スクリーンショット_2018-10-15_8

備忘録/映画、本 before-after 出産

6月下旬に出産をしたため、その近辺は映画館に行くことや、観ること、読書することがなかなかできず、ましてやそれを記録に残すという時間がほとんどない。けれど、観ること、読書することを辞めてしまうと、母である以外の「私」が何者かわからなくなるのが恐ろしく、無理にでも「物語」を吸収する時間を作ろうとしている。
忘れてしまうのを避けるため、ここ3ヶ月ほど鑑賞した映像作品について、鑑賞した時系列で、箇条書きに印象に残ったところを残しておく。読んだ本も加えてみた。ちょっとリストが長いかも。

・犬ヶ島/ウェス・アンダーソン監督作品
の独特な台詞回しと人間関係に魅了された。「『実在しない歴史』を語っているところが面白い」と某映画館長(兄)は言っていたが、WA監督作品は、いつも身近にいそうな人物の歴史を語っている気がする。よくある物語を、独特のディテールで語る監督のスタイルが個人的に好きだ。これぞ「演出の力」というものではないだろうか。

・ハッピーアワー/濱口竜介監督
役者の演出、そして観客を世界の時間の流れ方に引き込む力がものすごかった。「その場にいる」感覚がだんだん心地よく、登場人物たちの時間を共有している時間は楽しかった。ただ男女関係の設定に全く共感できず、この人たちいい歳してこんなことばっかり考えているのか。と呆れてしまう心が鑑賞の邪魔をした。監督の恋愛モノじゃない作品を見たい。

・ゲットアウト

・アンダークラウンド/エミール・クリストリッツァ監督
鑑賞したのは4度目ほど。毎度発見がある。実在する歴史に矮小化したディテールを加えることによって「可笑しく」し、同時に現実はそんなに「可笑しい」ものではないので、見ていると悲しくなってくる。傑作だ、と言ってしまうのは簡単なのだが、超ハイテンションで、怒りと悲しみを爆発させると、笑いに転化してしまうのだろうか。この作品を語るには、もう何度か見なくてはならない。

・めし/成瀬巳喜男監督
見始めたときは「成瀬監督もかわいい時期があったんだね」などと舐めた態度で挑んでいたが、だんだん引き込まれてしまって、最後のシーンと、原節子と上原謙の会話で一気に大好きな映画になってしまった。うー…なぜこんなにも面白いと感じるのか説明できない…。強いて言えば「夫婦関係にはお互いにしか理解できない愛憎がある」というのを腹で感じさせられた、ということなのだけれど、どうやってこれを可能にしているのか?成瀬監督作品については改めて論考を加えたい。

・ムーン・ライズキングダム/ウェス・アンダーソン監督作品
「犬ヶ島」が観たかった、という小4の姪っ子が我が家に泊まり、夜怖くて眠れないというので一緒に見た。やはり「ある男の青春期の話」であり、よくある物語を独特のディテールで語るスタイルが好きだ。少女漫画チックな世界観にグッとくるのは、自分のルーツが少女漫画にあるからだろう。

・ゼイリブ/ジョン・カーペンター監督

・ファーストガンダム、Zガンダム、シャアの逆襲/富野由悠季監督
ファーストガンダムは10年に1度は観ており、観る度に発見がある。今回は、「ララァの死」が宇宙世紀シリーズのコアとなる部分で、アムロの物語は彼女の死によって終わった。同時に、シャアはアムロに憧れ、プライドを傷つけられ、そのプライドを立て直すために足掻いているただの男なのだと理解した。「守るべき人がいないのになぜ戦うの」と問い、唯一深いところで繋がりあった相手は敵であり、その相手を殺してしまう無情さは、「悲しいけど、これ、戦争なのよね」というスレッガー中尉のセリフに集結されている気がする。

・吸血鬼ノスフェラトゥ/F.W.ムルナウ監督
3歳の息子と一緒に見られ、かつ私も勉強になる作品をと思い再見。やはり面白い。というより、非常に好みである。ノスフェラトゥのメイクがかっこよく、若い夫婦の絡みが気色悪かったりというのも印象深いのだが、何よりもドラキュラ伯爵の登場の仕方、立ち振る舞い、魔法のような動きにドキドキさせられる。3歳児も同様に感じていた模様。今度はもっと突っ込んで鑑賞したい。

・アンダルシアの犬/ルイス・ブニュエル
ノスフェラトゥの隣に置いてあったのを発見した3歳の息子が、これも見たいと言い張るので再見。今回は、アリが手の中に巣を作っている様子をじっと見ている男が「ダリらしさ」が垣間見えたからか、非常に印象に残った。この映画の面白さは未だよくわからず、また何度か見て映画というものを再考したい。ちなみに息子はこの作品を「おっぱい触るやつ」と呼んでいる。

・パノララ/柴崎友香
「ハッピーアワー」のDVDに柴崎氏が文章を寄せており「寝ても覚めても」を見るつもりでいたので手に取った。読み始めは何を楽しんでいいのかわからず戸惑ったが、次第に「登場人物たちが生きている時間と空間」を楽しむ感覚に至り、読み終わったのがすごく寂しかった。主人公を取り巻く人物たちが魅力的で、オカルトチックなエピソードはオカルトではなく、日常として描かれているのが非常に好みである。そして、何よりも、この作品全体を漂う街、建物の息遣いが文章でこんなにも立体的に立ち上がってくることに興奮する。かつて住んでいた街が舞台だからかもしれない。

・春の庭/柴崎友香
「パノララ」の世界を読み終わってしまったので、またあの時間軸に浸りたくて読んだ。あまり面白いと思わなかったのだが、タイトルにある庭の存在感がやはり際立っており、色や流れている風までもを感じられそうなのが不思議である。

・カラフル/森絵都

・千の扉/柴崎友香
「パノララ」と同様、私がかつて住んでいたマンションの隣の団地が舞台だったので、どうしようもなく楽しい気分で読んだ。掴みどころのない物語展開で、どこが物語の集結地なのかわからないまま、クライマックスも肩透かしを食らうような展開なのがまた嬉しい。「人生の教え」みたいなものはなく、淡々と生きる毎日の中に人が勝手にクライマックスを見出したり、事の顛末に丸をつけたりする作業が愛おしい。主語や時制が突然ずれたりするところに、小島信夫「抱擁家族」を思い起こさせる。とても楽しい読書体験だった。

・最初の悪い男/ミランダ・ジュライ

他にも書きそびれているものは、思い出したらここに書き足して行きたい。

そして、今再見している「ツインピークス」は、Returnを見てから。そして読書中の「リンカーンとさまよえる霊魂たち」は書評に挑戦したいと思うが、やや自信がない。山本直樹「ビリーバーズ」は、いつか山本直樹氏についてまとめて書くタイミングがあったら。そして、いま「ジョジョの奇妙な冒険」に夢中なのだけど、評を書こうとしても結局、ポルナレフが好きだとか、ジョルノ・ジョヴァーナにどうしようもなく共感するとか、ただのファン心が炸裂するだけであり、恋心を解体したくない気持ちもある。

なにはともあれ、この数ヶ月、濃い内容の物語と触れてきた感がある。この世に存在している物語の豊富さにはため息が漏れるばかりであり、「物語」がなぜ人をこんなにも魅了してしまうのか不思議で仕方がない。いつかそんなことも考察して行きたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?