両親のこと

小さい頃、僕はよく母親に連れられて図書館に行って、地域の子供たちを集めた朗読会のようなものによく参加していた。

僕が寝る時間になれば、必ず父か母が僕の枕元に来て、絵本の読み聞かせをしてくれていた。ときにそれは絵本にとどまらず、小学校高学年向けのミステリ小説の読み聞かせだったりもした。

母の目論見通り、僕は読書家になった。
世間様で言うところの、太宰治だとか芥川龍之介だとかの純文学ではなく、星新一や伊坂幸太郎などの大衆文学が主だったけれど、小学校の休み時間、ほかの友人達から外遊びに誘われても、夢中になっている本があれば図書室に引きこもって本を読んでいた。

父は父で、僕がある程度漢字や物語を理解できるようになると、両親の寝室にある大きな彼の本棚の前に僕を連れて行き、「そろそろ瑞樹もこれを読んでもいいころだろう」とでも言わんばかりのしたり顔でドラゴンボールの単行本を差し出して来た。

ドラゴンボールを読み終えて彼に「面白かったよ」と笑顔で伝えると、次はこれとかはどうかな?とまた彼は嬉しそうな顔をして、手塚治虫のブラックジャックを差し出してきた、流石に小学校低学年だったので、内容を完全には理解できてはいなかったとは思うけど、僕はそれも夢中になって読んだ。

こうしてまた僕は父の目論見通りに漫画のことも大好きになっていた。
テレビで放映されているアニメを見て面白いと思ったらその原作本を買うところから始まり、気づけば僕のお年玉の大半はブックオフで漫画本を買い漁る行為に費やされることとなった。

これらが僕にとってのカルチャーの原体験かもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?