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【災害対策】もしも豪雨災害でデジタル機器が水没したら…正しい対処法と備え方をデータ復旧のプロが解説

はじめに、この度の豪雨災害で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

日本は世界有数の災害大国といわれており、とくに夏場は毎年のように台風や大規模な豪雨災害が発生しています。

災害時においては、まず人命が最優先に救助されるべきですが、ライフラインが復旧した後、社会生活において、どのような二次被害が生じるのかまでは、あまり認識されていません。

とくに、今回のような豪雨による浸水被害(台風や地震による津波なども含みます)においては、建物の倒壊・浸水により、パソコンやサーバー、ハードディスク、スマートフォンなどのデジタル機器も被災し、記録した様々な「データ」が失われるケースがあります。

たとえば、市役所の住民台帳データ、工場の生産ラインのデータ、企業の顧客情報、教育・医療などの地域福祉を支えるデータ、思い出の写真や動画……これらの大切なデータを災害により失ってしまうと、今後の生活において支障をきたすどころか、経済活動の停滞や損失により、社会復帰が遅れるといった、連鎖的な被害も生じてしまいます。

今回のnoteでは、データ復旧業者の視点から、少しでもお役に立てるよう「豪雨災害におけるデジタル機器の被害パターン」「大切な機器が災害で壊れた場合の対処法と注意点」「当社でのデータ復旧事例」などについて分かりやすく紹介します。

1. 豪雨災害におけるデジタル機器の故障パターン

豪雨災害で機器が壊れるパターンは、大きく分けて「水没」「停電・瞬断」の2つです。

しかし、③にあげるように、例外として「事前の対策」が機器の故障の原因になる場合もあります。

① 水没
災害時には、建物の倒壊や浸水、窓が割れたなどで、デジタル機器も水没・浸水することがあります。
水没した機器は時間が経つにつれ、内部が腐食していきます(外見的には「サビ」としてそれが現れます)。塩分や不純物を多く含んだ海水・泥水に浸水すると、更に機器は傷みやすく、劣化が早まります。

② 落雷による停電・瞬断
データ消失は、落雷によっても生じます。
機器を電源に接続した状態で、突然停電が発生すると、機器が正常に動作しなくなるのは有名な話です。過電流で生じる「ショート」と電気の供給が一瞬止まる「瞬断」が機器の故障の主な原因です。

③ 機器の移動・バックアップ時のデータ消失
デジタル機器の移動やバックアップは、大型台風などの緊急時に備えて行われることが多くあります。このような物理的な移動やデータバックアップ時に、機器に過重な負荷がかかり、故障してしまうことがあります。貴重なデータの入った機器の移動やバックアップは「あせらず」「ゆっくり」「ていねい」に安全な体制で行いましょう。

2.災害への備え方(デジタル機器編)

デジタル機器と内部のデータを災害から守るために、備えとしてできることをご紹介します。

※なお、災害時はまず身の安全を最優先に行動してください。
基本的に、災害時にデジタル機器と内部のデータを守るためにやるべきことは下記の3つです。

① バックアップをとる

データ消失に備えて「別の記憶メディアに同じ内容のコピーを保存しておくこと」を「バックアップ」といいます。これには「3つの理想的方法」があるので以下に簡潔に紹介します。

・バックアップを「3つ」作成する

データの消失リスクは、バックアップの数が増えるほど基本的に低くなります。重要なデータは最低3つのバックアップを取りましょう。

・「2種類」以上の記憶媒体に保存する

1種類のメディアのみにバックアップを取っておくと、オリジナルとバックアップメディアが同時期に故障する可能性が高まります。大切なデータは2種類以上の記憶媒体に保管しましょう。

・クラウド上にバックアップする

バックアップ用の機器は、オリジナルとともに一か所にまとめておくと、建物の倒壊・浸水などによってデータが全消失する恐れがあります。それを防ぐのが「クラウドサービス」による分散保管です。
もし、上記の事態に陥っても、ネット環境を用意するだけで、安全かつ簡単にデータを取り出すことが出来ます。

② 落雷時は電源を切り、コンセントを抜く

突然の停電・瞬電に備えて、機器の電源は切りましょう。また、電気のショートを避けるために、コンセントを抜いておくことも大変重要になります。

③ 濡れないところに置く

一般的な水害対策も非常に重要です。たとえば、浸水リスクの高い一階や地下、窓際などに機器を置いておくと、豪雨被害によって水没・浸水する危険性が高まります。

機器はできる限り建物の中でも2階以上、水回りや窓から離れた場所で保管するようにしましょう。また、あらかじめハザードマップなどで建物周辺の浸水リスクを下調べをしておくのは、大切な人命を救うためにも必要な事前対策になります。

3.もしも災害で機器が故障したときの正しい対処法

それでは、もし豪雨災害でデジタル機器が故障してしまった時は、どうすればいいのでしょうか?

結論としては、災害時のデジタル機器の復旧は、ほとんどの場合が個人で対応できる範疇を超えています。安全にデータを取り出したいのであれば「データ復旧業者に依頼する」しかありません。

この章では、少しでもデータ復旧の可能性を上げるため、「復旧業者に相談するまでの適切な対処法」を紹介していきます。

すぐに装置を引き上げて、まず復旧業者に依頼・相談する

水没・浸水したデジタル機器はなるべく早い段階で引き上げることが大切です。表面の汚れやしずくを軽くふき取ったあとは、復旧サービス業者へ相談しましょう。

3481パソコンの前で電話をする一般人女性

なお付着した汚れを「水で洗い流す」のは「腐食を早める原因」となるので避けてください。
基板に実装された電子回路やICチップは非常に精密な機器です。洗浄には専用の設備が必要となります。

乾かさない

デジタル機器が水没・浸水したときに一番やってはいけないことは「乾かすこと」です。なぜなら、水没したサーバーやHDD、パソコンなどが乾燥すると、水に混じった不純物が内部の基板に固着してしまうからです。また、長時間放置することで、機器内部の腐食も進行します。もちろん自然乾燥であっても適切な対処とはなりません。

水没・浸水したデジタル機器への応急処置は「湿気を保つ」ことです。まず、湿り気のある布で全体を包み、そのまま密閉タイプのビニール袋に入れてください。こうすることで不純物の固着を一時的に遅らせることができます。

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電源を入れない
水没・浸水した機器を引き上げた後、絶対に電源を入れたり充電してはいけません。電子回路やICチップがショートし、データが消失する危険性が高まるからです。

また水没したHDDの場合、通電を繰り返すと、データが保存されているディスクに傷がつくスクラッチ障害(最重度の物理的な障害)を起こすリスクが高まり、データ復旧の難易度が段違いに高くなってしまいます。

もし大切なデータが入った機器が水没・浸水したときは「無事か確認したい」とはやる気持ちをぐっと抑えていただき、まずは電源を切ったまま、データ復旧業者に相談してください。

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4.復旧事例

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当社ではこれまで、台風や津波、豪雨災害で被害にあった機器からのデータ復旧を多数行ってまいりました。
復旧したデータの種類も、システムデータや思い出のデータなどさまざまです。
以下に復旧事例を紹介していきます。

① 大切なお子様の写真が入った他社復旧不可のHDD

2019年秋に甚大な被害をもたらした台風19号。当社にもこの台風によって故障した機器の復旧依頼を多数いただきました。

これは台風でHDDを水没されたお客様の話ですが、当初、他社に復旧を依頼したものの、3週間後に「復旧不可」と伝えられてしまいました。

しかし、中には、大切なお子様の動画や写真が入っており、お客様の「唯一無二のデータだから絶対に復旧したい」という強い意志から、最後の砦として当社に復旧をご依頼いただきました。

なお、当社には物理復旧のスペシャリストであるエンジニアがおり、専用の洗浄設備を用いて1つ1つ手作業で泥や水をかぶった機器の汚れを落とすなど万全の態勢を敷いております。その結果、無事復旧に成功し、お客様からも「最初から御社に相談すればよかった」と有難いお言葉をいただくことが出来ました。私たちとしても本当に感無量でした。

② 台風で丸1日水没したNASに残された卒業アルバムのデータ

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昨年の台風19号で河川が氾濫し、浸水被害に遭った中学校から、NASの復旧を依頼いただきました。NASに保存されていたデータは、「過去数年分の学生たちの写真や動画ファイル」。これらのデータが失われてしまうとなると、大切な学生生活の思い出まで失われてしまいます。

故障したNASは、丸1日ほど水没状態にあり、水が引いたのちも数日間は泥まみれの状態だったそうです。その後、お客様はご自身でNASの中からHDDを取り出し、基盤のネジを取り外して内部を洗浄。さらにエタノールに丸1日つけ、半日かけて乾燥させたそうです(前章でも説明しましたが、これらの処置は内部の腐食を進める危険性が高いため、絶対にやってはいけません)。

当社では、機器到着後、すぐに作業に着手しました。HDDの内部では物理障害が発生していたものの、物理専門エンジニアの手によって無事データの復旧に成功し、卒業アルバムの作成に間に合わせることが出来ました。

ちなみに、台風19号の被害を受けたのは秋でしたが、復旧のご依頼をいただいたのは翌年1月でした。災害時にはもちろん人命と生活基盤の立て直しが最優先ですが、水没したHDDは通常、時間を置くほど復旧難易度が高まってしまいます。
大切なデータであれば、なるべく早い段階で復旧を依頼する、もし依頼が難しい場合は、機器を引き上げた当時の状態を保てるよう、密閉した状態での保管をおすすめします。

③ 突然の停電で機器が起動しなくなることも

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ここまで水没・浸水時の復旧事例を取り上げましたが、その他にも災害時には、急な落雷・停電で「機器が正常に使えなくなった」というご相談がたびたび寄せられます。

よくあるご相談としては、「通電していた共有用NASにアクセスできなくなった」「起動するがOSが立ち上がらない」「ブルースクリーンが出る」「パソコンが外付けメモリを認識しない」などがあげられます。

これらはすべて、通電していたデジタル機器が突然の停電・瞬電で正常に動作できなかったために起こった障害です。台風や豪雨、落雷が心配される際には、事前対策としてデータのバックアップを取った上で、機器の電源を切ってコンセントを外し、安全な状態で保管しておきましょう。

5.まとめ

災害の被害にあった機器は、障害が深刻なものであることが多く、大切なデータを安全に復旧するためには「初動対応」が重要となります。
今回ご紹介した事前対策と、万が一の際の対処法が少しでもお役に立てば幸いです。

デジタルデータリカバリーでは「1秒でも早く1つでも多くのデータを最も安全に復旧する」使命のもと、日々データ復旧を行っています。
すでに、今回の豪雨災害によって九州地方で水没・浸水した機器のご相談をいただいています。当社では、データ復旧を通して被害に遭われた皆様のお役に立ち、一日でも早く被災地の日常が取り戻せるよう、尽力させていただきます。
機器の状態と復旧可能性を確認するための初期診断は、機器がどのような状態であっても無料で行っております。諦めてしまう前に、最後の砦として当社のデータ復旧サービスをご活用ください。

それではまたお会いしましょう!

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