【第7回】映画『世界の終わりのいずこねこ』制作日記 ~アイドルと映画に巻き込まれた僕たち~(再録)

2014年11月某日

カバー絵を担当した『ももクロニクル2011-2012 全力少女が駆けぬけた秋冬春夏』発売。実はイラストはずっと以前に仕上がっており、「もう出ないかも」とあきらめかけていた本。

 
2014年11月某日

コミカライズ版『世界の終わりのいずこねこ』が、太田出版WEBコミック「ぽこぽこ」にてスタート。第一話は「fake town」。1ページ目には「失われた東京の文化」の象徴として秋葉原ディアステージのシャッターを配置。主人公をスウ子(蒼波純)に据え、映画とは世界を共有しながらも、視点の異なる内容に。映画出演アイドルを全員出すことや、宇宙戦闘や猫缶配給シーンを描くこと、SF設定やオチを明確にすること、スチル写真を配置し「実写感」を出すことなど、映画を補完することを強く意識した。ネームはペン入れ前に全話ぶんを完成。単行本刊行を映画公開日の3月7日と決め、ギリギリのスケジュールで連載スタート。年末年始は体調崩さないぞと誓う。 

2014年12月某日

渋谷WWWにて、いずこねこラストライブ「世界の終わりのいずこねこの終わりの始まり」開催。イベントタイトルはサクライケンタさんが命名。らしいなと思う。ライブと映画上映の間にコミカライズの告知タイムを作ってもらえたので、ぽこぽこ連載から切り抜いた出演者の似顔絵パネルを持参し、この日出演する生徒役のアイドルの皆さんにそれぞれに宣伝してもらうことにする。

告知タイムの内容についてイベント担当の岡島紳士さんと相談する中、直前にアイデアを思いつき、急遽「ミイケ先生」として清竜人25「Will You Marry Me?」を歌うことになる。

一方、広島神イベで距離が縮まった飼い主一同からラストライブに際して送るお花に添えるイラストを依頼され、もちろん快諾。そのやりとりの中で、逆にWWWラストライブイベントの構成に関してどう思うかと彼らに訊いてみたところ、「ワンマンの方が良かった」「必然性のない出演者もいる」などの反応。ならば明確に「ここからは茉里さん主役のライブだよ」という流れを作ったほうがいいなと考え、アイドルとプロデューサーの困難な関係性を「一夫多妻制」とうい発想で幸せに更新した清竜人25の曲を選び、「Will You Marry Me?」を「Will You 茉里 Me?」と読み替えて、イベント出演者20数名を従えて歌うことを思いついた。この内容については事前に一部飼い主に確認。もちろん出演アイドルにも。

果たしてそれが成功したか否かはわからないけれど、生徒役のアイドルの皆さんのご協力もあって、やりきった感はあり、「Will You Marry Me?」を歌う中で「どうして解散するんだよー」と本音めいたアドリブも決める。物販で隣り合わせたプロデューサー小林清美さんとCDを交換したり、同じく隣にいた姫乃たまさんとチェキを撮り合ったり、物販も楽しく、DJまほうつかいのCDも勢いで沢山売れた夜。ステージで歌い踊る茉里さんも印象的だったけど、ミキサー卓で曲を出すサクライケンタさんの後ろ姿も忘れがたかった。

しかし、ここから先はいずこねこ本体には話題がない、公開までコミカライズを淡々と更新し話題を繋げればと考える。

2014年12月某日

WWWラストライブ翌日、誘われて担当編集の村上さんとライムベリーワンマン公演へ。昨日のいずこねこの「終わり」と反対に、「伸びしろ」しか感じない幸せいっぱいのライブを堪能。僕よりも村上さんが感動したようで「初めてアイドルにハマったかもしれません」と一言。もちろんこの時は、約二か月後にライムベリーを待ち受ける運命を知らない。

その足で夜、ストゥディオ・パラボリカにてデザイナーのミルキィ・イソベさん、ギャラリー・オーナーの今野裕一さんと打ち合わせ。今野さんのギャラリー「パラボリカ・ビス」での展覧会の開催も具体化。ミルキィさんの装丁は、2003年の東浩紀 編・著『網状言論F改―ポストモダン・オタク・セクシュアリティ―』以来。感慨深い。 

2014年12月某日

集中してマンガの作業を進める中、ふいに今この世界で「いずこねこ」のことを考えているのは僕だけかもしれない。そんな孤独な気分になる。撮影現場でぼんやりとしていたサクライケンタさんの気持ちが少しわかった気がした。 

2014年12月某日

コミカライズ第二話「jupiter girl」更新。「ホメられて伸びるタイプのweb連載空間」とは「ぽこぽこ」のキャッチコピーだが、フキダシによってマンガの上からコメントが書ける変わったシステム。これは人気投票に使えるなと思い、登場アイドルそれぞれの人気を測ってみることに。PSS桃香さんとclassic fairyさんが茉里さんや蒼波さんを抑えて目に見えて大人気。強い「推し」を感じ、後に登場回を増やすことに。

2015年1月某日

コミカライズ第三話「rainy irony」更新。レイニー役の緑川百々子さんは桁外れの再生数をはじき出したミスiDコンテスト号泣動画を参照して盛大に泣かせ、映画では「ふんふん」としか言わないアイロニー役の永井亜子さんは皮肉屋(アイロニー)を超えて毒舌キャラに再設定。ディアステージの看板もそうだが、「いずこねこ」という一アイドルを超えて、映画と現実を混ぜ込んでいくことが楽しい。スケジュールはぎりぎり。 

2015年1月某日

ラストライブを経て、出演者のプロモーション稼働について、うまくいっていないことが伝わってくる。元BiSコショージメグミがサクライケンタプロデュースのMaison book girlに加入し、いずこねこ茉里さんが元BiSカミヤサキとBiSを手掛けた渡辺プロデューサーの元でプラニメとして活動しているのだから、状況は複雑(当時の関係者のツイートを読めば部外者でもわかること)。

一方、ももいろクローバーZが「史上最大のプロモーション大作戦」を発表。『幕が上がる』全上映映画館で舞台挨拶をするという。シネコンというメジャーな場所で、ド地下なアイドル商法を慣行することが発表され、完全にお手上げと感じる。米軍の本土空襲を知った竹やり部隊の気持ちってこれかな、とも思う。あのトップアイドル「ももクロ」が、地下戦法でプロモーションをやりきることに恐怖を感じたし、だったら『世界の終わりのいずこねこ』も、せめて茉里さんが全上映舞台に立つとかそういうことできないのか?とも思ったけど、「終わっている」のだから仕方ないし、その「終わり」こそが、映画やコミカライズを他にはない作品にしているとも思う。また僕がそれを言う立場でもない。「アイドル不在のアイドル映画」をしみじみと感じる。

2015年2月某日

娘が僕の頭を見て「あれ?パパ禿げてない?」と騒ぐ。妻も「あ!禿げてる」と。割と毛量が多い僕だけど、アイドルのストレスで禿げてしまったのだろうか? 「おでこから来る派と頭頂から来る派があるっていうけど、あなたが頭頂派ってことはわかった」と妻。

2015年2月某日

コミカライズ第四話「last summer」更新。WEB連載とはいえ、3月7日には単行本を出すので結局紙のスケジュールに縛られ、とてもタイト。 

2015年2月某日

コミカライズ最終話「e.c.l.s」更新。実は単行本のスケジュールがWEB連載を追い越し、校了したのは紙の本が先。 

 
2015年2月某日

後藤まりこ、活動休止。アイドルの魔を感じる。 

2015年2月某日

ライムベリーからメンバー二名が脱退。担当編集村上さん落胆。この映画の制作、公開中に、いずこねこ茉里、ライムベリーのDJ HIKARUとMC HIME、Maison Book Girlの宗本花音里がアイドルを辞めることになる。 

2015年3月某日

SPOTTED直井卓俊さんからK’s cinemaレイト上映でトークイベントを組めないかとの相談。僕は映画スタッフは監督以外前に出ず、出演者のみなさんが交代で舞台挨拶や取材に応じてくれることがベストと考えていたけど、そうも言っていられなさそうな気配。予算を配給と版元で組んでもらい、関連展示と個展を含め、6日ほどのプロモーション出張を組む。

コミック版の特典としては、サントラ盤を限定販売しているタワーレコード、そしてHMVでだけ茉莉さん、蒼波純さんの写真をあしらった特製帯を配布。新宿タワーレコードでお二人による「お渡し会」を考えていたが、編集、営業サイドのアイドル商法の不理解もあり、足並みそろわず実現せず。特製帯まで作ったのに痛恨。「こうなったら西島が単独でサイン会してDJまほうつかいで滑り倒します」と申し出るも、基本200人の集客が必要とのことで断られてしまう。アイドル系インストアイベントの聖地新宿タワレコのスケール感を思い知る。 

2015年3月某日

3月7日、新宿K’s cinemaにて、映画『世界の終わりのいずこねこ』公開。同日コミック版『世界の終わりのいずこねこ』無事刊行。既に、いずこねこではない茉里さんの舞台挨拶は初日のみ。それでもコミック単行本にサインをして笑顔で売ってくれたそうで、ありがとうと広島から思う。満員御礼だったそう。

翌日はレイニー&アイロニー役の緑川百々子さん、永井亜子さんによる舞台挨拶。満員御礼。でも劇場が満員になったのはこの二回の上映とレイトショーの最終上映だけだった。明らかに映画のピークは渋谷WWWのラストライブであり、ピークアウトしているのが今の状態だなと感じる。アイドルは一瞬、でも映画は永遠と、自分に言い聞かせる。 

初出:Subpokke

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DJまほうつかいのnoteより、昔書いた音楽評や作品のシナリオ、ライナーノートなど、文章系をまとめました
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