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再録「あのときアレは神だった」〜けっこう仮面

テレビアニメ、漫画、スポーツ、アイドル歌手などなど。
実在の人物から架空のものまで、
昭和にはさまざまな「キャラクター」が存在した。
われわれを楽しませたあの「神」のようなキャラクターたち。
彼ら、彼女たちの背後にはどんな時代が輝いていたのだろうか。
懐かしくて切ない、時代の「神」の軌跡を振り返る。

(2016年より、夕刊フジにて掲載)

あいかわらず「パンイチ(パンツ一丁)芸」がはやっている。「安心してください。穿いてますよ」の「とにかく明るい安村」の話だ。

小島よしおのパンイチ、「そんなのかんけーねえ」もおおいにはやったが、この「パンイチ芸」で思い出されるのは『けっこう仮面』だ。

「どこの誰かは知らないけれど、カラダはみんな知っている」。

全裸に赤頭巾、赤い手袋とブーツスタイル。「けっこう、けっこう」と感嘆の声が流れる間に敵を倒す正義の味方。『けっこう仮面』(永井豪原作)は、1974(昭和49)年、月刊少年ジャンプに初めて登場した。

最初は読み切りのかたちで散発し、「履いているのに全裸に見えるポーズ」ではなく、「履いてませんが、ポーズによって、大事なところは見せません」と、当時のうるさ型PTAに対して「がけっぷち」の状態で存在していた。

やはり正義の味方は強し。その後、勢いは止まらず連載がスタート。いたいけな少年たちの心と下半身をわしづかみにし、78年に連載終了するまで、全30話「おっぴろげ」続けた。

『けっこう仮面』の連載が始まった75(昭和50)年は、ソニーがベータマックス型のビデオデッキを発売、現在に繋がる「映像ログ」幕開けの時期であった。夏には沖縄国際海洋博が行われ、秋には長嶋茂雄監督率いる読売ジャイアンツが史上初の最下位に沈没した。

アメリカのベトナム戦争は終結したが(4月)、2年前からの第1次オイルショックの影響もあり、企業倒産などが増加。世間には重苦しい雰囲気がうっすらと残っていた。

年末に発売された『およげ! たいやきくん』(子門真人)の大ヒットは翌年。『けっこう仮面』は、少年漫画の世界から世間の重苦しさを吹き飛ばす起爆剤、「おっぴろげの神」として、当時の子供たちの脳裏に強烈に焼き付けられた。 (中丸謙一朗)


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