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野良猫ミウからの伝言(7)

第七章 祈り


ボクは、からっぽになったテントのちかくで、まいばんねていたんだ。だって、ここはボクのなわばりだからね。

でも、もうあさとよるのごはんはなくなったんだ。だから、じぶんでごはんをさがさなきゃいけなかったんだ。

なつのあいだは、いろんなたべものがあるんだけど、こんなにさむくなるとなかなかみつからないんだ。なんとか、ちいさな虫をみつけて、たべたんだけど、ぜんぜんおなかがいっぱいにならないんだ。

猫族のボクたちは、すこしぐらいたべなくてもだいじょうぶなんだけど、なんにちもたべないと、さすがにからだがうごかなくなってきたんだ。

そんなとき、おおきなからだのにんげんがたちがきて、のこったテントをもっていったんだ。そしていっていたよ。

「OK. Good bye SUMITA!」

こうえんは、もとのかたちにもどったんだ。こうえんはとてもしずかになったんだ。

それからボクは住田町をまわってごはんをさがしたんだけど、やっぱり、なつのうちに、いろいろじゅんびしていなかったから、どこにたべものがあるのかわからなかったんだ。

ボクはほんとうにおなかがすいたんだ。だから、こうえんにもどって、うずくまっていたんだ。そのとき、せんせいのことばをおもいだしたんだ。

「もし、食べ物に困ったら、神様に祈るんだぞ。どうぞボクに食べ物のある場所を教えてくださいってな。」

だから、ボクは、うまれてはじめて、おいのりすることにしたんだ。おいのりってどうするのかわからないけど、めをぎゅっとつぶって、せんせいみたいにかみさまに、はなしてみたんだ。

「かみさま、ボクのなまえはミウです。ずっとこのこうえんに住んでるんですけど、おなかがすきました。もうなんにちもごはんをたべていません。おなかがぺこぺこです。どうか、ごはんのある、ばしょをおしえてください。えーと。いえすさまおねがいします。」

いのったら、なんだかしらないけれど、こころがおちついたんだ。おなかはすいているのはかわらなかったけど・・・。でも、おいのりをおわって、めをあけたら、ボクはしぬほどびっくりしたんだよ。

どうしてびっくりしたかというと、ボクのめのまえに、おおきな犬がいたんだ。ボクは、犬がだいきらいなんだ。だって、やつらはボクらをいつもおいかけるからね。でも、そのときは、おいのりしていて、まわりのおとにぜんぜんきがつかなかったんだよ。

ボクは、おもいっきりからだをまるくして、そして、「ふーーーっつ」っていってやったんだ。でも、あまりびっくりしたから、そこから、うごけなかったんだ。そうしたら、その犬がこういうんだ。

「ワン?【おまえはここの猫か?】」

「ふーーーっつ」

「ワン!【おまえはここの猫かって聞いているんだ!】

「ふーーーっつ」

「しょうがないやつだなあ。俺さまはシベリアン・ハスキーのワン太だ。ただし、最初の名前は英語でキャッシュだ。どうだかっこいいだろう?どうしてキャッシュかというと、おれのご主人さまが、俺さまを『現金』で買ったからなんだ。どうだすごいだろう?」

「???」

「で、俺さまは、このあたりを散歩しているってわけだ。どうしてかって?ここは、ご主人様のなわばりだからだ。だから、俺さまもお供しているってわけよ。どうだすごいだろう?」

「ここはボクのなわばりだい!」

「うん?何か言ったのか?」

「ボクはこのこうえんのミウだよ。なにかようがあるの?」

「こうえんのミウ?変な名前だな。いいか。今夜、俺さまの家に来い。いいか、これから俺さまの匂いを電柱につけといてやるから、あとで来るんだぞ!」

「え、どうして?」

「うるさいやつだな。いいから来い。俺さまの家はつまりご主人様の家ってわけだ。いいか、野球場のむこうがわだ。いいか来るんだぞ!ワン。」

「・・・わかったよ。」

「そうだ、それでいい。俺さまはワン太だ。最初の名前はキャッシュだがな!」

そういうと、その犬は、にんげんといっしょに、野球場のほうに歩いていったんだ。

「ワン太のいえになにがあるんだろう?」ってボクはつぶやいたんだ。ボクは、そこにいってみることにしたんだ。

そのよるはとてもさむかったんだ。ボクはワン太のにおいをおいかけて、野球場のうしろまでいったんだ。そこはボクのなわばりからはずれているから、ほかの猫にみつかるとややこしいことになるんだ。だから、ボクはいそいで、ワン太のいえにむかったんだ。

ワン太のいえは、やくばのそばの、おおきなどうろのてまえにあって、いぬごやが、げんかんのすぐそばにあったんだ。ワン太は、げんかんのそばでねていた。だから、ボクはすぐにげられるようにすこしはなれたところからワン太にこえをかけてみたんだ。

「みやう。【こんばんは】」

「・・・・」

「みやう!【こんばんは!】」

「うん?だれだ?ワン?」

「ボクだよ。こうえんのミウだよ。」

「おう。おまえか。そうか、約束どうりきたってわけだな。よっこらしょっと。」

「・・・」

「あーねむいな。それでな、まずここは俺さまの家ってわけだ。つまりワン太の家だ。わかったか?」

「わかっているよ。」

「そうか。それでよし。それで、俺さまのご主人様が、最近こんなことを言うんで、お前を見つけにいったってわけだ。」

「えっ?」

「ご主人様がな、『キャンプの猫はどうなったかなあ?あそこにはもうだれもいないんだな。で、あそこの猫は、かわいがられていたんだがな。もういないかもしれないなあ。』って何回も言うわけだ。で、俺さまは、ご主人様と散歩に行くたびに、あそこで猫をさがしていたってわけだ。そうすると、お前が芝生の上で寝ていやがったから、声をかけてやったってわけよ。」

「ねていたんじゃないよ。おいのりしていたんだよ!」

「おいのり?何だそれは?何かの食いものか?」

「ちがうよ!かみさまに、たべものの、ばしょをおしえてくださいっておねがいしていたんだよ!」

「ほう。そうか。そうすると、腹が減っているってわけだ。」

「う、うん。」

「それじゃあ、俺さまの飯を食ってもいいぞ。」

「えっ??」

「俺さまの家にある飯だ。ドッグフードっていうわけだが、特別に猫のお前も食べてよし!」

「どうして?」

「どうしてって、いちいちうるさいやつだな。ご主人様がお前を捜していたんだから、俺さまもお前に何とかしてやんなきゃならないんだ。これが『犬族の忠節の掟』ってやつだ。わかったか?」

「うん。」

「いいから、食べろ。俺さまはもう腹いっぱい食ったからな。」

ボクは、犬ごやの中にある、おさらから、どっぐふーどってのをたべたんだ。においがへんだったけど、おなかがすいていたから、とてもおいしかった。ボクはおさらにあったものを、ぜんぶたべちゃったんだ。

そのあと、ボクは、とってもつかれていたし、たべおわってねむくなって、いぬごやのなかでねちゃったんだ。

>第八章


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