バンド

ベンチで煙草を飲んでいると、知らない若い男と若い女が私の両隣に座った。左に若い男。右に若い女。どう考えても彼らのことは知らない。
暫くそのまま、私はたばこをやりつづけていた。
別に悪い気はしなかった。むしろ心地よかった。
タバコはいつもより美味いし、風は心地よい。小鳥がチチチとさえずっていた。

若い男が口を開いた。

「僕たち、こうして三人並んでるとドリカムみたいっすね」

耳に心地よい声だった。私は彼に言った。

「煙草吸うかい?一本あげるよ」

彼はさわやかに微笑みながら

「じゃあ副流煙だけ貰います」

そう言って深呼吸した。
次に右の若い女が言った。

「わたしは吐いた煙でもオーケーですよ、あなたのね」

実に知的な声だった。私は肩をすくめて言った。

「未成年だろう?君も副流煙にするといい」

彼女も深呼吸した。

なんだか無性にそばつゆが飲みたくなった。

「行こう」

私たち三人は立ち上がった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?