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帯広ばんえい競馬めぐり

ばんえい競馬が帯広観光の代名詞、になったのはいつ頃からなのでしょうか。空港にも大掛かりな展示がされていますし、帯広市街のそこかしこにも「ばんえい競馬」関連の看板を見かけます。

帯広空港
実寸大の模型
帯広のまちなかの看板

銀の匙」などの作品で好意的に扱われてきた、ということも要因かもしれませんが、興行的にも他の公営ギャンブルと同様に売上が右肩上がりで絶好調、ということもあるかもしれません。2022年には大台の500億円を突破したというのだから驚きです。

そういうお金の話を抜きにしても、サラブレッドの2倍くらいの馬格の馬が砂を捲き上げながら疾走していく姿は迫力満点です。「疾走」といっても重いソリを引っぱるので人間の早歩きくらいの速度ですが、だからこそ逆に圧倒的な重量感、北斗の拳の「黒王」を想起させるような迫力を感じます。
今では日本で帯広だけでしか催行されていない独自性も相まって観光資源的にも魅力的な存在だとは思います。以上競馬好きの人間(私)の意見です。

私も先日、帯広に訪れ、その道すがら「ばんえい競馬」に関連する施設にいくつか立ち寄って来ました。どこも魅力的な場所だったのでこの記事で紹介していきたいと思います。

ばんえい牧場十勝

帯広空港〜ばんえい牧場十勝

「ばんえい牧場十勝」は帯広空港から車ですぐそこ、ほぼ空港の目の前にある便利な立地の牧場です。この牧場では200頭を超える輓馬が繋養されており、レースとはまた違った普段のお馬さんの様子を眺めることができる場所です。
今年の4月に一般人も入場可能になった、ということで、まだ知名度も低いのか観光地として取り上げられる機会が少ないようですが、馬好きには間違いなくおすすめの場所です。

牧場の風景


この距離で馬が見れる。餌やりはもちろんNG

入り口近くにあるログハウスみたいな建物でチケットを買い、靴を長靴に履き替えて消毒して入場します。入場後は特に色々うるさく言われることなく、牧場の場内を比較的自由に見学可能です。
場内には3つの牧場があり、上記の写真は第1牧場の風景です。

公式サイトより引用 (https://baneibokujo.co.jp/)

第3牧場には競馬場さながらの障害コースが設置されています。調教実施時でなければ自由に入って良いということなので、私も足を踏み入れてみました。

障害コース


馬の視点

実際にコースを歩いてみると、履き慣れない長靴ということもありますが砂に足が取られて全然前に思うようにすすみません。こんな歩きづらい環境を輓馬は重いソリを引いて事無げに前に進むのですから、「馬力」という言葉の意味をあらためて痛感させられます。

思ったより起伏がきつく、登るのにも時間がかかります
調教準備中の輓馬

「調教中でなければ自由に見学可」と聞いて入場し、実際入り口も封鎖されてなかったのですが、私が場内でそこそこ長い時間たむろっていたら調教の準備がはじまりました。迷惑をかけないようにとそそくさと立ち去ろうとするのですが砂に足を取られてなかなか出口にたどり着けない中、調教を開始した輓馬に先を越されました。
間近で見ると本当にすごい迫力で、圧倒されました。

こんなに間近に見れるのは様々な偶然・掛け違いの産物で、牧場側もこういう事が頻発したりするのはあまり好ましく思ってない可能性はあります。私は馬の特性を鑑み、馬に対してフラッシュを炊いたり間近で激しく動いたりはせず、通り過ぎる時はじっと立ち止まって眺めていました。えっちらおっちらと出口までたどり着いたらすぐに外に出ました。
調教は外から眺めるのが正道と思いますが、外からでもすごい迫力です。

訪れた時間が食事時ではなかったので僕は利用しませんでしたが、入り口のログハウスでは十勝の食材を活用した軽食も味わえるようです。空港から極めて近い便利な場所にあるので、帯広についたらまず最初に訪れるべき場所、もしくは帰り際に立ち寄る場所としておすすめです。

帯廣神社

帯広駅〜帯廣神社
帯廣神社

帯廣神社は帯広市街にある神社です。北海道神宮の御分霊を祀っている神社とのことです。
この神社は、シーズン(冬)にはシマエナガを鑑賞することができることで有名な神社のようです。境内には当然のように「シマエナガみくじ」が設置されており、神様もしくは神職の方々というのは人の心を惹きつけるのがお上手だなと感じます。

シマエナガみくじ

本物のシマエナガは今回見ることはできませんでしたが、この季節には森の中のいたるところでエゾリスを見つけることができます。森をぶらぶら散策するだけでも楽しい神社です。

エゾリス

さて、馬は古代から神の使いだとされており、多くの神社で祭祀のシンボルとされていますが、この帯廣神社も例外ではないようです。帯廣神社では「ばんえい競馬」の絵柄の絵馬が用意されており、境内でも多くの絵馬が奉納されていました。私はお土産として家に持ち帰りました。

ばんえい競馬の絵馬

ばんえい競馬関連のグッズは競馬場で購入可能と思いますが、絵馬については帯廣神社でしか手に入れられないと思います。戦いの前の必勝祈願、神頼みも含めて、競馬場に立ち寄る前に一度訪れておくべき場所かなと思います。

帯広競馬場

帯広駅〜帯広競馬場
帯広競馬場

そして、ばんえい競馬といえばもちろん帯広競馬場です。
私は20年近く前に一度訪れた事がありますが、その時以来の訪問でした。

北海道の4箇所の競馬場(旭川、北見、岩見沢、帯広)でばんえい競馬が催行されていた時代がかつてありました。交通の便的にもあまり便利でない箇所が多かったこともあってか当時はどの競馬場も経営難で、各場の経営が行き詰まり、2006年ころから岩見沢、北見、旭川とバタバタと閉場。帯広だけが唯一のばんえい競馬場として生き残り、今に至ります。私はその頃に駆け込みで岩見沢競馬場〜帯広競馬場と訪れました。それ以来の来訪です。

20年前に訪問した時の記憶は曖昧ですが、土日に訪れたはずですが場内は人がまばらで、施設も古臭く、ああこれではばんえい競馬が衰退するのも、連鎖的に閉場するのもやむを得ないんだろうなと感じた記憶はあります。
今は人も多く、雰囲気も明るくなったな、と感じました。20年前は干からびたおじいさんしか見かけませんでしたが、今回は若い人も多く見かけました。「とかちむら」のようなおしゃれなショッピングモール・フードコートも当時はありませんでした。

とかちむら

ただし、スタンドなど、施設はそこまで一新はされてないようで、見た目の古臭さはなかなかのものですし、締切間際には雑アレンジされた「草競馬」があいも変わらず流れていて、20年前から1mmの変化も感じさせない、悠久の時の流れを感じさせます。

スタンド上部。カメラマンは怖くないのかな

提供されるコンテンツは全体的に20年前から大幅にアップデートしたということはないのですが、時勢の変化によりお金が勝手に集まるようになり、環境が良くなる。という極めて恵まれた状況に今のばんえい競馬は置かれているのかな、と感じます。
もちろん、厳冬の季節を乗り越えて、なんとか今の時代まで潰さず頑張ってきたから、こその果実なのでしょうが。

昔から変わらなくて、良いこともあります。ばんえい競馬の持つ魅力は昔と変わらず残り続けています。

中央競馬の、びっくりするくらい大きい施設、キレイな芝生、大観衆の歓声。そんな中で躍動するサラブレッドの美しい馬体と、60kmを超える速さで疾走するスピード感、芝を蹴る馬の蹄音と、鞭の音の迫力。馬券を握りしめた観客たちの「生」を感じさせる本性むき出しの姿。
そんなものも魅力的ですが、3場36レースのレース数も含めいかんせん忙しない感じもあります。

人が馬と同じ速度で歩きながら声援を送ることができる、そんなばんえい競馬ののんびりしたリズム、馬と人との距離の近さは、とても牧歌的で今の時代とても魅力的に感じます。
中央競馬のように「差せぇ〜〜〜〜!!!」と発作的に叫びたくなるようなドラマチックな逆転劇はほぼ起こらないので、ゴール前もとても穏やかで、精神を取り乱す事なく鑑賞することができます。

僅差の2着に敗れ、心の平穏を保っていたはずなのにゴール前でつい叫んでしまったハズレ馬券

公営ギャンブルがコロナ禍を経て絶好調で、ばんえい競馬もその例外に漏れず、個人的には今後もまだしばらくは存続してくれそうなので嬉しいです。

公営ギャンブル全般の兆候を見て感じる不安もあります。
ネット経由で投票できて、現地には下手したら訪れなくても良い、という傾向がより強まると、競輪のように開催時間は深夜帯に近い時間まで遅くなり、会場は無観客、みたいな運営スタイルになり、効率だけ追い求めて「現場」がどんどん軽視されていってしまうかも、ということだけは少し懸念をしています。

ネット投票ブームも、一過性で、いずれ波が引いていきますし、もっと刺激的な新しい胴元にお客を持っていかれてしまうかもしれません。
そんなふうに潮目が変わった時に、「現場」に魅力が無かったら、人を呼び止めることは難しいでしょう。
競馬は馬の繋養も、施設の維持も、莫大なお金がかかる事業だとは思いますが、ぜひ今の「現場」の持つ魅力を維持しつづけ、より良いものにして行き、この「ばんえい競馬」というコンテンツを未来にも存続させて欲しいな、とは競馬ファンとしては感じます。もう少しスタンドや施設全体、レースの賞金分配増配とかにも投資してほしいなと思います。

場内にいた謎キャラクター

なんか最終的に小姑、老害みたいな文章を書いてしまいましたが、まとめると、ばんえい競馬は普段テレビとかで見ることができる競馬とは全く異なる世界観で、現地で見ると迫力があるし、ほのぼのとした雰囲気も魅力です。
競馬場のすぐ前から空港行きのバスも出ているため、帰り際にちょっと寄るということも行いやすいので、帯広に訪れた時はぜひ立ち寄りましょう。おおむね毎週土日月に開催されます。

帯広を代表するグルメといえば「インデアンカレー」

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