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再録「あのときアレは高かった」〜「ミズノ野球グラブ『ワールドウィン』高田繁モデル」の巻

「あれ、欲しい!」

そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。

昭和の、子どもには「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。

     ◇

長嶋茂雄が現役を引退した1974年ごろ、巨人のレフトを守っていたのは高田繁であった。

そのイケメンっぷりと「塀際の魔術師」と呼ばれた華麗な守備で、高田選手は人気者だった。その人気に目をつけ、今で言う「コラボレーション」をしたのがこの商品である。

「ミズノ野球グラブ『ワールドウィン』高田繁モデル」。

その特長はなんといってもブルーの色使いと外野手用に細長くデザインされた「プロ仕様」のスタイルである。

当時、近所の少年野球チームから中学校の野球部へと進んだ私は、高田選手に憧れ、このグラブを買った。内野を守っていた。だが、そんなことはおかまいなし。

とても気に入っていた美しいグラブだった。

当時の値段は1万2000円。消費者物価指数で現在の価格に直すと約2万円である。

おぼろげな記憶だが、この高田モデルは、後年、花盛りになるこの手のタイアップ商品の先駆けだったような印象がある。

男はこの「〜モデル」に弱い。私なんぞも、近所のバッティングセンターに行く時には、ナイキから出た、ダイエー(当時)の松中信彦モデルの黒くて長いバットをいまだに振り回している。

とにかく、「あの憧れのスターが使っているグラブ」というのは野球少年にはものすごく説得力のあることだ。

イチローモデル、松井秀喜モデル、坂本勇人モデル、広島のマエケンモデルなどなど。

2014年現在、数多くのプロモデルに野球小僧たちが群がり、次の世代のスターを生み出している。男が男に憧れ、真似をし、その人の使ったモノを使用し、その人になったような気分になる。

「男が男を?」なんて、最近はすぐに「ゲイ」扱いしようとするが、こういう男同士の淡い「恋心」をもっともっと大事にしてもいいと思う。

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