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頰コケキョー

暇を潰すのに適した趣味はなんだろうか?読書、映画観賞、音楽鑑賞、ドラマ、アニメ、漫画、スポーツ観戦、SNS。束の間の幸福感を味わいたいだけなら飲酒や喫煙という選択肢もあるが、限られた時間できるだけ有意義に過ごしたいというのが人間の性、欲を言えば実生活で何かの役に立つような趣味が理想的だ。そう考えると読書はかなり有益なように思う。新しい知識が仕入れられるし論理的な思考のトレーニングにもなる。ドラマや映画、音楽などエンタメ全般もトレンドチェックの観点からすると有効かもしれない。問題なのはSNSで、短文で投稿できるので思考のトレーニングにもなるが、自分の場合、他人の投稿や反応が気になり日に何度もアクセスしてる内に時間がどんどん溶けていく。なんならSNSにアクセスしてない時でさえ無意識に「これはネタになるかも。」という視点で現実を捉えていることに気付く。SNSによる本来の意味でのライフハックだ。映画でも観賞するようにスクリーン越しに映る現実はひどく味気ないものだ。その時ふと、いま目の前で見ている風景、起きている事象、一回性の体験をしっかりと味わいたいと思い、SNSで時間を潰すことをしばらく制限することにした。投稿を止めるとやがて禁断症状のようなものが訪れた。一抹の寂しさのような物足りなさ、ひどく情緒的と言うか、久々に現実をストレートに浴びたせいか感受性がバグって物事の一切がディープに浸み込んでくる。恋愛している時のようなヒリヒリとした剥き出しの自意識。この感覚はコントロールできないとしんどくなるかもしれないが、読書する時のメンタリティーとして好都合なので久々に読書を再開することにした。まずは活字に慣れるためのリハビリの一環として、一週間かけ村上春樹の新刊を読み終えた。すると読後の健やかな達成感とともに忘れかけていた何か書きたい意欲がむくむくと湧いてきて、こうして筆を執った次第だ。

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