ソシャゲにおける、課金と推奨意向の関係性

前回はTikTokの分析を行いましたが、そのときゲーム関係のリクエストが多かったので、FGO(Fate/Grand Order )と、競合A、B、Cの3アプリを対象に調査・分析しました。回答者数は各アプリ360名で、内容は前回に引き続き、推奨度の調査(NPS®調査)となります。

今回はNPS®の効果を検証するため、推奨度を問う設問に加え、

・SNS投稿経験 
・課金経験 
・ゲームを始めたきっかけ

なども同時に聴取しました。
※NPS®の定義や詳細については、前回の記事を参考にしてください。

NPS®はソシャゲでもワークするか?

「NPS®が高いと主要な指標(売上やロイヤリティ...etc)が高い」と一般的には言われています。ソシャゲでも同じことがいえるのでしょうか。

NPS®は多くの業界で有効性を証明されている指標です。しかし、相関性が認められず、「他の指標や調査を採択すべし」という業界も存在します。

例えば今回のソシャゲでいうと、廃課金者はゲームに文句をいったり、運営を批判しつつも、お金は使うし継続利用する・・・ということが想像できます。

ここをまずは明らかにすべく、推奨度と各指標の相関性を検証してみました。結論として以下の3点がみえてきました。

推奨者は...
・ARPUが高い
・口コミや話題を生み、サービスの認知の向上に貢献できる
・推奨→推奨の好循環を形成し、よりよい顧客基盤の貢献者である

では、詳しくみていきましょう。

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まず、推奨者、中立者、批判者別に課金平均額をみてみましょう。
下図は推奨レベル別にゲームへの課金額を比較したものです。

推奨者と批判者の平均課金額では約3倍もの差があることがわかりました。推奨者を増やすことでARPUの向上が見込めそうです。

次に、SNSや動画サービスで、該当するゲームについて投稿した経験の有無を比較しました。

下図は推奨ランク別に、SNSや動画サービスへ、ユーザーがゲームに関することを投稿したかどうかの割合を比較したものです。

推奨者は投稿経験率が批判者に比べ2倍ほど高くなっており、サービスの認知向上に大きく貢献してくれていることがわかります。

シンプルにするために4アプリ総合となっていますが、今回調査したサービス全てでこの傾向がみられました。

上記のように、NPS®︎の高い人がサービスをオススメしてくれることは想像しやすいでしょう。
実は、紹介でサービスを使い始めたユーザー自体もロイヤリティが高く、推奨者になりやすいと言われています。*0
そちらはどうでしょうか?

下図はサービスごとの推奨ランク別に、紹介きっかけでサービスを開始した人の割合を比較しています。

どのサービスでも、友人・知人の紹介をきっかけにサービスを開始してる人の割合は、推奨者で最も高くなっていることがわかります。

つまり、NPS®︎を高めることは、「推奨が推奨を生む」好循環を産みやすいといえます。

最初はワークしないのでは・・・と不安だったソシャゲ領域でも、NPS®︎を高めることで下記3点のことがいえるので、ある程度ワークするとみてよさそうです。*1

・ARPUを高め、高い利益水準を維持できる
・ユーザーの口コミを増やし、サービスの認知度を上げられる
・推奨→推奨の好循環を形成し、よい顧客基盤の形成のサイクルを生み出す

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サービスの改善にNPS®を活用するには?

次に、分析を通してどんなサービス改善の糸口が見えるのか?を見ていきたましょう。

分析の際に気をつけたいところは、以下の3つです。

・意味のある軸を追加し分析してみる
・分析結果を統合的に可視化をする
・定性・定量をいったりきたりする

今回はFGOを例として、1枚のチャートで概況を理解するため、以下の3つの軸でバブルチャートを作成しました。

・縦軸 :  NPS®︎との相関係数 *2
・横軸 : 回答総数に対するポジティブ回答の割合 (%) 
・バブルの大きさ : 全コメント数に対する該当コメント数の割合 (%)

利用期間によってユーザーの課題は異なるという仮説があったため、聴取していた利用期間でユーザーを新入生、中堅、ベテランでわけました。

新入生...利用開始して1ヶ月以内
中堅...利用開始して1ヶ月超~1年以内
ベテラン...利用開始して1年超経過


最初に着目したいのは、以下の3点です。

ストーリーとキャラクターの
・バブルサイズが大きく、言及数が多い
・ポジ度合いが高く、好印象が保たれている要素
・NPS®︎との相関係数が高く、推奨への影響が大きい

ここから、FGOを勧めたくなる理由は、戦略やゲーム性等のトリッキーなものでなく、ストーリー&キャラクターという王道ものである、ということがわかります。

次に操作性をみてみましょう。こちらは、以下3点の理由から、改善の余地が大きいといえます。

・ストーリー、キャラに次いで言及数が多い
・新入生からベテラン、どの属性でも言及されている
・ポジ度は50%未満で、ネガティブなコメントが過半


特に、時間の経過に伴い操作には慣れるはずなので、ポジティブ度合いに変化がないのは大きな課題です。

最後に、イベント/周回ですが、これは利用期間で大きく違いがあります。
まず、新入生では言及がありません。中堅&ベテランではポジ度が非常に低く、ベテランではNPS®︎への相関も大きいので、推奨の妨げになっている可能性が高いといえます。

ここまでをまとめてみましょう。

以上のように3つの軸で分析し統合することで、

①取り組みの方向性(維持、要改善、経過観察の3レベル)
②取り組みの優先順位(ボリュームやポジ度、相関係数の総合的判断)

をくっきりつけることができました。

次に、今回の自由回答から得られたコメントをよんで、上記分析の解像感を深めていきましょう。

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・ストーリーが重厚で良い。周回やガチャの厳しさから7点。(中立者 7点)

・シナリオがとてもいい、英霊サーヴァントが魅力的、イベントもとても楽しい。ぜひ薦めたい、と思いますが、戦闘がとても私的に辛いものがあるし、サーヴァントの育成が大変だと思うのでマイナス2点で。あとメインストーリーある程度進めていないとイベント参加出来ないのも薦めずらいです。(中立者 8点)

・シナリオはとても良い。キャラも魅力的だし、バトルはシンプルに見えて戦略性がある。でも今から始めるのは厳しすぎる。ストーリーをかなり先まで進めないとイベントに参加できないが、ストーリーを進めるにはキャラをかなり強化する必要があり、キャラを強化するにはイベントで報酬を得るのが一番、それ以外はかなり効率が悪い。このような悪循環なので、イベントに参加できるまでに心が折れる。(批判者 5点)

・ゲーム自体はとても面白いがかなりの容量が必要になること、動きが重くサクサクと次のクエストに進めない、等の勧めにくい理由があるため。(中立者 7点)

・オート機能がない、ガチャありき(批判者 0点)

・限定キャラばかりで新規で始めるのは厳しい。オートが無い演出スキップも無いで時間がかかって厳しい。面倒な周回プレイを強いられ厳しい。(批判者 0点)

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さて、こちらを読んでみると、ストーリーやキャラでは満足なのに、イベントや操作性が推奨のボトルネックになっていることがわかります。

このように、しっかりとコメントを読み込んでいくことで、個別項目うんぬんの話でなく、推奨に至る/至らないまでの流れが見えてきます。

いきなりコメントから読み始めると、小さな意見を過大に捉えてしまったり、全体感を見失ってしまいがちです。
定量と定性、抽象化と具体化のフェーズを行き来することが、NPS®︎を分析する時に非常に重要です。

まとめ

単純にスコアを集計するだけではなく、意味のある軸の追加、分析結果の統合的な可視化、定性・定量の併せ技をすることで、

・そもそもユーザーがお勧めしたくなる自社サービスの価値の柱はなにか?
・推奨者を増やすため、どんな価値を死守し、どんな障壁をなくすべきか?
・カイゼンすべき項目の優先順位はどうればいよいか?

という問いに、分析から手がかりを得ることができました。

というわけで、太っ腹にアンケートを再度実施してくれたテスティーさんありがとうございました。

今回はテスティーさんの調査・分析をサポートする形で、THE GUILDから渡邉が入らせて頂きました。NPS®調査について知りたい・相談などしたい、ということがあれば、お気軽に渡邉にもご連絡ください。

注:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

*0. 「ネット・プロモーター経営〈顧客ロイヤルティ指標 NPS〉 で「利益ある成長」を実現する」2013より抜粋
*1. 全てのゲームアプリを調査したわけではないので、あくまで今回対象とした4アプリの範囲では、という意味
*2. 相関に関しては、ポジティブ回答を+1、ネガティブ回答を-1とし、回答者のNPS(0~11)にどのくらい影響するかを数値化したものとなります。

調査概要:
■回収数
各アプリ:360名(10代120名、20代120名、30代120名)

■調査期間
2019/2/1(金)~2019/2/2(土)

注:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。


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Mahiro Watanabe

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