病院だからいいってもんじゃないでしょ

FGM (Female Genital Mutilation)。
女性性器切除をこのように略して言います。

この施術がどんなものかをここで細かに書くのは避けます。専門書や体験者の手記が翻訳出版されているし、反対し止めさせる運動をしている団体は日本にもありますので。

忘れられないのはタイトルにした、講演会で聞いた講演者の言葉です。

その講演会では、FGM慣習を持たない国に住むFGM慣習を持つ親が衛生的な病院で娘に手術を受けさせる事があり、スウェーデンでは国内での施術だけでなく、自国籍国民が国外での施術を受けることも禁止する法律を制定した、と言う報告がありました。

講演会が終盤に差し掛かり、会場に質問を受け付ける旨のアナウンスがあった時、女子学生らしい人が手をあげました。

「中には病院で娘に施術させる親もいるとのことでしたが」の質問を遮り、発せられた講演者のピシャリとした発言。それがタイトルの「病院だからいいってもんじゃないでしょ」です。彼女は「~いるとのことでしたが」と言ったきりで続きがあったのか、或いは講演者の理解通り「病院でやるならいいのではないか?」が質問だったのかわかりません。

でもわざわざ講演を聞きに来るくらいですから、予備知識があり、止めるために自分にできることはないか探している、と言う辺りが彼女のポジションだったのではないかと思います。

もちろん私も病院でならいいとは思いません。病院であっても許される事ではないんです。FGMは本当に野蛮な慣習ですから。

ただ女子学生が言いたかったのは、野蛮な慣習だと認識する社会で暮らしていても、その慣習から抜け出すことのない人達がいる理由を私達は理解しておらず、そして私達が野蛮な慣習だと考える理由を彼等に理解して貰うにはどうしたらいいのか?と言うことだったのではないかと思うのです。

あの時講演者が遮らなければ、私達は解決策を話し合うステップに進んでいたかもしれないと考えると、残念でなりません。

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