らせん

文章書き。作品は、書籍化した「黄昏のブッシャリオン」など。

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マガジン

  • いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン

    テレビ版エヴァの考察とか与太話とか。

  • オスモー・イン・ザ・スカイ

    新感覚オスモウパンク小説「オスモー・イン・ザ・スカイ」の連載マガジンです。

最近の記事

尻尾の世界

世間の流れは早いもので。 かつては板状だったデバイスが、バイオロボティクス技術の発達で触手状になるまで、さほどの時間はかからなかった。 幾つもの複合センサとスマート軟材料アクチュエータ、AGI。様々な技術が融合したそれを、皆が三本目の手や尻尾のように使った。伸縮・硬軟自在の棒は単に道具としても便利だったし、一見生物のように見えなくもないそれを、ペットのように扱う者も居た。 今や街中で見る人間の3割くらいは「尻尾」を生やしている。 だが、技術というものにはいつも光と影がある。

    • もしもプラズマキャノンがあったなら

      もしもプラズマキャノンがあったなら、なんだって壊せるだろう。 もしもプラズマキャノンがあったなら、世界はどんなに色づいて見えるだろう。 ある雨上がりの日、田舎道を軽トラで走っていると、道端にプラズマキャノンが落ちていた。 プラズマキャノンと言っても、然程大げさなものでもない。惑星航行艦の迎撃火器や、新式戦車に使う、変哲も無い単装式収束プラズマキャノンである。 だからと言って、田舎道に転がっていてよいものではない。不法投棄だろうか? キャパシターを確認し、スイッチを入れる

      • いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン(補足編)

         月日が経つのは早いもの。劇場公開の後、なんとAmazonプライムで配信が始まったシン・エヴァンゲリオン。新劇について色々語りたいのは山々なんですが、それは別の機会。  あと、結構前の話となってしまいましたが、当連載がnote公式に紹介されました。これも読者の皆様の応援の賜物です。ありがとうございます。  そんなわけで、「シン・エヴァ公開までの情報で新世紀版エヴァを読み解く」というのが本連載のコンセプトだったわけですが。シン・エヴァンゲリオンを踏まえて、重大な解釈修正が一つ

        • サイバーパンク水戸黄門基本資料(碌星らせん版)

          登場人物紹介 ・水戸黄門  越後のエチレン問屋の隠居を名乗る老人。  正体は日本を漫遊し世直しを行うEDO幕府の高官であるとされる。  その証として電子印籠に基づき幕府A.O.Iの権限を一時的に借り受けることができる。 ・助さん、角さん  黄門のガードマン役。元々は生身の人間であるが、エチゴヤ・インダストリアル製重サイバネティクス 適合者Skelton-Ⅲモデル、Diffusionモデルである。物語の途中で合体機構が実装される。  助さん、角さんの記憶は電子化されており、

        尻尾の世界

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        • いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン
          34本
        • オスモー・イン・ザ・スカイ
          3本

        記事

          そろそろわかるヱヴァンゲリヲン新劇場版・新世紀との違い

           いまのところ、(株)カラーからもKAD〇KAWAからもお叱りを受けずに済んでいる『いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン』。ご好評を頂いているようですが、思わぬ副作用が。  時節柄、地上波で新劇をやってたせいもあり、本連載を手掛かりに新劇場版を解釈しようとする試みがちらほら。  未完結作品に手を出すのはどうなのさ、と悩んだものの、このままでは逆に混乱を引き起こしてしまう。ということで、急遽新劇場版編をちょっとだけ。  というか、前提として(当たり前のことですが)、『新世紀エ

          そろそろわかるヱヴァンゲリヲン新劇場版・新世紀との違い

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉝劇場版第26話『まごころを、君に』Part.2(終)

           新劇場版、再延期だそうです。残念であり、仕方ないという納得もあり。しかし個人的に一番大きいのは、はやく「さらば、全てのエヴァンゲリオン。」させてくれ……! という思い。  25年前(!)のアニメをこねくり回し、ここまで来てしまった皆さん。本連載はとりあえず今回で最終回となります。  本編の前に、ちょっと話が逸れますが量産機とロンギヌスの槍について。結局のところ、コイツら何? というお話。 ①量産機について  ゼーレ、元々は野望のためオリジナルのアダムを利用しようとしてい

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉝劇場版第26話『まごころを、君に』Part.2(終)

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉜TV版最終話『世界の中心でアイを叫んだもの』

           今回でテレビ版は最後です。タイトルの元ネタは短編SFの名手、ハーラン・エリスンの『世界の中心で愛を叫んだけもの』。  旧ガイナックス系作品のお約束、SF作品タイトルですが。作品内容とはあまり関係ない……と、見せかけて。同タイトル収録の短編集の前書きに、こんな文章があります。この短編集も機会があれば是非読んでほしい。 「他者はあなたにこう教えるために存在する。すなわち、夜が近づきつつあるとき、われわれはすべて地球という異邦の惑星に住む異星人であるということ。キリストも、人間

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉜TV版最終話『世界の中心でアイを叫んだもの』

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉛TV版第弐拾伍話『終わる世界』

           劇場版最終話前に、エヴァンゲリオンのテレビ最終話について。ご存知の方はご存知の、「おめでとう」というアレです。  よく投げっぱなしとか言われますが、ぶっちゃけると製作スケジュールの都合の様子。なので、実は精神世界描写に全振りしたテレビ版でも、随所に劇場版のエッセンスが見られます。  つまり、「劇場版を見ないと位置づけがよくわからないシーン」が出てくるという……。なので、本連載では劇場版の流れをわかった上でテレビ版に挑む、という構成になりました。  シンエヴァが早いか、連載完

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉛TV版第弐拾伍話『終わる世界』

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉚劇場版第26話『まごころを、君に』Part.1

           劇場版最終回。本連載にここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。まだもうちょっと続くんですが。  冒頭の監督挨拶。「5人の女性」についてですが、メインキャスト陣という解釈がされることは多いものの、「キャスト」は別枠で上がっているため疑問。素直に、個人的な謝辞と捉えるのが良いのではないかと。  といわけで、ゲンドウのターン。  ゲンドウの野望は「ユイとの再会」な訳ですが、ユイは初号機と融合して戻ってこない。そればかりか、神に近い不滅の存在となってしまった。  そこで

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉚劇場版第26話『まごころを、君に』Part.1

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉙劇場版第25話『Air』

           前回も言いましたが、エヴァンゲリオンの劇場版25/26話、劇場仕様ということでかなり過激な表現が各所に使われています。掘り下げると必然的にエグい話もすることになるので、その辺ご注意を。  それ以外は、もはや多くは語りません。それではエヴァンゲリオン劇場版『Air』、行ってみましょう。  冒頭。常夏の廃墟で立ち尽くすシンジくん。もはや会いに行くべき人は誰も居らず、学校もない今、することはない。カヲルくんは自分で手にかけてしまい、ミサトさんは怖いし、今やレイも怖い(主にリツコ

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉙劇場版第25話『Air』

          石油と太陽光についての話

           エヴァの与太話とかブッシャリオンとか、書きたいもの溜まってますが、ちょっと気になったので忘備録的な真面目な記事。 ・発端のツイート 気付いたらRT数がエラいことになっていた。 ・なんで石油の埋蔵量と太陽光パネル比べてるのさ 至極尤もな疑問です。石油は資源の一カテゴリ、太陽光パネルは一設備。どういう比較なのさ。ということですが、理由は単純で、そもそも  伊藤ヒロ先生のこのツイートに対する反応だったので、こんなことになりました。  先生は『魔法少女禁止法』やアダルトゲーム

          石油と太陽光についての話

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉘劇場版『DEATH (TRUE)²』

           さて、まず最初にエヴァンゲリオンの劇場版というものにについて。  エヴァンゲリオンの製作スケジュールがなんとなくヤバいことは、ネットフリックスのテレビ放送版を見ていてすら伝わってくるわけですが。遂に25話、26話で限界突破。視聴者を混乱の渦中へと叩き落とすこととなりました。  時に1996年。25話、26話を本来のカタチにリメイクし、同時に新作劇場版を公開することが決定。しかし、そこから更に製作スケジュールが遅延した結果、総集編と新規25話をくっつけたものが『シト新生』とし

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉘劇場版『DEATH (TRUE)²』

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉗第弐拾四話『最後のシ者』

           本連載も、いよいよ此処まで辿り着きました。24話「最後のシ者」。英語タイトルは"The Beginning and the End, or "Knockin' on Heaven's Door""、始まりと終わり、あるいは『天国への扉』。前半は劇場版のキール議長の台詞、「始まりと終わりは同じところにある。よい、全てはこれでよい」という台詞と関係がありそうです。Qでカヲル本人も似たセリフを回収していますね。  『天国への扉』ですが、本編中にも『ヘヴンズドア(直球)』が出てくる

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉗第弐拾四話『最後のシ者』

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉖第弐拾参話『涙』

           私事ですが、エヴァのDVDを買いました。21~24話はビデオ版が手元にないと流石に説明に難儀する、という理由です。  エヴァ終盤の「難解さ」は、製作側が意図したもの、というより、スケジュールの都合に因る部分、というのも少なからずあるのではないかと思います。  なので、23話の前に22話ビデオ版について。ビデオ版は本編尺も5分くらい伸び、「アスカが何に執着していたのか」ということをはじめ、アスカの心理描写の掘り下げが大きく強化されています。そして、「加持さんが死んだことをアス

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉖第弐拾参話『涙』

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉕第弐拾弐話『せめて、人間らしく』

           シン・エヴァンゲリオンの公開日が決まりましたね。来年1月……それまでには、本連載も完結したいところ。特報を見るだけでも「わかる」ポイントが沢山出てくるのですが……本編を見てから記事にするかもしれません。  それでは22話『せめて、人間らしく』、行ってみましょう。  今回はアスカの話。ということで、アスカの生い立ちや背景を振り返るところから。  セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレー。日本とドイツの血を引くクォーターですが、国籍はアメリカ。でもドイツのネルフ支部に長

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉕第弐拾弐話『せめて、人間らしく』

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉔第弐拾壱話『ネルフ、誕生』Part.2

           引き続き、21話本編を見ていきましょう。ナオコ博士の回想で、ユイが実験で消失したところから。  娘への手紙で、ゲンドウへの慕情を仄めかすナオコ博士。マギにおける「女としての自分」というのは、こういうところなのでしょうか。  ユイの失踪によってゲンドウは一週間失踪。戻って来たゲンドウが提唱したのが「人類補完計画」。  そう……人類補完計画を提唱したのは、ゼーレではなくゲンドウ。そして、補完計画が提案されたのは、「この段階」なのです。  つまり、「セカンドインパクトは人類補完

          いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン㉔第弐拾壱話『ネルフ、誕生』Part.2