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CEREMONYに大合唱の祝宴を〜King Gnu Stadium Live Tour 2023 CLOSING CEREMONY 日産スタジアム 6月3日 ライブレポート〜

2023年初夏。CLOSING CEREMONYと題されたライブが、ヤンマースタジアム長居と日産スタジアムで開催された。3年前に発売されたアルバムを引っ提げて、もう一度ライブをすることはおそらく珍しいことだろう。遡ること、2022年12月30日。この日に行われたインスタライブで、常田さんはCEREMONYを成仏させるライブをしたいと語っていた。CEREMONYはもともと大きな会場で歌うことを想定して制作されたアルバムらしく、残念ながら発売後すぐにコロナ禍に突入。これまでライブで歌われることなくきてしまったこのアルバムの楽曲を、大きな会場で大合唱する本来の形で締め括りたいという想いから企画された。そんなライブがあったら絶対に行きたい、そう思っていた半年後、そのライブは実現した。ここでは、日産スタジアム公演初日のライブレポートを綴りたいと思う。

日産スタジアム公演初日の空は、快晴だった。この日の天気予報は、台風による大雨だったが、開演数時間前から雲一つない青空が広がり、天さえも味方につけてしまうKing Gnuに震えるばかりだった。交通機関が乱れていたにもかかわらず、King Gnuの音楽を浴びるべく集まった観客で、会場は超満員。そこへ満を持して登場する王者、King Gnu。

オーケストラのチューニングが終わり、『開会式』が流れ始めた後に披露された一曲目は、『飛行艇』だった。「King Gnu始めるぜ!」スタジアムが一瞬にしてKing Gnu一色になった。会場の最高潮のテンションをそのままに、『Tokyo Rendez-vous』へ。7万人の「君とトーキョーランデブー」が響き渡る。続くは『Teenager Forever』と『BOY』。井口さんの透き通る歌声が、澄んだ青空に広がっていく。雨上がりの快晴の中で大合唱する『雨燦々』は、清々しく心地が良い。ライブでは初披露となる『小さな惑星』では、スクリーンに曲名が映し出され、歓喜の声が上がった。軽快なメロディラインに、新井さんのベースがアクセントになる。次は、初夏を感じさせる爽やかな楽曲である『傘』が演奏された。

ここからは、MCならぬ、喫煙所トークタイムが始まった。みんなここまで来るのに疲れたでしょう、座っていいよ、と語りかけた後、おもむろにタバコに火をつける井口さん。7万人という規模でも、変わらずに飾らないメンバーの姿がそこにあった。不意に常田さんが、メンバー4人で日産へ向かう車内で長居の映像をチェックしていて、一人で号泣しちゃった、と告白。サングラスとマスクで誤魔化したから気付かなかったでしょ、といつものように茶化していたが、そもそも常田さんがMCで話すこと自体が珍しいので、本当に特別なライブなのだと改めて感じさせられた。

喫煙所トークタイムで和んだところに投入されたのは、アコースティックの『ユーモア』と『Don’t stop the clocks』だった。物理的には離れているのに、ライブハウスにいるような近さを感じた。

続いたのは、『カメレオン』と『三文小説』の盛大なバラードだった。気が付くと、先程まで座っていた観客が皆、立ち上がって聴き入っていた。響き渡る心音。『泡』のチルなムードが会場全体を包み込んでいく。

オーケストラメンバーによる『幕間』の生演奏。何かが始まる雰囲気を醸し出しながら、披露されたのは『どろん』だった。東京ドーム公演に引き続き、不穏にアレンジされたヴァージョンである。続くは『Overflow』。リズム隊の勢喜さんと新井さんも絶好調だ。

ここで、King Gnuやmillennium paradeでお馴染みのMELRAWさんや常田俊太郎さんを筆頭に、今回のライブのオーケストラメンバーが紹介された。本当に多くの人が関わってはじめて、このライブが成立している。この瞬間が、奇跡のように感じられた。

MCを挟んで披露されたのは、『Player X』。暗い歌詞も、皆で歌うと、不思議と明るい歌詞のように聞こえる。勢喜さんのドラムソロが響き渡り、次の曲が『Slumberland』であることを予感させた。楽器と拡声器と合唱が、カオティックな空間を演出する。続くは、『Stardom』。噴き出した炎は、ロックバンドの王者の貫禄を体現しているようだった。会場の熱気に炎の熱が加わったところに投下されたのは、『一途だ』。オルタナティブ・ロックの真骨頂。ギター、ベース、ドラム、ボーカルの化学反応に、観客の手拍子は喜びに満ちていた。一転して、『逆夢』では壮大なバラードが繰り広げられた。

本編終盤に披露されたのは、『壇上』だった。この楽曲は、CEREMONY発売前後の数々のインタビューで、常田さん自身が、急激な人気で関わる人が多くなった分、クリエイティブが薄くなってしまっている気がすると悩んでいた時期に、もうやめてしまおうかとまで考えた日々に、制作したと語られていた。あれから3年の時を経て、7万人の前で『壇上』を歌う常田さんはどんな気持ちだったのだろう。

King Gnu改名前のアメリカツアーの写真が、アルバムをめくるかのようにスクリーンに映されていく。成仏。これまでの軌跡を確かめて、次に向かおうとしている。『壇上』が本編の終盤に披露されたことと、過去映像が流されたことで、このライブの強いコンセプトが押し寄せてきた。CEREMONYは美しく、盛大に、締め括られようとしている。

本編最後は、『サマーレインダイバー』 。ライトをつけたり、歌ったり、様々な仕方で最後の瞬間を胸に刻んだ。

観客からのアンコールで、ステージにスポットライトが当たった。そこには、一人チェロを演奏する常田さんがいた。『閉会式』が演奏されている瞬間は、スタジアムがスタジアムではないような、何処か神聖な場所に連れて来られたのではないかと錯覚するような感覚があった。

圧巻のチェロパフォーマンスの余韻に浸る間もなく、『白日』へ。アンコールで『白日』が披露されるのは珍しく、エモーショナルな雰囲気を纏っていた。

続く楽曲は、『Mcdonald Romance』。間違いなくメンバーお気に入りの一曲で、「もっと歌える?あと3倍!あと1.5倍!」と、何度も大合唱し、皆で歌うということを噛み締めた時間だった。本当に最後に披露されたのは、『Flash!!!』だった。打ち上げられた花火とともに、泥臭く、美しく、清濁を呑み込んで、観客を虜にした。

「ありがとう、King Gnuでした!」普段はあまりこんな台詞を言わない常田さんの言葉が会場に響き、観客の大きな拍手がその言葉に呼応した。

どんなに心が動いても、拍手しか表現する術がなかった3年間。どんなに歌いたくても、歌えなかった3年間。King Gnuの楽曲が、こんなにも多くの人々の生活に彩りを添え、その人の人生の一部になっていること、そのことを、King Gnuのメンバーとファンが互いに確認し合って、噛み締めて、楽しんで、歌声が響いた最高の日だった。

王者の歴史に刻まれた伝説の一ページに、乾杯。


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