・リュック・ゴダール//"Soigne ta droite" Jean-Luc Godard

          ※今まで頑張って構成を考えながら感想を書いていましたが、自分のメモとして記録を残すことにしました。 ゴダール作品は、以前まで小難しくてとっつきにくいものと思っていたが、小難しいとか、とっつきにくい、という「型」に押し込むこと自体が、自分の思考の浅さを露呈してしまうことなんだな、と思う。自虐とかではなく、「小難しいな〜」と鑑賞することが痛快になってきた。 コメディタッチのゴダール自身は、TWIN PEAKS Returnのダギーを思わせ、また、画面のあちらこちらにジャック・

          「右側に気をつけろ」ジャン・リュック・ゴダール//"Soigne ta droite" Jean-Luc Godard

          「Do Not Expect Too Much From the End of the World」/ラドゥ・ジューデ監督作品

          映画館で見たわけではなく、Film Scope Proという配信プラットホームで見た。 配給会社に連絡し「映画とはなんたるかを毎度教えてくれるあなたの作品は日本で見られるかわからない。どうしても見たい」と伝えたら、豪速球で承認してくれて、それだけでラドゥ・ジューデ監督と、彼を支える人々が好きになってしまった。 「よし、見るぞ」 アニメの主人公がバイクを乗って、ヘルメットのシールドを下ろす気分。(古いか) ポチッと映画が始まると、すげえ画面が荒い白黒の映画が始まり、やや下品

          「Do Not Expect Too Much From the End of the World」/ラドゥ・ジューデ監督作品

          実験映画に耐性があるだけで、面白がる方法を理解してない//ジェイムズ・ベニング監督 カルフォルニア3部作

          自分は実験映画に対する耐性があるだけで、面白がる方法を理解してない。 世に言われる実験映画の大作と呼ばれるものは、キャッチーな作品しか理解できていないし、面白いと思えているのか疑わしい。 2023年イメージ・フォーラム・フィルムフェスティバルで、マイケル・スノウ「セントラルリージョン」の上映を知った。 名作だ、ということを聞いて意気揚々で出向いたのだが、「なんか面白かった気がするけど、あれは何だったんだ…」と混乱し、映画選定人である兄さんに「あの映画ヤバかったんですけど」

          実験映画に耐性があるだけで、面白がる方法を理解してない//ジェイムズ・ベニング監督 カルフォルニア3部作

          「審査員賞受賞作品」は間違いない説//「熊は、いない」(NO BEARS)/ジャファル・パナヒ監督作品

          こんにちは。noteにしっかり書くのは久しぶりです。 特に拙作の短編「かの山」が第78回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ短編部門にノミネートされ、ベネチアへ行き、新しい世界を見聞きし、途方に暮れていました。ありとあらゆる価値観の嵐に揉まれ、2年経てようやく元の位置に戻った気がします。たぶん。 「かの山」から得た経験は、映画を志す人、映画祭を狙う人、未来の私、過去の私にも役立つ情報もあると思うので、近々upさせてください。製作開始から現在まで、リアルタイムで書き残していたも

          「審査員賞受賞作品」は間違いない説//「熊は、いない」(NO BEARS)/ジャファル・パナヒ監督作品

          「ノスタルジア」/アンドレイ・タルコフスキー監督

          「何を言ってるかわかねーと思うが、おれも何をされたかわからなかった」という言葉が頭によぎる時がある。「ジョジョの奇妙な冒険・スターダストクルセーダース」のポルナレフが最後の決戦でディオに遭遇した時の言葉である。 真夏の鎌倉川喜多映画記念館を一歩出たときも、このセリフが口からついて出た。タルコフスキーは、いわば私にとってディオほど恐ろしい存在だと感じたのだと思う。 美しいけれどいかにも難解。 タルコフスキーの映画に対する印象だった。 「巨匠」と呼ばれるからには、本丸は映像

          「ノスタルジア」/アンドレイ・タルコフスキー監督

          「凱里ブルース」 ビー・ガン監督作品/国際的評価の高い作品とは

          2015年の中国映画。ロカルノ映画祭で新進監督賞と特別賞、ナント三大映画祭でグランプリを受賞を受賞し、ポン・ジュノ監督をはじめ、ギエルモ・デル・トロ監督も大絶賛したと言われている本作。とにかく、世界的にかなり高い評価を得ている。 さて、そんな「いい映画」というのは、どんなものなのか? 物語がいいのか?映像が美しいのか?何が評価されているんだろう。 それを知りたくて映画館に。 いやあ、不思議な映画でした。後からジワジワくる系。 書きながらジワジワしちゃう。 このジワジワを拙い

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          THE DEAD DON'T DIE・ジム・ジャームッシュ監督/ゾンビ映画の入門書的作品

          映画の感想を書こう思っても、なかなか時間を作れないのは、きっと「良い文章を書きたい」というスケベ心があるから。スケベはもう辞めて、見た作品の感触を思い出すために書こう!と重い腰をあげてます。 だけど、見たときの感触なんて、良い文章じゃないとね… という自分へのツッコミは脇に置き、コロナ禍後初の映画館鑑賞はジャームッシュ監督のゾンビ映画でした。怖かったら嫌だな、と恐る恐る見始めたけど、終始笑ってました。でも「面白かった」とはちょっと違うような… 「ジャームッシュが現代にゾ

          THE DEAD DON'T DIE・ジム・ジャームッシュ監督/ゾンビ映画の入門書的作品

          素振りをするように鑑賞経験値を積む(MUBI編)/備忘録

          幸福なことに、最近は面白い作品しか見ていない。 まず、子供が小さく映画館に行けず、不憫に思った夫がプロジェクターを誕生日にくれたのが大きい。 大画面で買い貯めたDVDをひたすら観て行く達成感と、作品鑑賞経験値が積み重なっていく快感はこの上ない。 この経験値は非常に大事な要素で。 鑑賞経験値は次見る映画に対する理解力が格段に上がる。 また、映画配信サイトMUBIが、作品鑑賞体験の質を圧倒的に向上させてくれた。 本当の映画好きの10%に向けたサブスク動画配信サイトという

          素振りをするように鑑賞経験値を積む(MUBI編)/備忘録