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[公開日映画レビュー] 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』

オーストラリアで養子として育てられたインド人青年が「GoogleEarth」を駆使しインドの「産みの親」へ辿り着いたエピソードは、皆さんもどこかで耳にされたことでしょう。
今回の映画はその実話サルー・ブライアリー著『25年目の「ただいま」』を「英国王のスピーチ」の制作陣が入念なキャスティングで完成させています。

まず、私には観に行く動機となった大きな疑問がありました。

それは「オーストラリア人夫妻がなぜインド人を養子にしたのか?」です。
なぜならインド人少年はあくまでインド国内で迷子になります。

それがなぜオーストラリアにつながるのか。

この辺の辻褄が気になっていたのですが、映画を観てその理由を知り驚愕、そして感動しました。

これは現在世界を覆う欧州ポピュリズムや、トランプにおける排外主義に投げかけるメッセージとも言えるでしょう。


そして「産みの親」へ辿り着いたサルーもまた「育ての親」に影響を受け行動を起こすことになります。つまり本題はこちらだと思います。

私は今回の作品のキーワードとして「同苦」を挙げたいと思います。


母親から見捨てられた(と思い込んでいる)少年。この映画では冒頭からサルーの視点で映像を追い。彼の心情に入り込む事が出来ます。

そして失った子供を思う母親。自ら選んだ「子育て」で苦しむもう一人の母親ーーそして同じような悲しみを持つ世界中の親と子。

それらへの「同苦」を抱けるかどうかがこの映画を観るためのカギかと思います。

そして結局サルーはブライアリー夫妻のお陰で知的に育ち、社会的にも力ある存在となれた事が重要です。そこから彼がコルカタで孤児院を経営したり、自分を養子縁組に導いてくれたミセス・スードをサポートする事が出来たのです。

そして、もしかするとサルーはルーシーと共にブライアリー夫妻と同じ選択をするのかもしれません。


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