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事業に「今から」人工知能を取り入れていく方法 part 3

* 2月2日に開催した勉強会の様子をお届けしています。Part1の記事はこちら、Part2の記事はこちらから

Q&Aセッションでは、これまでのセッションを踏まえた質問を受け、実際に事業に人工知能を取り入れていくための議論が深堀りされました。

Q.人工知能開発は実際のところどこまでできるのか?まだまだビジネスには活用できないのか、それともすでに活用できるのか?

島本:人工知能開発は、「魔法の杖であり、魔法の杖ではない」のはその通りだと思います。例えば囲碁の一手が話題になりましたが、それも相当のデータを集め、システムの改善を繰り返すイテレーションをしています。そういう意味では可能性は魔法の杖だと思いますが、データを集めたり、多くのエンジニアを抱えるなどとんでもない金額を使っています。

ディープラーニングの技術だけで完結する訳ではないと思います。つまり予算が限られている中では魔法の杖にしきれないところもある。そういう意味で、課題や予算を区切り、期間、予算、エンジニア人数、データの制限の中で魔法の杖になることもならないこともある。課題を区切れば、Googleより実際に効果を出せるビジネスもあります。

Q.成果が出るかわからないプロトタイプ開発に取り組むために、社内をどうやって通しているのか?

武田:そこは各社苦労されているところです。トップの人が「やってみよう」という強い意思があると良いと思いますが、中長期のロードマップを見せて、その中で必要な予算として取られることも多いという印象です。技術的な開発計画を説明して通す企業もあります。

島本 :これまでの話と矛盾するかもしれませんが、多く開発を手がけると、なんとなく成果の推測はつくところはあります。その上で、これはできないと伝えたり、厳しいということをわかってもらった上で、プロトタイプ開発に取り組むこともあります。プロトタイプ開発のみの場合も、その次も見越して取り組む場合もあります。開発を検討される中で、最初から3年かかるとか、これだけ精度が確実に出るという提案がもし上がって来た場合は、疑ってかかった方が良いかもしれません。

武田:プロジェクトとして挑戦する内容について、P/Lに効果があるか、技術的に可能かどうか、という両方の視点で判断する必要があります。しかしこの両方が分かる人はとても少ないので、わかる人を見つけて聞くしかないと思います。

Q.精度上げていくために実際にどんなことをしていくのが良いのか?

島本:数多くありますが、一つお伝えすると、現場と仲良くなることが大切だと考えます。確実な方法はなかなか見つかりません。仮説を立てて検証するのですが、業界やそのビジネスならでの勘、ドメインナレッジが重要になることが多いです。ホテルの例で言えば、現場へ行き、どう価格設定しているかをお試しでやってもらい見学させてもらいました。そうして現場の勘やノウハウ、困っていること、空気感、経験を教えてもらって、システムを改善していきます。技術とノウハウが両方必要になってきます。

そのため工場まで行って見てというプロセスも入れています。最初はデータだけもらうこともありますが、次のステップは現場に行く。そういったことを開発と現場が確認しながらできると良いと思います。

武田:全くその通りだと思います。私も現場にヒアリングをさせてもらいます。人がやっていることをデータで表現できるとうまくいくことが多いです。現場でやっている人がどういう判断をしているか、その判断材料をデータとしてきちんと収集し表現できているか、が精度を上げるために大切になってきます。

あとは変数(貯まっているデータの種類)を見せてくださいと言っています。変数が十数個しかないと増やしようがありません。少なければデータの種類を貯めていきましょうという話にならざるを得えないことがあります。

島本:あと各論は話を聞かないと分かりませんが、私なら設計はどうか?を気にします。データよりも設計に問題がある可能性があるかもしれない。ディープラーニングや機械学習の設計は正解がないので、どのような設計もできます。日々論文が出て来る状況なので、私は技術的な設計を確認すると思います。同じデータでも成果が出る設計ができる人、出来ない人がいます。

Q.大手ベンダーが提供する既存のAIサービスの活用についてはどう考えているのか?

島本:かなり多い質問です。言いづらいところがありますが、私たちがなぜ依頼を受けるか?を考えると、「初期は既存のサービスを使ってやってみたが、良い成果が出なかった」ので相談が来ることが多くあります。

今はIBMのWatson、GoogleのTensorFlow、PreferredのChainerなどありますが、その中でも全然違います。一つ言及すると、パッケージは拡張性がなく自由度が効かないため、まず動くもの使いたいということであれば良いかもしれませんが、その後が大切なプロトタイプ開発には向いていません。

Q.今、取り組みを検討しているが抑えるべきポイントは何か?

武田:前半で提案させていただいた5つのポイントとも関連しますが、信頼できる技術パートナーを見つけることが重要になると思います。その上で、できるできないを考えたり、社内外に対して期待値のコントロールもしっかりとしていく、そうしたことにも付き合ってくれるパートナーを見つけることが、取り組みを進める上でポイントになってくるのではないでしょうか。


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