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データ戦略の会社が考える「RPAとAIの違いと、その具体的な導入プロセス」

最近、AIに加えてRPA(=Robotics Process Automation)という言葉も広がっていますが、RPAでできると言われていることは「定形業務を自動でやってくれる」「ヒューマンエラーを避ける」等、AIでできるとされていることとも一部重複する部分があります。

RPAはAIと何が違うのか、はよく聞かれる質問ですので、その違いと導入プロセスを整理したいと思います。

AIとRPAは違うレイヤーのもの

この2つは、概念的に違うレイヤーのものです。本来、RPAというのは、Robotics Process Automationという文字通り、業務上の特定のプロセスを自動化するという「ソリューション」の概念であり、 AI(ここでは機械学習・深層学習の手法と定義します)は「それを達成するための手法の一つ」です。つまり、RPA、自動化を達成する手法はいくらでもあって、その中のひとつとしてAIが注目されているという構造です。

例えば、ある業務プロセスを自動化したいときに、必ずしもAIが必要かと言うと、そうとは限りません。例えば銀行のATMは、それまでの銀行窓口業務の一部を自動化したものですが、AIはなくとも動作します。業務プロセスをIF THENで整理し記述することが出来るからです。

ではなぜ、この2つの概念はよく混同されるのでしょうか。その背景として、AI技術の進歩によりRPAが適用できる、つまり自動化できる領域が格段に増えつつあるというものがあります。例えば、医療画像の診断や工場での検品はその典型例です。

例えば、皮膚がん(メラノーマ)の診断については、以下のような研究が最近公開されました。

「皮膚がんの診断精度、AIが皮膚科医を上回る」
経験豊かな皮膚科医よりも人工知能(AI)の方がメラノーマの診断精度が高い可能性があることが、ハイデルベルク大学(ドイツ)のHolger Haenssle氏らによる研究から明らかになった。この研究では、58人の皮膚科医よりも「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれるAIの手法を用いたコンピューター・アルゴリズムの方が、ダーモスコピーによる診断で、メラノーマを見逃したり良性のほくろをメラノーマと誤診したりする確率が低いことが示されたという。この研究結果は「Annals of Oncology」5月28日オンライン版に掲載された。
出典: CareNet https://www.carenet.com/news/general/hdn/46177

もちろん、同記事にあるように、単純に診断がAIで全て自動化できるという話ではないですが、大量の過去の画像データを元に深層学習モデルを構築し、医療現場であれば疾病の有無、工場であれば良品・不良品の判断、農作物の出荷であればサイズや規格の判断、などさまざまな判断が出来るようになりつつあります。

こうした例は、AIによりRPAの適用領域が増えている事例ですが、RPAにはAI以外の技術を用いたものも含まれ、ごっちゃにして語られることもあり、混同されやすいのではないでしょうか。

RPAやAIの適切な導入アプローチとは

ですので、結局の所ビジネス上の課題が、特定の業務の自動化による「コスト削減」「ヒューマンエラーの防止」「人手不足への対応」であるのであれば、RPAやAIという概念に惑わされず、まずはビジネス上どのような業務を自動化により効率化できたら良いかを定義し、それに最適な解決策を探すというのが適切なアプローチです。

実際には、良いタスク定義は

「解決できればビジネス・インパクトが出るタスク」
 と
「技術的に解決可能なタスク」

の掛け算です。具体的には、まず解決できればビジネス・インパクトが出るタスクを洗い出し、その上で、既存のパッケージソフトウェアで解決できるものがないかを探します。既存のソフトウェアを導入することがもっとも早く費用も安いことが多いです。最近はchatbotや企業のコールセンター向けソフトウェアなどを中心に、関連するパッケージ商品も数多く出ているため、その中で自社にもっとも適切なものを検討します。

一方で、自社にフィットするパッケージ商品がないということも多くあります。その場合は、自社で何らかのツールを開発し導入する必要があります。自社での開発をする場合は、いわゆるAIと言われる機械学習や深層学習の手法が必ずしも必要ではないことも多く、エンジニアと相談しながらどのような手法がベストかを決める必要があります。

また、GoogleやAmazonなどの大手企業が提供している解析エンジンを利用することで、必要な開発コストを抑えることもよく検討されます(この辺りの開発を進める上での選択肢は、別記事「AIを開発・導入するには結局何をすればよいのか」にもまとめてあります)

RPAやAIの適切な導入に重要なチーム組成

上記のプロセスを進めるには、ビジネスの仕組みが分かる人と、技術が分かる人が協力する必要があります。タスク設定とその解決手法を検討し実行するためには、ビジネスの仕組みの理解と、技術の理解の両方が必要で、1人が全てをカバーできることは非常に稀です。なので、社内外問わず、チームを組んで実行することがもっとも成功確率が高まります。「データサイエンティストを雇ったからこれで万事解決だ」ではなく、そもそもAIやRPAの導入は横断的な深い知識が必要であり、その為に必要な専門性を持った人でチームを組むことが成功への近道です(チームを組むことの必要性や、データサイエンティストのスキルセットは別記事「データサイエンティストに必要な3つのスキル?」にもまとめてあります)

まとめ

繰り返しになりますが、RPAや業務上の特定のプロセスを自動化するという「用途・ソリューション」の概念であり、AI(機械学習・深層学習の手法)はそれを達成するための手法の一つです。

なので、実用上の総論としては、AI導入を検討しているとき、目的が定形業務の効率化なのであれば、まずは既存のRPAパッケージを見ることになります。ただし現状では既存RPAパッケージでは対応できないタスクも多いので、必要に応じてAI開発的なアプローチ(機械学習・深層学習の手法を新たに開発するアプローチ)も検討するという流れがよいのではないでしょうか。

我々DataStrategyでも、企業の課題に応じて、既存RPAパッケージの導入、AIの開発導入、まずはAIの開発に必要なデータの整理・取得方法の支援等、あくまで目的ベースで様々な手法を使用します。一番重要なのは、ビジネス上の目的・課題を明らかにすることで、それによって手法は後から決まってくるということです。

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