KEVIN AYERSというサイケの遺産 もう一つのwish you were here
ずっと頭の片隅に置いておいた事をいよいよアウトプットする時が来た様なので書いてみます。
英国ロックやプログレッシブロックの世界では
一般的にpink floydとsyd barrettの関係性は語られる事が多いし文献もいくつか刊行されているので資料には事欠かないがもう一つのストーリーが存在しているなあとずっと頭の中にモヤモヤしていたのがthe soft macineとkevin ayersの関係性である。
見よ!この勇姿。サイケお洒落度でいえば初期pink floydもMGMTも既に此処にある!
the soft machineについてはいくつものストーリーが産まれておりGONGやrobert wyatt、caravanはたまたオリジナルメンバーが居なくなってからのsoft machine legacyまで語ると膨大な量になってしまうので今回はthe soft machine主にアルバム1枚目と2枚目の時期に絞って話を進めていきたい。そういえば近々カンタベリーロック完全版という本が発売されるらしいですね。大変だったでしょうね。おめでとうございます。必ず買います。
the soft machineの元になったのはthe wild flowersというガレージ系バンドが母体として存在する。
カンタベリー出身のrobert wyattと大学に通っていたmike ratleegeを中心に結成。そこにオーストラリアから世界中を放浪していたヒッピーdaevid allenとkevin ayersが合流。めでたく世界最強のプログレバンドでありjazz rockの元祖でありpsychedelicの至宝であるthe soft machineが誕生する。
当時swingin' londonで沸いていたイギリス。
pink floydと共にUFO clubのRAVEに出演し人気を博す。
daevid allenによるポエトリーリーディングに即興演奏を被せたかなり実験的なLiveを繰り広げていた様子。
RAVEと書いたのはこの頃からRAVEという言葉があったんだ!と筆者も驚いた。
結成当時のthe soft machineの音源はファーストアルバムには入っておらず、数多あるコンピレーションで聴く事が出来るが全身バンドthe wild flowersからのR&BやガレージPOPの流れに実験的な要素を取り入れた音楽性だった。
the wild flowersの音源は発売されており聴く事が出来るがまだそれぞれの個性が爆発するまでには至っておらず凡百のbeat bandの域を出ていない。
がthe soft machineのファーストアルバムに収録されている楽曲もちらほらこの頃から演奏されており資料的に違いを確かめたりするのは面白い。
ファースト single "love makes sweet music"かなりPOPで聴きやすい楽曲でこの時期の他のBeatles系beat bandにも通じるPOPセンスが気持ちいい。daevid allenのギターもイカしてる。
がB面はこちら
"feelin' reelin' spueelin' / the soft machine
かなり実験的な曲。というかこの頃からkevin ayersの類稀なるセンスが爆発している気がする
彼独特のバリトンボイスを逆に活かしてフランケンシュタインみたいに歌っているのがわかる。
ファーストアルバムで開陳する彼のユーモアのセンスがもう既に花開いている。
かと思えば曲間のブレイクビーツはrobert wyattのその後のjazzセンスが垣間見れる貴重な音源だと思う。
この頃ヨーロッパ各地をまわって人気を博した彼等は
その後pink floydやjimi hendrixらと交流を深めバンドは全米ツアーに出る。
この映像で観れるkevin ayersの狂気に満ちた感覚は後にも先にもこの頃だけ。若さもあるだろうがthe soft machineというバンドを媒介にしてこそ発散されていた気がしてならない。上記の演奏時kevin ayersは恐らく12弦ギターを弾いており曲のサイケ感をUPさせていてアルバムバージョンよりもPOPになっている。
しかしmike ratledgeの髪型が凄いですね。
robert wyattのピンク色も凄いがkevinのKISS、いやdeath metalばりのメイク!
clarence in wonderland / the soft machine
こういうのほほんとした何処か牧歌的な感性がkevinにはあってそれがthe soft macineの刺々しい毒々しい感性と合わさった時に奇跡的に絶妙なバランスを生み出していると感じるのは筆者だけか?
それはkevin ayersのソロ各作品を聴いていても彼が抜けた後のthe soft machineの各作品を聴いても同じ。
双方に対して何かが足りないと感じるのは筆者だけか?
このマジックは一瞬の輝きだったのか?
後に盟友daevid allenのGONGとともに録音されたclareoce in wonderlandはおなじ曲とは思えないアレンジで何とSKAに!the specialsが出てくる何年も前だ。
放浪時代、イビサ島やマヨルカ島で過ごした彼独特の感性はその後の彼の作品に確実に無国籍な彩りをもたらしている。
最初聴いた時は驚いたが、今は好きだ。
話がとっ散らかっていきそうなので軌道修正を。
jimi hendrixとのツアー中、疲れたkevin ayersはマジョルカ島に行くと言ってバンドを脱退する。ベースはミッチ ミッチェルに売り払ったらしいがその真相は如何に?
後年kevinの娘さんでありミュージシャンでもあるgalen ayersが語ったところによるとツアーを降りた時にjimi hendrixからギターを貰ったそうだ。しかもそのギターを娘さんの20歳の誕生日にほら!やるよ!と言って床にあったものをケースごと足で蹴ったとか。。
娘さんが語るところによるとkevin ayersはthe soft machineの音楽性がどんどん実験的になっていくのが嫌で辞めたそうなのだが、、彼もじゅうぶん実験的だったとおもうのだが、歌を大事にしたその後の彼のversionこそがkevin ayersのやりたかった音楽なんだと妙に納得もさせられる。
のんびりした彼の感性が炸裂したソロアルバム
"joy of a toy"
ここでも"soon soon soon"をセルフリメイクしているがthe soft machineの時の様な独特な張り詰めた緊張感は無くなった。
このアルバムは色んな聴き方が出来るが、ある意味聞きどころとなっているのが、syd barrett参加のこの楽曲。
ファンの間ではえっ?どの音が?が通説となっている名曲。因みにkevin ayersはsyd barrettの2歳年上です。
このレコーディング風景、誰か撮ってなかったのかな!
タイムマシンがあれば是非見てみたい現場の一つです。
そしてthe soft machine時代からの楽曲を大切に末長く演奏しているのも彼の特徴です。
ここに歌詞を引用します。
why are we sleeping?
そして話をthe soft machineに戻してkevin ayersが脱退後に作られたセカンドアルバムvolume two
いきなりピアノの音で度肝を抜かれるが歪んだベースはそのままなのでkevin ayersがもう居ないとは一聴しただけでは分からなかった筆者20歳の頃。
ファーストとセカンドを同時に買って来て、ん〜どっちも良いアルバムだなと思っていた。しかし不思議なこの残響音(アルバム全体に漂うリバーブ感)は何だろう?とずっと思っていた。
そして今回のこの記事を書くに至ったきっかけがこの楽曲
ずっと好きな曲だったがそれが何故なのか良くわからなかった。なんだか胸を締め付けられる曲だなと漠然と思っていたが歌詞を読んでその意味が良く分かった。
pink floydには精神的にも肉体的にも離れゆくsyd barrettに対する気持ちを歌ったwish you were hereという名曲があるが
これはもう一つのwish you were hereストーリー。
the soft marchineいや、robert wyattからkevin ayersへの love songだ。
kevin ayersはかつてwhy are we sleeping?と歌った。
そしてrobert wyattはこの曲のなかでwhy is he sleeping? Why is the trumpeter weeping?と歌う。
kevinがかつてThe trumpeter weepsと歌ったのに対して。kevinがThe customers scream! と歌いrobert wyattはHis voice is so weak now and the customers are screamingと歌う。robert wyattはこの曲の中でkevinと7回歌う。
歌詞には一緒に過ごした仲間に対する愛が溢れている。
彼は病気になんかならない。
彼はナイスな魚を食べ、話さず、ただ考える。
地球上の何処かで安住の地を見つけるだろう。
意外にもバーンベイあたりに居るのかも?
と締めくくられる。
プログレッシブロックの世界ではpink floydとsyd barrettのストーリーばかりが語られる事が多いがkevin ayersがその後に残した痕跡を振り返るとアルバム2枚だけで終わってしまったsyd barrettに対して70年代、80年代、90年代、ずっと作品を発表し続けて2000年以降まで生き残ったサイケのオリジネーターとしてもっと評価されるべきだと思うが如何だろうか?
そして最後に"as long as he lies perfectly still"の歌詞に関してこの様に書かれた記事が他に無い事も付け加えておきましょう。カンタベリーシーンを誰か映画化してくれないかなぁ。絶対面白いと思うよ!
最後に美し過ぎる70年代のkevin ayersを。
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