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知識の記録方法(58) 現地現物とサイエンス

ものづくりという領域において現地現物と知識の記録方式の関係について説明する。

 ものづくりでTPS(トヨタ生産方式)は何をやっているのかと言えば、現地現物の確認である。オフィスで考えたことなど、ほんの一部に思考が留まり役に立たない。現地現物でフィールドの探検をし、その後、サイエンスに持っていくことが必要なである。サイエンスに持っていけていない企業が多いと思う。

 人の思考力などはまだまだ進歩していないのである。そして記憶力も特段の進化をしていないのである。その中で、進んだ業務、商品化ができる企業と、できない企業の差は、その構成メンバーの能力や組織力の差である。皆の知識を整えることは組織における意思決定が正しい方向に向いていくものである。

 知識差のある構成メンバーや組織間では、信頼にたる能力やリーダシップを周囲から認められていない状態では、間違った意思決定の繰り返しになるのである。日本のものづくり企業はかなりの企業で間違った意思決定の状況にあるのではないかと推察している。これは企業規模の大小に関係しないものである。15年間のコンサルの中でも、上場企業でも呆れる発言を多く聞いてきた。このようなことが、欧米の新事業や新ルールの後手となっている要因ではないだろうか。
 
 以前、自動車会社に務めていた時、工場における改善事例を工場間で共有し、その横展開の状況を可視化した改善事例システムを開発し利用した。学び合う風土は大変良いものであった。
 どんなに風通しの良い職場でも人の真似をしたくない、自分の考えが正しい、人の意見を聞く必要はない、相手のいうことが分からない、腹に落ちないなど個人の気分で組織運営するマネージメントはたくさんいる。昔のマネージャは割りとこのようなことをはっきりと発言してリーダシップを発揮していた人が多いと思う。しかし、それができた理由は、マネージャー自身が人1倍の努力をしていたと思う。工場の現場をいつも歩いて、観察をしていた。その結果を組織に問いかけし、自分で答えを持って、組織運営していた。
 
 ところが、今日の製造業はどうなっているのかと思えるほど、実力が低下しているように見える。表層的な学びや思考で組織運営するマネージャが多すぎる。その姿を見て、それを真似する若い人が多すぎる。

 このように考えて、かつて読んだことのある知識経営のすすめ(野中郁次郎/紺野登 ちくま新書)の本が思い出された。この本は学者が書いているものであるが、私は実務者が知識をどのように蓄積するかという研究で特徴点記述法を見出してきたものである。特に著者のの話は共感できる。そして特徴点記述の発見がそのIT的手法ではないかと思っている。

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