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レノファなスタジアムの話(7)バスや列車でみらスタへ(その1)

前回まで、3回にわたって維新みらいふスタジアム(みらスタ)の駐車場の話を取り上げましたが、駐車場の問題はなかなか容易な解決法が見当たらない中で、レノファに限らずどのJリーグクラブでも同じようなことを言っているのが『試合観戦には公共交通機関をご利用ください』というアナウンス。

レノファもみらスタへのアクセスに関してJRとバスを積極的に案内していて、時刻も試合前後にスタジアムで案内しています。

でも、そもそも(レノファも含めた)各クラブ、あるいはサッカーに限らずイベントごと全般で主催者が、なんで「公共交通機関をご利用ください」と繰り返し言っているのか、気になったことありませんか?
バスとかJRとかどうせ使わんし、みな自家用車で来れるようにすればええんじゃないの?」と思いませんでした?

今回の話はこの辺に焦点を当てます。

公共交通機関の利用を促しているわけ

ちょっと専門的な話になりますが、いわゆる「交通手段」「移動手段」と呼ばれるものは、不特定多数の人が利用する「公共交通」と、個別の移動需要に応じて利用される「個別交通」に分けることができます。
鉄道や路線バス、船舶や飛行機などが「公共交通」で、自家用車や自転車などが「個別交通」です。
(この辺の話を詳しく知りたい方は下記リンク先のページを参考にしてください)

このうち、公共交通には「同じ区間を大量輸送するなら公共交通のほうが圧倒的に効率が良い」という特徴があります。

わかりやすく説明するために、交通手段における「一人を運ぶために使う道路の面積(占有面積)」で比較すると、一般的な自家用車のサイズが長さ4.5m・幅1.7mだとして、一台の自家用車に乗る人数が4人だと仮定する(実際には1台あたりの平均乗車人員はもう少し少ないらしいのですが)と、一人当たりの道路占有面積は約1.9㎡。
一方で、山口市内を走っているような中型路線バスのサイズが長さ9m・幅2.3mだと言われていて、定員が55人程度なので、満員になったと仮定すれば、一人当たりの道路占有面積が約0.38㎡。
ということは、同じ人数を輸送するのに、バスの占有面積は自家用車の5分の1ほどで済んでしまうんですね。つまり(超単純に計算すれば)同じ人数を運んでも、バスの渋滞の可能性は自家用車の5分の1で済む、と。

自家用車と同じ道路を使うバスでもそうなのですから、道路ではなくレールの上を走る鉄道だと、渋滞知らずで輸送量ももっと大きい(1両が長さ20m前後で定員が100人近く)。自家用車の人たちがそっちに乗り替わると、その分道路を使わなくて済むので、それだけで渋滞の要因が無くなってきます。

というわけで、各クラブが「公共交通機関をご利用ください」と言っているのは、たくさんお客さんに来て欲しいけど、スタジアム周辺の渋滞・混雑は減らしたいので、自家用車からバスや鉄道に乗り替わってほしいから、というのが大きな理由の一つになっていたりするわけですね。

なぜ公共交通を使わないのか

とはいえ、地方の人たち(特に山口県民)はなかなか公共交通を使わない。
どこに行くにも自家用車という人が大多数でしょう。
この辺りについて、山口市が2018年に実施した調査結果があります。
(下のリンクの「アンケート結果」参照。対象は15歳以上の山口市民5000人)

これを読むと、なかなか面白い結果が出ていて、

  • 山口市の公共交通に「(どちらかといえば)満足」なのが4分の1、「(どちらかといえば)不満」なのが約3分の1。若い人ほど満足度が低い

  • 不満の理由は「本数が少ない」「料金が高い」「目的地まで不便」など。

  • 最寄りのバス停や駅までの距離は「500m以内」が約半数、「1km以内」が約4分の3。

  • 普段の交通機関は「自分で運転する車」が約6割

というわけで、超ざっくりまとめると「必要な時に必要な場所に手軽に行ける交通手段がないので、現地に直接向かえる自家用車を使う」って傾向が伺えるのですよね。
ちなみにこれは、どの地方都市でも比較的似たような傾向がみられるようです。

公共交通への不満

不満の理由に挙げられている「バスや電車の本数」に関していえば、それなりの利便性を持って「日常的に使える」と呼べるのが大体1時間に2-3本(15−20分に1本)だと言われています。
山口市内だと、JR山口線の新山口駅ー山口駅間が日中1時間に2本、防長バスの新山口駅ー日赤口間が日中1時間に3本ですから、この両者は本来「日常使いできるレベルの交通機関」だったりするわけです。
(そして、みらスタはこの両者が通るそばに立地しています

料金に関しては、自家用車を使った場合には「かかった費用が見えにくくなる」(ガソリン代や車検代、保険料として、ある程度まとめて後から払っているため)ため、「乗車する都度支払う」公共交通の方が割高に見えてしまうという特徴がありますし、人数がある程度まとまった場合は自家用車の方が一人当たりの料金が割安になるという傾向もあります。
もっとも、過疎の進みすぎた地域では、維持費を勘案しても自家用車の方が経済的な負担が少ない、という試算もあるようですが。

目的地までの利便性については、自家用車に慣れると「ドア・ツー・ドア」(出発地から目的地までドア1枚)の感覚が当たり前になって、「乗り換える」という行為そのものが億劫になってしまうというのもある気がします。
あとは、地方都市だと、乗り換えようと思ったときに相手の交通機関のダイヤと合わずに長時間の待ち合わせが発生することを嫌う、というのもあるでしょう。

前回触れたような「パーク&ライド」と言った手法をきちんと使えるように整備すれば、スタジアム周辺の混雑は減るし、自家用車(個別交通)と公共交通の両者のメリットが活かせると思うんですけどねぇ。

というわけで、今日の話の目的としては「たまにはでいいので、自家用車じゃなくて、バスや列車でみらスタに行ってみません?」ということを言いたかったのですが、前段の部分がちょっと長くなってしまったので、具体的な話は次回以降に繋げたいと思います。

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