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"王将"と"玉将"

将棋は王を取り合うゲームです。

将棋の駒は敵味方合計40枚です。
これをちょうど半分に分けて戦います。

ところがよくよく見ると40枚の中に"王"は1枚しかありません。

すごく似た文字で"玉"ってあるけどこれって王なの?

はい、そうです。

ルール上"王"と"玉"はまったく一緒です。

でもじゃあなんでわざわざ"王"と"玉"を区別してんの? っていうのが今回の話です。
(前置きが長い…)

ずばり、『上位者が"王"を使い、下位者が"玉"を使う』です。
先手後手は関係ありません。

簡単に言うと、強い方・偉い方・目上の方が王を使う。と思ってくれれば良いかと思います。

目上だけど弱い人はどうすんの? って感じですけどね(笑)

■もともとは両方"玉"だった

将棋は金や銀、玉などの"宝を取り合うゲーム"だったと言われています。
その中でもっとも価値の高い"玉"(神秘の力を持った水晶)を取った方が勝ち、となったと言われています。

そして、豊臣秀吉がその片方を"王"にした、と言われています。

※諸説あり


■言葉使いもややこしい

例えば「王手」という言葉はありますが、「玉手」という言葉はありません。
王手飛車取りとは言いますが、玉手飛車取りとは言いません。
自玉に詰みなしとはいいますが、自王に詰みなしとは言いません。
玉飛接近すべからずとは言いますが、王飛接近すべからずとは言いません。
将棋の読み上げでは王もギョクと読みます。「ロクハチ・オウ」とは絶対言いません。「ロクハチ・ギョク」と言います。

大盤解説では、両方玉が使われるときもあります。

将棋から少し離れてみても、餃子の王将はありますけど、餃子の玉将はありません(今後できるかもしれませんが)。

■プロもちょっとあいまい

プロ棋士では一応序列がはっきりしています。
基本的にはその序列にそって王と玉を使い分けますが、微妙な場合もあります。

タイトル戦ではそのタイトルを持っている人がもっとも格が上です。
それ意外はタイトルの序列・段位・棋士番号などで決まります。

藤井君29連勝したから王でよくね? とはなりません。
羽生さん神ってるから王でよくね? ともなりません。

一応ルールっぽいのはあります。
が、細かい決まりは私も知りません。

しかし、先ほども言ったように微妙な場合があります。
その場合、プロも譲り合いをします。

プロの対局の場合、上座と下座が決められています。
当然、上位者が上座に座り、上座に座った方が王を使うわけですが、席の譲り合い合戦はよくあることらしいです。

「たまたま今は序列は私の方がほんの少し上かもしれませんが、あなたのような大先輩に対して上座に座るなんて滅相もありません」と。
「いやいや、たしかに私の方が先輩ではありますが、私のような序列の低い者が上座に座るなんてできません」と。

ちなみに藤井六段は、それまではだいたい四段だったし新人だったため玉を使うことが多かったのですが、昨日六段になりましたので今後、四段・五段の人と対局する場合は基本的に王を使うことになります。


■アマチュアの人は空気を読め

アマチュアの大会は出たことがありませんので大会については分かりません。
素人同士で対局する場合のことをお話します。

まずプロと違ってだいたいは上座と下座はありません。
そんなのを意識して将棋を指す素人はまずいないです。
ですが、どちらが玉を使うか、という譲り合いはたまにあります。

基本は、上位者が王です。
が、初対面ではどちらが上位なのかだいたい分からないです。
目上の方で弱い人ってどうしましょう。
下手に調子に乗ると、これからの付き合いに影響が出るかもしれません(笑)

将棋を嗜む人にとって、強い人と対局する場合は"教えてもらう"という意識があります。

どんなに年下のクソガキだろうと、将棋が自分より強ければ、将棋の強さに敬意を表して自ら玉を取り、自分が下位者だということをさりげなくアピールします。
その際調子に乗ってるクソガキは、得意顔で王を取ります。
謙虚なお子さんは、「いえいえ、あなたのような大先輩に対して私が王を使う何て滅相もありません」と交渉してきます。
強すぎるのに謙虚になりまくる、"逆に嫌味クソガキ"もたまにいます。

さじ加減が難しいですので、空気を読もうとしか言えないです。

駒落ち(ハンデ)で対局する場合は、駒を落とす方(ハンデをする方)が王を使います。
これはマナーです。


■全然気にしない人もいる

そういうの面倒くさい、とにかく将棋がしたいんだ。
王も玉も一緒だから関係ない。

そういう人もたくさんいます。


■結局、全然気にしなくてOK

王も玉も駒の性質はまったく同じです。
対局が始まれば、上位者も下位者も関係ありません。
平等な頭脳格闘ゲームの始まりで、完全実力世界です。

プロの間でも、王の方が勝率がいいとか、玉の方が勝率がいいとか、そういうデータはありません(たぶん)。

観る将の人は、どちらが王なのかを注目してみるのも面白いかもしれませんね。

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